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【解決済み】DTMに最適なリスニング音量について調べてみた

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みなさんは自宅で音楽制作をする際、音量を気にしたことはありますか?

  • どのくらいの音量を基準にミックスをすればいいの?
  • モニターの音が大きすぎると、どんなデメリットがあるの?
  • 自宅でできる音量の調整方法が知りたい!

このような疑問や気になる点がひとつでもあれば、この記事はあなたにぴったりです。

DTMにおいて音を良くするにはプラグインだけでなくスピーカーの音量などのリスニング環境もすごく大切なので、今よりもさらに音楽制作のレベルを高めたいという人は、ぜひご覧ください。

ミックスに最適な音量の基準は何デシベル?

さて、DTMにはどれくらいの音量がベストなんでしょうか?

「隣の人から苦情がこないギリギリの音量?」

「大きな音は好きじゃないから小さめ?」

「棚からものが落ちるくらいロックな感じ?」

それぞれ環境が異なるので一概に「この音量が正しい!!」とは言えませんが、業界でミキシングやマスタリングに最適な音量はある程度決まっています。

人によって数値は若干違いますが、およそ75〜85dBというのが一般的に最適と言われているリスニング音量です。
(ちなみに、オンラインコースなども販売している著名マスタリングエンジニア「Justin Colletti」は、85dBでマスタリングを行っているそう)

これには理由があって、下の図のような人間の聴覚の特性をグラフにした「ラウドネス曲線」というものが関係してきます。

人間が感じる音量と実際の音量は周波数ごとで差があり、これはその特性をグラフにしたものです。

この曲線は1kHzを基準に作られていて、例えば40(dB)と書かれた赤い曲線を左にたどっていくと、100Hzでの値がちょうど60dBとなっています。

これは1kHz/40dBの音と100Hz/60dBの音が、人間には同じ大きさに聞こえるということです。

低域になると、差がもっと顕著に現れていますね。

つまり音量が小さいと人間は低域が聴こえづらく、ミックスのときにその部分を上げてしまいがちになるということです。

それでは音が大きいほど良いかというと、一概にそうとは言えないのです・・・

音が大きすぎるモニター環境4つの弊害 – DTM難聴を防ぐ

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ではリスニング音量が大きすぎると何が問題なのでしょう?

それにはこんな理由があります。

音量が大きいと迫力があって良い音に聞こえる

ロックやクラブミュージックは、大音量で聴くと迫力あるように聴こえますよね。

しかし音楽制作において、この錯覚はとても危険です。

プラグインを挿した場合も同じですが、単純に音が大きくなっただけなのに「音が良くなった!」と錯覚してしまうのは、実はDTMあるあるなんです・・・

それだけ人間の聴覚は、当てにならないということです。

耳が疲れて長時間作業ができなくなる

これはある音量でどの程度の時間リスニングを続けると、耳がダメージを受けるかを表にしたものです。

大きな音でのリスニングは魅力的ですが、耳が悪くなっては元も子もありません。

ダイナミックレンジが狭くなる

音が大きいと全ての楽器がよく鳴っているように聴こえてしまいますが、楽器ごとのバランスは分かりづらくなります。

これは人間の耳の特性によるもので、僕も大きい音で聴いてしまいがちなんですが、小さい音量で聴いている時より全てバランスよく鳴っているように聴こえてしまうので、とても危険ですね。

この方が、いい感じに解説してくれています。

参考: 耳の話その2 : 耳がもつダイナミックレンジを活かす、とか何とか

部屋鳴りが大きくなる

完全にルームアコースティックが調整されたスタジオでない限り、音量を上げれば上げるほど壁からの跳ね返り音が増えるので、正確なミックスが出来なくなってしまいます。

リスニングの際に、部屋の反射の影響を受けないようにするには「音量を上げすぎないこと」がとても重要になってきます。

ピンクノイズを使ったリスニング音量の調整方法

自宅でも簡単にリスニング音量を調整する方法があるので、ご紹介しましょう。

これにはまず、ほぼ全てのDAWに入っている「Test Oscillator」というものを使います。

スピーカーの音量はゼロにして「ピンクノイズ」を選択し、徐々に音量を上げていきます。

DAWのアウトプットのメーターが「0dB」になるまで上げていきましょう。

次に、iPhoneのメーターアプリなどを使って音量を計測します。

SoundMeter X
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本格的な計測機と比較してもかなり数値が近かったメーター

ここでは83dBを最適なリスニング音量としましょう。

徐々にスピーカーの音量を上げていき、メーターが83dBになるまで上げます。

この作業によって出た音量が、リスニングに最適な音量となります。

ただし83dBというのもあくまで目安であって、部屋の大きさによって最適なリスニング音量は異なる場合もあります。

iPhoneのメーターは正確さに欠ける場合があるので、しっかり測定したい方はSPLメーター(騒音計)を購入しましょう。

これは本当に簡易的な測定方法なのでもっと詳しく知りたい方はこちら、または下にまとめてある参考サイトを見てみて下さい。

【解決済み】DTMに最適なリスニング音量について調べてみた | まとめ

いかがでしたでしょうか。

スタジオと違って、自宅でのミキシングはスピーカーや部屋の関係もあるので、なかなか思うようにいかないことも多いでしょう。

僕も制作し始めたばかりの時は、ミックスバランスが全くつかめなくて苦労しました。

すべての楽器がきれいに鳴っているように聞こえていましたが、小さな音量で聞いてみるとスネアが大きすぎたり、聞こえづらい楽器があったりしたのです。

当初、音量によって周波数ごとの聞こえ方に差がある(ラウドネス曲線)ことを理解していれば、より良いミックスが出来ていたことでしょう・・・

「まだ音楽制作を始めたばかりで知らなかった」、「制作を始めて随分経つがミックスが上手くいかない」という方は、ぜひこの音量調整のテクニックを取り入れてみて下さいね!

さらに知識を深めたい人は、これらの記事を参考にしてみてください。

1.  DigiZine

– 制作における適正音量の話から、なぜ音量調整にピンクノイズを使用するのか具体的に書かれています。

2. How to Avoid Ear Fatigue while Mixing | Waves

– こちらはWavesの記事で、グラミーエンジニアChris Load-Algeの解説動画などもあります。

3. 5 Essential Ways to Listen to Your Mixes — The Pro Audio Files

4. Should I listen to music at high volume while mixing music because of the Fletcher Munson Curve? – Quora

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この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?