最近は、iZotope「Ozone」や「Neutron」などAIを使った数々のプラグインが販売されていますが、AIプラグインと言えばSoundtheory「Gullfoss」も忘れてはいけません。
Gullfossはミックスをリアルタイムで解析し、1秒間に300回以上のEQ処理をおこなうことで、ミキシングの濁りを取り除いてくれるプラグイン。
パラメーターが少なく、とてもシンプルなので、これを使えば即座にミックスを整えることができます。
初めてこれを使った時、あまりにも簡単にくぐもったミックスがクリアになったので、かなり驚きましたね。
iZotope製品とはまったく異なる方法で処理を行うので、OzoneやNeutronといったAIプラグインを持っている人にもおすすめの製品です。
さっそく、詳しい中身をみていきましょう。
Gullfossにできること
Gullfossは、ミキシングのいろんな場面で応用することができます。
・マスタリング用としてミックスの最終バスにさす
・ディエッサーとして使う
・ポスプロ業務で整音に使う
・ライブで音の抜けを良くする
詳しくは公式ページに動画で紹介されていますが、Gullfossはこういったいろんな用途で使えます。
参考: Get your Gullfoss on. – Soundtheory
通常のGullfossプラグインに加えて、「Live」「Master」という用途に合わせた専用プラグインも付いており、ライブで使うならレイテンシーの少ない「Live」を、マスタリングに使うならもっともクオリティが高くノイズの少ない「Master」を、というように使い分けることもできます。
ミキシングの精度をさらに高めたいという人にもおすすめですが、ポスプロ業務で音の抜けを良くしたり、音のバランスを整えたりするのにもかなりおすすめですよ。
シンプルすぎるGullfossのパラメーター
Gullfossで操作できるパラメータは、たった5つしかありません。
ちょっと特殊なパラメーターなので、慣れるまでは難しく感じるかもしれませんが、覚えてしまえばかなり便利ですよ。
まずは、メインとなる2つのパラメーターから見ていきましょう。
RECOVER: マスクされている音を強調する
TAME: 強調されすぎている音・他の音をマスクしている帯域を下げる
基本的に、この2つのパラメーターを使って音の濁りを取っていきます。
ちょっとわかりにくいパラメーターですが、これは英語の意味がわかると理解が深まります。
・RECOVER = 回復する, 取り戻す
・TAME = 飼いならされた
RECOVERは「回復する, 取り戻す」、つまりマスクして隠れてしまった音を回復させ、取り戻すためのパラメーターです。
TAMEは「飼い慣らされた」、つまり他の帯域をマスクしてしまうくらい強調している音を飼い慣らして目立たなくするためのパラメーターですね。
BIAS: 「RECOVER」と「TAME」のバランスを調整する
そして「BIAS」で、先ほどの「RECOVER」と「TAME」のバランスをとり、微調整をします。
BRIGHTEN: 音の明るさを調整する
このパラメーターでは、音の抜け感や明瞭度をコントロールすることができます。
やりすぎ注意ですが、ミックスに合わせてここで明るさの微調整をすると良いでしょう。
BOOST: ラウドネス曲線に合わせた周波数コントロールをおこなう
ラウドネス曲線とは、簡単に言えば人間は小さい音量でリスニングしている時は低音が小さく聞こえ、大きい音量でリスニングしている時は中高域がうるさく聞こえてしまうという人間の耳の特性をグラフにしたもの。
参考: 【解決済み】DTMに最適なリスニング音量について調べてみた – スタジオ翁
BOOSTを使うと、この特性に沿った周波数のコントロールが可能で、数値を大きくするほど低域が大きくなり、中高域のうるさく感じる部分が抑えられます。
このパラメーターをうまく使えば、耳障りな音を減らして、自然なサウンドにすることができます。
Soundtheory「Gullfoss」- ミックスの濁りを取り除く最先端のAIプラグイン | まとめ
Gullfossは簡単に使えてとても便利なプラグインですが、ついつい濁りを取りすぎてしまい、芯のないサウンドになってしまうこともあるので注意が必要です。
どのくらいの設定がベストなバランスになるのかは、ある程度の経験がないとなかなか判断が難しいので、簡単に使えそうで意外と使いこなすのが難しいプラグインでもありますね。
特定のチャンネルで使う時は他の音とのバランスを確認しながら、マスタリングで使う時は他の曲をリファレンンスとして参考にしながら微調整をしていきましょう。
とは言え、使いこなせれば強力な武器になるのは間違いないので、ミックスの抜けが悪く悩んでいるという人はぜひ試してみてください。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました🙂
長所:
・簡単にミックスの抜けを良くすることができる
・パラメーターが少ないので使いやすい
・今まで時間がかかっていた作業を一気に減らすことができる
短所:
・適切な設定をするには、ある程度の経験が必要
・細かい帯域のコントロールはできない