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TuneCoreではなくDistroKidから曲をリリースした理由

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個人で、SpotifyやApple Musicに音楽を配信する時は、通常「音楽ディストリビューションサービス」を使うのですが、これに登録することで、この世に何十個とある音楽サブスクサービス(Spotify, Apple Music, Amazon Musicなど)に一斉に楽曲配信でき、収益管理も自分でできるようになります。

僕は今まで、レーベルに曲を送ってリリースしてもらうことがほとんどだったのですが、今回は別名義でのリリースを始めることもあり、音楽ディストリビューションサービスに登録して、楽曲を配信してみることにしました。

色々と調べてみた結果、DistroKidが良さそうだったので、今日はDistroKidの特徴や、DistroKidを選んだ理由などについてご紹介していきます。

DistroKidとTuneCoreで迷った

海外サイトを調べていくと、TuneCoreが最大の音楽ディストリビューションサービスであり、多くの人がおすすめしていることがわかりました。

日本にもTuneCore Japanという支部があるので、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

TuneCoreは老舗ですが、DistroKidは比較的新しい会社で、数年前にこの業界で価格破壊を起こしたことで注目を集めるようになりました。

このことは、DistroKidのブログにも載っているのですが、TuneCoreはリリースを重ねるたびに毎年の費用がかさんで行くのに対し、DistroKidは当時から、どれだけリリースしても年間のサブスク料のみが課金されるというモデルだったそうです。

DistroKidはTuneCoreより優れているのか? – Distrokid

でも今はDistroKidによる価格破壊により、TuneCoreも「Unlimited Release」というサービスで「年間のサブスク量を支払えばリリースし放題になるよ」というプランを開始しています。

ところが!

世界でも日本の音楽文化が異質だということはよくよく知られていますが、TuneCore Japanでは「Unlimited Release」のサービスは利用できず、シングル、もしくはアルバムごとに毎年使用料を払わなければならないという超ガラパゴスな事態になっているのです。

「いやいや、そんなのおかしいだろ」と海外のTuneCoreに登録しようとしたのですが、日本から本家のTuneCoreには登録できず…

TunnelBearなどのVPNを使ったり、海外の偽住所を書いてしまえば登録できるのかもしれませんが、あとあと面倒なことになっても困るので、サービス内容もそこまでTuneCoreと遜色ないDistroKidに登録することにしたというわけです。

Distrokid

両者の料金プランの違い

ここで、DistroKidとTuneCore Japanの料金プランを比較してみましょう。

まずは、TuneCore Japanから。

https://www.tunecore.co.jp/

これはすべて年間の使用料金で、シングルであれば1,500円、アルバムなら5,000円ほどかかります。

シングルを数枚出すくらいなら良いですが、いくつもリリースを重ねるとなると、年間のサブスク料金が結構な金額になってしまいますね。

ちなみに本家のTuneCoreは、値段設定が全然違います。

収益の20%をTuneCoreが持っていく「Pay Per Release」プランなら、なんとシングルもアルバムも無料でリリースできます。

収益を100%得たいなら、TuneCore Japanと同じような金額設定の年間サブスクプランに加入する必要があります。

これ以外にも、本家のTuneCoreには「Unlimited Plan」があり、年間15ドルでリリースし放題、アーティストに100%の収益を還元というお得なプランになっています。

次に、DistroKidのプランを見てみましょう。

複数のアーティストを抱えるレーベルオーナーでない限り、プランは「Musician」か「Musician Plus」のどちらかを選ぶことになります。

https://musicgrowthmachine.com/distrokid-pricing/

僕は、リリース日などのカスタマイズが可能なMusician Plusに加入していますが、年間で40ドル支払えばリリースし放題になります。

Shazamの検索機能やYouTube Content IDへの登録など、オプションを選ぶと追加料金がかかるようになっていますが、必ず登録しないといけないような重要なオプションではないので、これは必要な方だけ登録するといった感じになります。

このようにプランを見比べてみると、価格面では圧倒的にDistroKidが優れていることがわかりますね。

海外のTuneCoreが使えると良いのですが、国内利用で価格を抑えたいならDistroKid一択になるでしょう。

Distrokid

DistroKidがTuneCoreに劣っているところは?

