今日は、最近使ってみて好感触だったdSONIQ「Realphones」というプラグインをご紹介します。
これはスタジオのラージモニターなどの音場を再現するプラグインで、これがあると実際に部屋にバカでかいモニタースピーカーを設置しなくても、大きなスピーカーで聴いた時にどのように鳴るのかをイメージすることができる便利なプラグインです。
これまでにもWavesなど数社から似たようなプラグインは出ていまして、僕もいろいろ試していたのですが、どれもスタジオで実際に聴いているという感じがせずイマイチだったので導入していませんでした。
Realphonesはわりと自然にラージモニターの質感やスタジオの部屋鳴りを再現してくれて、スピーカーから音量が出せない深夜帯や外出先での作業で活躍しているので、ここでひとつ記事にまとめておこうと思います。
dSONIC「Realphones」にできること
Realphonesは、ただのモニター環境再現プラグインにとどまりません。
いくつか機能を書き出してみましょう。
- ラージモニター、ニアフィールドモニター鳴りを再現(ATC, Genelec, NS-10)
- ヘッドフォンの補正ができる
- システムワイドとしてパソコン全体に補正をかけられる
- 音響心理学に基づいて仮想スピーカーの配置を調整できる
Realphonesはヘッドフォンの補正プラグインとしても優秀で、100種類を超えるプリセットから自分のヘッドフォンを選び、それに合わせた補正を行って音をフラットにしてくれます。
・Realphones対応ヘッドフォン一覧 – dSONIQ
音がフラットになると、音楽を聴く時にはとても味気なく感じてしまうのですが、音を正確に判断できるので、ミキシングやマスタリングにおいてはかなりのメリットがあります。
ヘッドフォン補正だとSonarworksが有名ですが、これよりも安い価格で購入できて補正以外の機能もついているので値段的にはお得感があります。
対応ヘッドフォンはSonarworksの方が多いのですが、Realphonesにしか対応していないヘッドフォンもあるので、手持ちのヘッドフォンが対応しているならRealphonesを選ぶ方が良いかもしれません。
さらにRealphonesはVSTとしても使えるのですが、Sonarworksのようにシステムワイドで補正をかけることができるので、YouTubeやSpotifyなどの音も補正することができます。
これはリファレンス曲を聴く際にも便利で、この手の機能はヘッドフォン補正やモニター環境を再現するプラグインには必須だと感じますね。
ラージモニターを再現できるので、低音の感じがつかみやすくなるのはもちろんですが、スタジオでよく見かけるテンモニ(YAMAHA NS-10)も再現されていて、音の最終確認をするのにも役立ちます。

あとは細かい設定になりますが、
- 部屋鳴りをどのくらい補正に反映させるか
- 仮想スピーカーをどのくらいの角度で配置するか
- ロー・ミッド・ハイのEQ
このようにいろんなパラメーターを操作して、自分好みの音に近づけることができます。
いじれるパラメーターが多いので逆にどこを基準にすればいいのか迷ってしまいますが、経験上、デフォルトで再生した時が一番自然に鳴ってくれる気がします。
とはいえプラグインで部屋鳴りを完全再現することは不可能なので、部屋で鳴らした時の雰囲気を大雑把に感じとれればOKという気持ちで使うくらいが良いでのしょう。

ちなみに僕は普段、デフォルト値に近い、このような設定で音をチェックすることが多いですね。
手持ちのヘッドフォン「Ultrasone Signeture Master」はこのソフトに対応していないので、シンプルにスタジオの部屋鳴りを再現するプラグインとして活用しています。
MSやモノラルなどミキシングに便利な機能も満載
あと便利だなと感じたのは、これらのミキシングに使えるMSやモノラルの機能です。

- ミッドチャンネルとサイドチャンネルのモニタリング
- フェイズ反転
- モノラルリスニング
- LRの音を反転させる
- ロー・ミッド・ハイのモニタリング
ステレオでいくら広がりのある良い音になっていても、モノラルでその音像が崩れてしまっていては、どんな環境でもきちんと鳴ってくれる素晴らしい音にはならないので、ボタン1つで音源をモノラルにできる機能は音作りに必須です。
参考: ミックスの質が上がる!DAWのマスターに必ず入れるべきたった1つのプラグイン – スタジオ翁
音をミッド/サイド(MS)にわけて個別に聴ける機能も便利ですね。
ロー・ミッド・ハイの個別モニタリング機能は、リファレンスと自分の曲を比べる際にかなり役立ちます。
過去記事でも紹介している「帯域別ミキシング」と同じようなことが、このプラグイン1つでできるわけです。
dSONIQ「Realphones」のデメリットについて
こちらの動画でも述べられていますが、Realphonesで補正したスタジオの鳴りやモニターの音というのは、実際のスタジオの音とは比べ物になりません。
スタジオを自分で持っている人にとっては、このようなプラグインの音は陳腐なものに聞こえるかもしれませんね。
ただ、実際には爆音で音が出せるスタジオを持っている人なんて一部のプロに限られていて、家ですらまともに音楽を鳴らせない環境で音楽を作っている人はかなり多いと思いますので、そういうベッドルームプロデューサーにとってはとても役立つツールだと感じています。
実際、僕の耳にはRealphonesの音はとてもマッチしていますし、多少の不自然さはあるものの、あった方が作業がはかどるのは間違いないので、実際のスタジオの音と比べてどうかではなく、1つのツールとして割り切って使うのが良いと思います。
まとめ

僕は似たようなプラグインとしてSonarwoksも持っていますが、RealphonesはAirPods Proに対応しているので、外出先で軽く音楽を聴く際にも活躍していますし、深夜のヘッドフォン作業にも欠かせません。
手持ちのヘッドフォンを補正してミキシングのクオリティを上げたい人や、ヘッドフォン作業でもスピーカーから出るような低音を感じながら作曲したい人は、ぜひRealphonesを試してみて欲しいですね。
ヘッドフォンがいくつ登録できるかによって値段が違うのですが、「ヘッドフォンのフラット補正はいらないから、スタジオのモニター環境を再現できる機能だけ欲しい」ということなら7,000円程度で購入することができます。(Lite Pack)
おすすめは、3つまでヘッドフォンが登録できる「Professional Pack(99ドル)」です。
・dSONIQ「Realphones」- Plugin Boutique
お試し版もあるので、気になった方はぜひ試してみてください。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました!