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ベーストラップ(吸音材)で劇的に音は変わる!その選び方と設置について

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Issey
作曲家、音響エンジニア
23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?

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前回に引き続き、吸音材についてのお話です。

今日は吸音材の中でも「ベーストラップ」と呼ばれる、主に低域のトリートメントをしてくれる吸音パネルについて掘り下げていきます。

ルームアコースティックの調整でも比較的苦労するのが低域の調整ですが、特にダンスミュージックやヒップホップを作っている人にとっては、低域がクリアに見えるモニター環境を作ることはとっても大切!

一般の吸音材ではベース帯域まで吸音することはできないので、低域のモヤっとした感じや、低域にマスキングされて中高域がハッキリ聴こえないという人は、ぜひ吸音材選びの参考にしてみてください🙂

なぜベーストラップが必要なのか?

そもそもなぜベーストラップが必要なのかというと、低音はスピーカーの音に悪影響を与えやすいからです。

音には「指向性」という原理があって、これは高い音ほどまっすぐ直線的に進み、低い音になるほどスピーカーを中心に円を描くように広がってしまうというもの。(次の動画の0:19を観るとわかりやすいです)

Speaker Placement: How far from the wall should I place my speakers? 

なので低音はスピーカーの横や後ろなど、いろんな場所に反射し、その結果、特定の周波数でのキャンセルや、中高域のマスキングなどを起こしてしまうのです…

ベーストラップを取り付ける位置と優先順位について

そこで低域の処理にもっとも適しているのが、ベーストラップと呼ばれる低音の吸収に特化したパネルなのですが、ベーストラップは一番低音がたまりやすい「部屋の角」に設置するのが一般的です。

写真の赤い部分ですね。

The Ultimate Guide to Bass Traps for Home Recording

赤い部分は「三面体の角(Tridhedral Corners)」とも言われますが、まずは低音が一番溜まりやすいこの場所にベーストラップを設置するのが、コスパの観点からみても最強です。

ベーストラップが余っていたり、もっと低域を引き締めたいということになれば、次は「二面体の角(Dhedral Corners)」と呼ばれる青いところ(辺の部分)にベーストラップを設置すると良いでしょう。

そして一般的なスポンジ(多孔質)のベーストラップなら、低域だけでなく中高域もほどよく吸音してくれるので、最低限の予算でルームアコースティックを整えたいという人は、一般的な吸音材より先に、ベーストラップから購入したほうが良いかもしれません。

ベーストラップには2つの種類がある

次に、ベーストラップの種類について見ておきましょう。

ベーストラップは、材質や構造によって主に2種類にわかれますが、ほとんどの人は予算の都合上、「多孔質アブゾーバー(スポンジやグラスウールのように小さな穴の空いたタイプの吸音材」を選ぶことになると思います。

1. 多孔質アブゾーバー(Porous Absorbers)

多孔質アブゾーバー(Porous Absorbers)

「アブゾーバー」とは吸音材のことですが、多孔質アブゾーバーは上の写真のような、スタジオなんかでもよく目にする吸音材のこと。

多孔質アブゾーバーにはグラスファイバーやロックウールなども含まれ、これらは音を熱エネルギーに変換することで吸音してくれる仕組みになっています。

価格も安い上、広範囲にわたる周波数をカバーしてくれるので、スタジオだけでなく個人宅に設置されていることも多いですね。

ただし、軽くて薄い分、次に紹介する「レゾナントアブゾーバー」ほど低域の吸音には向いていません。

2. レゾナントアブゾーバー(Resonant Absorbers)

多孔質アブゾーバーとは対照的に、レゾナントアブゾーバーは低域だけを吸音してくれます。

そのレゾナントアブゾーバーには主に2種類あって、「ヘルムホルツ共鳴器(有孔ボード)」「ダイアフラムアブゾーバー」にわかれています。

ヘルムホルツ共鳴器(有孔ボード)

ヘルムホルツ共鳴とは、瓶に息を吹きかけることで「ボー」という音が鳴るあの原理のことで、写真のようなものは「ヘルムホルツ共鳴器」と呼ばれています。

ヘルムホルツ共鳴器の例

この原理を応用したものが吸音パネルとして販売されていて、会議室などでもよく見かける「有孔ボード」もヘルムホルツ共鳴器の一種と言えます。

会議室や教室でも目にする有孔ボード

ダイアフラムアブゾーバー

ダイアフラムアブゾーバーは、このように厚手で大型のボックス構造になっていて、壁のすぐそばに置くことで低域のみを吸音してくれます。

ダイアフラムアブゾーバーの例

場所はとりますが、多孔質アブゾーバーとうまく組み合わせることで、周波数全体をバランスよく吸音し、ルームアコースティックを整えることができます。

おすすめのベーストラップ3選

最後に、国内で買える定番ブランドのベーストラップを3つ紹介します。

1. Auralex LENRD

AURALEX LENRD Bass Traps – サウンドハウス

Auralexは吸音材の定番メーカーで、いろんな海外サイトでもおすすめとして一番に挙げられることが多いですね。

ベーストラップを含む、いろんなタイプの吸音材を販売していて、サウンドハウスでも多く取り扱われています。

ちなみに、音のたまりやすいコーナーを重点的に吸音する「ATOM-12」というセットも販売されています。

Auralex ATOM-12 System – サウンドハウス

2. Auralex Studio6 Bass Trap with Stand

AURALEX Studio6 Bass Trap with Stand – サウンドハウス

こちらもAuralexですが、壁に貼り付けるタイプではなくスタンド型になっているので、壁紙を気にすることなくベーストラップを設置することができます。

スタンド型だとリスニングポジションでの聴こえ方に応じて、気軽に吸音ポイントを移動できるのも大きなメリットですね。

3. Primacoustic London Bass Trap

Primacoustic London Bass Trap Kit – アマゾン

Primacousticも吸音材やアイソレーターなどでよく知られているメーカーで、デザイン性の高い吸音パネルは、どんな部屋やスタジオにもマッチするでしょう。

僕もベーストラップではないですが、Primacousticの吸音パネル「London 10」を購入したので、届き次第レビューをしたいと思います。

吸音性能もかなり高く、この動画を観れば、どれほどPrimacousticの吸音がすぐれているのかがよく分かります。

Primacoustic Before and After Acoustic Treatment

ベーストラップ(吸音材)で劇的に音は変わる!その選び方と設置について | まとめ

ベーストラップは低音を吸収するため、厚手で重いものが多いですが、「二トムズ はがせる両面テープ」などの壁を傷つけないタイプのテープを使えば、おすすめとして紹介した「AURALEX LENRD Bass Traps」くらいなら取り付けることができます。

僕も家で「AURALEX LENRD Bass Traps」を使っていますが、かなり劇的に低音が吸収され、中高域の抜けがよく、視界が一気にクリアになりました。

「低音のミックスがうまくいかない」

「全体的に音がぼやけているように感じる」

という人は、低域を重点的にトリートメントすることで問題を解決できるかもしれませんよ。

おすすめで紹介したベーストラップは、アマゾンやサウンドハウスで簡単に購入できるので、気になった人はぜひ試してみてください。

この記事が、みなさんの役に立てば嬉しいです🙂

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アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。

この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?