今日は、ちょっと変わったリバーブプラグイン「ADAPTIVERB」の紹介です。
リバーブといえばDAW付属のものから、超高級なコンボリューションリバーブまで数多くリリースされているので、「もうリバーブはお腹いっぱいだよ…」と感じている人がほとんどでしょう。
ところがこちらの「ADAPTIVERB」は、
“従来のルームモデリングとは異なるアルゴリズムで作られた、原音をマスキングせず魔法のように音源になじむリバーブ”
と、プラグイン好きなら試さずにはいられない、なんともキャッチーなコピーと共に紹介されています。
僕の大好きなアーティスト「STIMMING」も使っているということで、
- 他のリバーブと何が違うの?
- どんな音楽にマッチするのか?
- 実際に使ってみた感想は?
といったことをふまえつつ、紹介していこうと思います。
少しお値段が高いので、上級者向けのプラグインかもしれませんが、変わった空間系エフェクトを探しているという人はぜひ読み進めてみてください。
ADAPTIVERBの特徴 – 他のリバーブとの違いは?

ADAPTIVERBという名前は、「ADAPT(適応)」と「REVERB(残響)」という2つの単語から来ていて、その名の通り原音の輪郭をぼやけさせず、どんな音にもしっかり適応(ADAPT)してくれるリバーブという意味です。
これによって部屋の反響を再現するのではなく、原音になじむような自然なリバーブ音を生成できるというわけですね。
さて、まずはADAPTIVERBの機能を軽く確認しておきましょう。
機能
ADAPTIVERBには、主にこのような機能があります。
・独自の音響特性を備えた革新的な新しい残響アプローチ。
ADAPTIVERB – Overview
・バイオニックサステインリシンセシスは、驚くほど有機的なテールを作成し、入力からノイズの多いコンポーネントを排除して、粒状感のないクリアで調和のとれた結果を実現します。
・入力と調和していないエフェクトコンポーネント、キャプチャされたハーモニックフィンガープリント、またはオンスクリーンキーボードを使用して定義された一連のノートを削除するためのハーモニックコンターフィルター(HCF)回路 。
・エフェクトを特定のキーに適合させるためのフィルタリングおよびピッチ量子化ベースの HCFキーボードモード。
・クロスフィルタリング効果を作成するためのHCFHOLDモード。 レイトレーシングとオールパスベースのリバーブエンジン。
・ドローン、パッド、無限リバーブタイプのサウンドを作成するための入力FREEZE機能。
・アディティブシンセシスタイプのサウンド用に少量のオシレーターを使用して入力の倍音成分を再現するSIMPLIFY関数。
・オクターブ、5次、またはユニゾン間隔の倍音をリバーブに追加するためのRICHNESSパラメーター。
・高調波合成ベースのAIRを含む前処理セクション。
・パンとバターのリバーブ、「見えない」リバーブ、楽器/声の色のリバーブ、クロスフィルタリング、適応的にフィルタリングされた遅延、入力信号なしで再生されるパッド/ドローンなど、幅広いエフェクトをカバーする400以上のプリセット。
・すべての主要パラメーターのMIDIコントロール。
これは製品ページから抜粋したものですが、「なんだか凄そうだけどよくわからないな…」って感じですよね。
とりあえず「すっげーAI技術を駆使して、めちゃくちゃクリアな残響を表現できるんだぜ!」といったところでしょうか。
その他にも倍音成分を加えるサチュレーション的な機能があったり、5度や12度の音を追加するシマーリバーブといった機能があります。
ADAPTIVERB特有の3つの技術
ADAPTIVERBでは、「BIONIC SUSTAIN RESYNTHESIS」「RAY-TRACING REVERB」「HARMONIC CONTOUR FILTER」という3つの独自テクノロジーが使われています。
「なぜADAPTIVERBを使えば、クリアで有機的な残響音をつくることができるのか」ということが、この3つの技術を使って詳しく書かれているのですが、正直よーく読んでみても理解できませんでした・・・
結局使ってみて心地よいかどうかで選べばいいと思うのですが、もし技術的なことに興味があればこちらの英語マニュアルを読んでみても良いでしょう。
ADAPTIVERBの心臓部には、バイオニック・サステイン・シンセサイザーがあります。簡単に言えば、何百ものオシレーターのネットワークを使って「リバーブ・テール」を合成し、ノイズや過渡現象を無視して、入力音のピッチ/ハーモニックな部分だけを再現するように学習します。大まかな例えとして、各オシレーターは入力信号の支配的な高調波成分を選び出し、周波数と位相の両方でそれにロックします – 他のオシレーターと「調整」しながら、よりスマートな動作をします。これらのオシレーターにリリースタイムを設定(SUSTAIN パラメーターで調整)することで、「リバーブテール」が作成されます。この設計の結果、「ハーシュネス」や「粒状感」がなく、ソース素材自体の特徴である共振周波数以外の固有の周波数を持たず、デフォルトではソースと見事に調和します。オシレーターを扱っているので、このアプローチでは、微妙なものからドラマチックなものまで、音色を操作することができます。
ADAPTIVERB – Manual
ユニークなHARMONIC CONTOUR FILTERは、先行する部分のアウトプットを後処理します。これは非常に強力なツールであり、実験的な作業に適しています。その主な目的は、例えばソーストラックにコードチェンジがあった場合など、入力と衝突するようなピッチのある部分をリバーブテールから除去することです。HCFはまた、ソースに完全に溶け込むようにテールを自動的に適応させたり、マイナスの量で適用した場合には、入力とリバーブの間の共通性を抑制して「隙間を埋める」ことも可能です。
ADAPTIVERB – Manual
ADAPTIVERBはどんな人に向いているのか?

このリバーブは、アンビエントやドローンを作っている人にとても向いていると感じました。
ADAPTIVERBは、ピアノやオーケストラにもよく合いますが、やはり5度や12度の音を追加する「シマーリバーブ」的な使い方ができ、美しく神々しいアンビエントな空間を作り出すのが得意です。
独自のアルゴリズムによって、ノイズの少ない透き通った残響を作ることができるのも、アンビエントなどの繊細な音楽を作る上で大きなメリットになるでしょう。
FREEZE機能を使えば、音の一部をロックして、ドローンのような持続音をつくることも可能ですよ。
まとめ

リバーブプラグインは5,000円でもかなり質の高い製品がありますし、DAW付属のものでも十分本格的な制作ができます。
まずは安いものや無料のものから使ってみて、「もっと繊細で粒の細かいリバーブ感が欲しいな」「自分の作りたい音楽に合うリバーブを探している」という人は、こういった高級リバーブプラグインを試してみても良いでしょう。
さっきもお伝えしましたが、アンビエントやドローンを作るアーティストにとっては、ADAPTIVERBはかなり良い買い物だと思いますよ!
今日の記事が、みなさんの参考になれば嬉しいです。