TuneCoreと比較した場合、DistroKidには不利な面がいくつかあります。

人によってはあまり重要ではありませんが、DistroKidに登録する前に、ここは抑えておきましょう。

  1. 国内サービスに配信できない
  2. ランディングページの設定が必要
  3. YouTube Content IDの登録が有料
  4. サブミット機能がない

1. 国内サービスに配信できない

一番大きいのは、国内のサービス(Line Music、AWAなど)に配信されないことだと思います。

世界レベルで見ると主流ではないですが、Line MusicやAWAなどの国内サービスは10代~20代に支持されているので、そのあたりの層をターゲットとした音楽を配信するなら、DistroKidではなくTuneCoreを選んだ方が良いでしょう。

僕の周りでは、ほとんどがSpotifyやApple Musicといった主要サービスを使っていたので、これは特に気にしなくてもいいかなと思いました。

2. ランディングページの設定が必要

ランディングページとは、SpotiyやApple Musicなどのリンクが1つのページにまとまった、楽曲紹介のためのページを指します。

https://www.tunecore.com/social

TuneCoreならこの設定が必要ないのですが、DistroKidだとランディングページにSpotifyのリンクくらいしかないので、自分でApple Music、Amazon Music、Tidalなどのリンクを貼り付けていく必要があります。

リリース毎にこれをするのは少しだけ手間ですが、そこまで面倒な作業ではありません。

3. YouTube Content IDの登録が有料

YouTubeにContent IDという機能がありますが、これはあなたの楽曲が他の誰かの動画で使われた際に、楽曲の使用料がアーティストに入る仕組みです。

YouTube コンテンツ収益化サービスとは? – TuneCore

最近はよくYouTubeで、「ひろゆき切り抜き」などの切り抜き動画を見かけますが、これもContent IDによって動画が判別され、ひろゆき本人に収益が分配されているケースが多いと思います。

TuneCoreではContent IDの登録が無料ですが、DistroKidだと年額5ドルを支払うことでYouTube収益の80%をアーティストが得ることができます。

このサービスを必ず使いたいなら、Content IDオプションがあらかじめ含まれているTuneCoreを選ぶ方が良いかもしれません。

4. サブミット機能がない

TuneCoreには、サブミット機能の説明がこのように書かれています。

新譜リリースをサブミットすることで、バナー・ピックアップ欄・プレイリストなど、配信ストア上であなたの楽曲が展開・紹介がされやすくなる場合があります。リリースする作品・アーティストの活動内容について、できるだけ多くの情報をサブミットしましょう。

https://www.tunecore.co.jp/submit

この機能を使うことで、新譜のリリースがSpotifyのプレイリストなどに載り、紹介される可能性があります。

あくまで「可能性がある」というだけなので、必ずしも紹介されるわけではありませんが、プレイリストに載ることでいろんな人に聴かれやすくなるので、この機能はぜひ使っておきたいところ。

DIstroKidにサブミット機能はありませんが、実はSpotify for Artistというツールから、誰でも簡単にサブミット機能を使うことができるので、わざわざTuneCore内で完結させる必要もありません。

詳しい方法は、以下のページでも紹介されていますので、参考にしてみてください。

【音楽活動の必須ツール】1時間でわかるアーティスト向けSpotify for Artistsの使い方(改訂版)

How to submit a song for Spotify playlist consideration

DistroKidの魅力

DistroKidの魅力は、「圧倒的な安さ」と「専用アプリ」の2つだと思います。

先ほど説明した通り、価格面では圧倒的にDistroKidの方が有利です。

価格が安いから機能が少ないわけではなく、必要最低限の機能は備えているので、サービス面での不便を感じることはほとんどないでしょう。

あと、DistroKidにはスマホの専用アプリがあり、これを使うことでリリース管理や日々の収益の管理ができます。

「いま、再生回数や収益はどうなってるんだろう?」と気になった時に、すぐにスマホからこういった情報にアクセスできるのはとても便利ですね。

まとめ

まとめると、

  • 国内リリースに力を入れたい人、YouTube Content IDやランディングページのメリットを享受したい人はTuneCore Japan
  • 海外リスナーを中心に発信したい人、なるべくお金をかけずリリースしたい人はDistroKid

ということになります。

僕は、Line MusicやAWAなどの国内サービスからリリースする魅力を感じられなかったのと、TuneCoreに登録する必要性が特になかったのでDistroKidを選びました。

日本でも、本家TuneCoreが利用できればぜひ使ってみたかったんですけどね。

そんなわけで、これからDIYリリースをしていく方の参考になればと思い、記事を書かせていただきました。

これからも、リリースごとに起きる収益やリスナーの変化を、ブログやニュースレターで発信していきたいと思います。

Distrokid

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この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?