総合評価:
世界中の有名ホールからピラミッドまで、さまざまなIRが盛り込まれたコンボリューションリバーブの決定版。IRの豊富さで右に出るものはいない。
メリット
デメリット
- 世界中のホールやスタジオの空間を再現
- 残響のリアルさは一級品
- ビンテージギアの残響も再現
- 音の広がりや距離感を調整できる
- 値段が高い
- iLokドングルが必要
ここ数年ずっと気になっていた、最強のコンボリューションリバーブ「Altiverb」をついに導入しました。
・Audio Ease「Altiverb」- サウンドハウス
コンボリューションリバーブといえば、実際の教会やホールなどの残響をマイクで録音してつくるリバーブのことですが、パラメーターをいじって調整する通常のリバーブと比べて、コンボリューションリバーブを使えば圧倒的にリアルな響きを得ることができます。
その中でもAltiverbは、業界標準とも言えるクオリティの高さとリバーブの豊富さで他のリバーブプラグインを圧倒しており、映画などのポストプロダクション業務でも使用されているほど。
音楽制作で使う人は少ないかもしれませんが、アンビエントやドローンなどの空間系音楽をつくる人にはぜひチェックしてみて欲しいリバーブですね。
この記事では、Altiverbの特徴やメリット・他のリバーブプラグインと何が違うのか?ということを中心に紹介していきます。
Altiverbの特徴と他のリバーブとの違い
Altiverbの大きな特徴は、なんと言っても「IRの豊富さ」にあります。
「IR」とは「インパルス・レスポンス」の略で、さまざまな場所の残響音を録音したサンプルデータのことを言います。
通常のコンボリューションリバーブは、「ホール」「教会」「スタジオ」といった場所で収録されていることが多いのですが、Altiverbにはこれらに加えて「大聖堂」「シアター」「洞窟」「車」「オフィス」「ピラミッド」「ジャンボジェットのコックピット」など、「これっていつ使うの??」というようなIRまで膨大な数が収録されています。
そしてAltiverbには、
- スピーカー位置の調整
- ブライトネス(明るさ)の調整
- リバーブタイムの選択
といった、リバーブを微調整するためのいくつかの機能がついています。
中でも、スピーカー位置の調整機能はとても便利で、
マウスでスピーカーを動かすことで、音の「距離感」や「広がり」を簡単にコントロールすることができます。
通常のアルゴリズミックリバーブほど細かくパラメーターを調整することはできませんが、そのぶん膨大な数の中からリバーブの種類を選ぶことができるので、細かい調整の必要はありません。
これ1つで、いろんなリバーブを楽しむことができますよ。
Altiverbを使う3つのメリット
次に、Altiverbのメリットを3つにまとめてみました。
1. 世界中で収録された膨大な数のリバーブサウンド
先ほども紹介した通り、Altiverbにはさまざまな種類のリバーブが用意されています。
ホールひとつとっても、LAの「ディズニーホール」やシドニーの「オペラハウス」など、世界中のあらゆる有名な場所のIRが収録されていて、見ているだけでもワクワクします。
スタジオなら「20th Century Fox」や「Paramount Studio」など、いわゆる「ビッグ 5」と呼ばれるアメリカ映画業界の有名スタジオのIRも収録されています。
2. スタジオのビンテージギアも忠実に再現
Altiverbの魅力は、ホールや教会といった空間の再現だけでなく、ビンテージのリバーブマシンを再現しているところにもあります。
「EMT250」「Lexicon 480」「AMS RMX16」などのビンテージギアも再現されていますが、これらはUADでも販売されているほどの名作リバーブです。
僕もいくつかのビンテージリバーブをUADで買おうとしていたのですが、「もしかしてAltiverbがひとつあれば、事足りるんじゃない?」ということでUAD版のリバーブを買うのをやめました。
他にも「ARP 2600」のスプリングリバーブや「RE-201 SPACE ECHO」など、名作リバーブが一通り揃っています。
3. ポストプロダクション向けのリバーブも豊富
Altiverbには映画の制作などに使われる、ポスプロ向けのIRも豊富に含まれています。
音楽制作だけでなくポスプロ業務にも携わっている人にとっては、とても便利なツールだと思います。
「洞窟」「階段」「森の中」などの特殊なIRもあって、実験的な音楽をつくる人にとってもかなり興味深い内容になっていますね。
Altiverbのデメリット
最後に、Altiverbのデメリットについても書いておきましょう。
iLokのドングルが必要
これは最初気づかなかったのですが、Altivebを使うには必ず「iLokのドングル」が必要になります。
最近は「iLok Cloud」というサービスがあるので、たいていのプラグインはドングルを購入する必要がないのですが、現行の「Altiverb 7」はiLok Cloudに対応していないので、必ずドングルを購入する必要があります。
ちなみに「Altiverb 8」からはクラウドにも対応するそうなので、ここは次期バージョンに期待ですね。
参考: iLokって何?ドングルの必要性とiLokクラウドの使い道 – スタジオ翁
値段が高い
Altiverbは通常バージョンで約70,000円、サラウンド対応バージョンで約120,000円と、リバーブプラグインとしてはかなり高額です。
ほとんどの人が「リバーブにそんな金額は出せないなー」と感じると思いますが、僕はとにかく空間の表現にこだわりたかったのと、有名ビンテージギアまで再現されているのが決め手となり購入を決めました。
アルゴリズミックリバーブなら5,000円の「Valhallaリバーブ」でも十分だと思いますが、コンボリューションリバーブはある程度のお金をかけないと良いものが手に入らない気がしています。
参考: 【レビュー】Valhalla VintageVerb | 80年代の空気感を再現する高品質リバーブ – スタジオ翁
Jon Hopkinsのようなリアルな空間表現を目指す人にとっては、必須のプラグインだと思います。
Audio Ease「Altiverb」| 値段も音質もケタ違いの最強リバーブプラグイン | まとめ
Altiverbはその値段と用途の広さからみて、個人用ではなく業務用のリバーブプラグインだと思いますが、個人ユーザーであっても音へのこだわりが強い人にとっては、決して高い買い物ではないと思います。
コンボリューションリバーブの購入を考えている人は、ぜひAltiverbも視野に入れていみてください。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。