
Chromaphone 2は普通のシンセと何が違うの?



フィジカルモデリングという技術で楽器を「つくる」ことができるんじゃよ。
今日はAASというメーカーから販売されているパーカッション・モデリングシンセ「Chromaphone 2」を紹介します。
・Chromaphone 2 – Plugin Boutique
普通のシンセでもない、サンプリング音源でもないこの特殊なシンセは、「変わった音がつくれるシンセが欲しい」「生楽器のような自然なサウンドのシンセを探している」という人におすすめ。
この記事では、ちょっと聴き慣れない「フィジカルモデリングシンセ」の仕組みから、Chromaphone 2のサウンドの秘密、メリット・デメリットまで解説していきますよ。
Chromaphone 2とは?
Chromaphone 2は「ドラムヘッド」「チューブ」「弦」などの共振モジュールを組み合せる独自の方法で、「生楽器」の音や「現実世界にはない楽器」の音を作り出す特殊なシンセサイザー。
「木琴」「鉄琴」「ドラム」「パーカッション」のような音色が中心になりますが、ギターの音や生楽器っぽいシンセサウンドや、エレピのようなサウンドを作ることもできます。


プリセットが豊富なので、難しい音作りをせずとも十分使えるのですが、このシンセは「楽器をつくれる」というところに大きな魅力があります。
上の動画を観るとわかりますが、とてもシンセで作ったとは思えないような自然な生楽器のサウンドが生み出されていますよね。
この音作りを可能にしているのは、冒頭で紹介した「フィジカルモデリング」という技術です。
そもそもフィジカル(物理)モデリングって何?
最近はフィジカルモデリング技術を使ったシンセが増えてきましたが、これは実際の楽器の音を録音(サンプリング)してつくる「サンプリング音源」や、いま流行りの「ウェーブテーブルシンセ」とは違います。
Chromaphoneは、完全にApplied Acoustics Systems(AAS)物理モデリング技術に基づいており、サンプリングもウェーブテーブルも使用しません。音は、さまざまな種類の共振器とそれらがどのように相互作用するかをモデル化する数式をその場で解くことによって生成されます。
この説明にもあるように、フィジカルモデリングとは生楽器の「共鳴」や「振動」をコンピューター上で計算して音を出す仕組みのこと。
なので、単に生楽器がサンプリングされた音源なら楽器の音色を変えようがありませんが、フィジカルモデリングシンセなら、パラメーターで共鳴や振動の具合を変化させることによって、この世にない新たな楽器の響きを作り出すことができるのです。
Chromaphone 2のココがすごい
ちょっと難しい説明をしてしまいましたが、簡単にChromaphone 2のどこがすごいのか?をまとめてみました。
- サンプリング(録音)を使っていないのに、生楽器のような自然なサウンド
- 新しい楽器をパソコン上で「つくる」ことができる
- 普通のシンセではつくれない「リアル」なサウンド
- 素材の共鳴や振動をシミュレートして、複雑な響きを生み出す
- 豊富なプリセット
まず、Chromaphone 2の一番の魅力は、生楽器のようなリアルなサウンドです。
このリアルなサウンドを自分の手でつくったり変化させられるのは、音好きとしてかなり嬉しいポイントですね。
そのサウンドは、複雑な共鳴や振動をもとに作られているので、エフェクトをたくさんかけたりしなくても、曲中で映える存在感のあるサウンドに仕上がります。
もちろんプリセットを使うだけでも、十分使えるシンセであることは間違いありません。
Chromaphone 2のサウンドの秘密を解説
ではどのようにして、Chromaphone 2の複雑なサウンドは作られているのでしょうか?
そこには「カップリング」という、このシンセのもっとも重要な仕組みがあるのですが・・・


まずは、Chromaphone 2の基本的な音の流れを見てみましょう。
カップリングを「使う」「使わない」の2種類の音の流れがあります。
1つめのカップリングを使わない繋ぎの場合、


左側の音源となる「マレットの音」と「ノイズ」が、中央にある2つの「共振モジュール(Resonator)」に入ることで共鳴や振動を生み出します。


共振モジュールは、次の画像のように、弦、木片、木琴、金属の板、薄い膜、チューブの中から選んで組み合わせることができる。
その後、別々に生み出された共鳴音が「FX1」「FX2」のリバーブやディレイなどのエフェクトに入り、音が完成します。
2つめのカップリングを使った繋ぎの場合、


中央の共振モジュールが連結しているのが分かりますね。
カップリングとは、この2つの共振器が互いに影響しあう現象のこと。
カップリングモードでは、共振器Aが刺激され、エネルギーが接合点で2番目の共振器に伝達されます。一見すると、この構成は、Resonator Aからの信号がResonator Bに送信され、Chromaphoneが送信される単純な直列構成のように見えます。は、2つのオブジェクトが結合されたときに実際に発生するエネルギーフローの双方向の性質を考慮に入れています。つまり、Resonator Bがエネルギーを受け取ると、振動が始まり、それがResonator Aの動きに影響を与えます。これらの複雑な相互作用のモデリングにより、実際のアコースティック楽器の豊かなサウンドを再現するトーンと音色が得られます。
上の図の「COUPLING」という部分では矢印が行ったり来たりしていますが、これは音が単に左から右に進むわけではなく、共振器の間で行ったり来たりすることで複雑な音を作っているということですね。
説明がややこしくなりがちで申し訳ないのですが、この動画を観れば、僕が何を言っているのか理解できるはず。
このような仕組みを使うことで、Chromaphone2では複雑で独特なサウンドを作ることができるのです。
Chromaphone 2はこんな人におすすめ
さて、ここまでChromaphone 2の特徴やおすすめポイントを見てきましたが、実際どんな人におすすめのシンセなのでしょうか?
Chromaphone 2は、こんな人にぜひ使ってみて欲しいです。
- 音づくりができる生楽器系音源が欲しい
- オリジナルの楽器を作りたい
- 変わった音のシンセが欲しい
ドラムやパーカッション系やストリングス系の楽器を得意としているので、こういった音を作りたい人にはかなりおすすめ!
こんな人は買っちゃダメ!
逆にChromaphone 2を買ってはいけないのは、以下のような人です。
- 「THEシンセサイザー」なサウンドが欲しい
- メインで使うシンセを探している
- ぶっといシンセリードやベース音源が欲しい
Chromaphone 2は普通のシンセではないので、メインとなる万能なシンセを探しているという人、Moogのようなぶっとい音を求めている人にはおすすめできません。
あくまで生楽器のような質感を求めていて、変わった音づくりができるシンセを探しているという人におすすめです。
もしメインで使うためのソフトシンセを探しているなら、こちらの記事でおすすめのシンセを紹介しているので興味があればご覧ください。


僕がフィジカルモデリングシンセ「Chromaphone 2」をおすすめする理由 | まとめ


Chromaphone 2は、「マレットの硬さ」「叩く位置」「ノイズの密度」などのパラメーターを細かくコントロールして、オリジナルのサウンドを作れるマニアックなソフトシンセ。
音づくりが好きな人にはもちろんbvbxzっcfxbfcvxzプリセットも良質なものが多いので、単にいい音のモデリング系パーカッションシンセを探しているという人にも、ぜひおすすめしたい製品ですね。
この質感は、他のシンセやサンプル音源ではなかなか再現できないのでかなりおすすめです。
気になった人はぜひチェックしてみてください。
・Chromaphone 2 – Plugin Boutique