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Sonarworksを最大限に活用するための使い方のコツ

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Issey
作曲家、音響エンジニア
23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?

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2年ほど前に、部屋鳴りを整えるためのソフト「Sonarworks SoundID Reference」を紹介しました。

Sonarworksでスピーカーの潜在能力を100%引き出す方法 – スタジオ翁

これは今も愛用し続けてまして、普段音楽を聴くときやミキシング時に大活躍しているのですが、このソフトを2年間使い続けた結果、ようやく「どのようにSonarworksを使えば、部屋鳴りをうまく整えることができるのか」がわかってきたので、今日その方法をご紹介しようと思います。

Sonarworksは誰でも簡単に扱えるソフトですが、実は環境によっては正しく測定ができなかったり、なかなか納得のいく音にならなかったりします・・・

ちょっとしたコツや考え方を知ることで、部屋鳴りが整い、音の細部まで聴きとれるような環境づくりができるので、

「Sonarworksを使っているけど、どうもミキシングがうまくいかないな・・・」

「本当にこの設定方法で合っているのかな?」

という人は、ぜひ参考にしてみてください。

まずはソフトに頼らず部屋を整える

Sonarworksを使えば、ある程度までは部屋の「クセ」を取り除くことができますが、めちゃくちゃな環境でいきなりソフトを使って補正するよりも、やはり吸音材などで部屋鳴りを整えてからの方がはるかに正確な音になります。

なので、まずは吸音材を使って部屋の響きを整えるところから始めてみましょう。

例えば部屋の真ん中で手を叩いてみて、壁から「ビーーーーン」という反射音が聞こえてくるなら、「フラッターエコー」によってスピーカーからの音が濁って聞こえている可能性があります。

参考: オーディオの大敵「フラッターエコー」の原因と対策 – スタジオ翁

また、部屋の構造によって低音がブンブンと強調されているなら、中高域がマスキングされてボーカルや楽器の音がクリアに聞こえていない可能性もあります。

参考: ベーストラップ(吸音材)で劇的に音は変わる!その選び方と設置について – スタジオ翁

これらの問題は、Sonarworksを使えばいい感じのところまで持っていけるのですが、やはり完璧に整えることはできませんし、そもそも測定が正確にできないこともあるので、なるべく事前に改善するのに越したことはありません。

モニタースピーカーの位置で測定結果は大きく変わる

さて、「まずは吸音しましょう」と言いましたが、音楽を作り始めた頃だと、なかなか吸音材にまでお金を出せない場合もあります。

なので、まずはお金をかけずに部屋鳴りを整えることを考えましょう。

お金をかけずに部屋を整えるには、音に対する正しい理解が大切です。

実際、モニタースピーカーの位置やリスニングポジションを変えるだけで、音のバランスはかなり変わります。

例えば壁際にスピーカーを置くと低音が強調されますし、リスニングポジションが部屋のちょうど真ん中にあると、特定の周波数が抜け落ちて聞こえたりします。

こういった音響の世界は奥が深いので、なかなか初心者が完璧なセッティングをすることはできませんが、誰でも簡単に試せる知識もあったりします。

参考: モニタースピーカーを正しく設置するための5つのアイデア – スタジオ翁

これも以前まとめた記事ですが、お金を使わずに試せるモニタースピーカー設置のコツをまとめているので、合わせて参考にしてみてください。

スピーカーの位置やリスニングポジションにちょっと気をつかうだけでも、音はかなり改善しますよ。

補正前は極端な周波数のディップがないのが望ましい

ここまで自力で部屋鳴りを整えたら、次はいよいよSonarworksを使った補正に入っていきます。

「ソフトを使って補正して、はい終わり!」でも良いのですが、より正確で自然な音を求めるなら1つだけ気をつけるべきことがあります。

それは、

補正前の状態で、極端な周波数のディップ(へこみ)ができないようにする

ということです。

どういうことかと言うと、例えばこれはネットで拾ってきた測定データですが、100Hzあたりに大きなディップが出来ていますよね。

これは部屋の構造やスピーカーの位置によって起こる「キャンセレーション」によるものですが、この状態で補正ソフトによって100Hzをいくらブーストしても、部屋によって音がキャンセルされ続けてしまうので、不自然なサウンドになってしまう可能性があります。

なので、こういったディップがあるくらいなら、逆に「膨らんでいる箇所があるけど、極端なディップはない」方が理想的なんですよね。

先ほど紹介した過去の記事に、「スピーカーと壁との距離は110cm以上あけるべき」ということを書きましたが、110cmあけれないならむしろ補正することを前提に、壁際ギリギリまでスピーカーをくっつけてしまっても大丈夫なんです。

壁際にスピーカーを寄せると絶対に低音がブーストされてしまいますが、ない周波数をブーストするより、膨らんだ周波数をカットする方がより自然なサウンドになりますからね。

補正前のルームチューニングが正しくできているかどうかを知る方法

Sonarworksを使ったことがある人ならわかると思いますが、最初に「2つのスピーカーの距離」や「リスニングポジションからスピーカーまでの距離」を入力する画面がありますよね。

ここでSonarworksが距離を予測して数値を入れてくれるのですが、この「ソフトが予測した数値」が「実際の距離」と大幅にずれているなら、部屋鳴りがしっかり整っていない可能性が高いです。

僕も最初はあまり部屋鳴りを整えていなかったので、測定するたびにこの数値が実際の数値と数十cmズレていました。

しっかり吸音したりスピーカーの位置を整えることで、このズレはほぼゼロになり、「測定中に手に持っているマイクの位置と、画面上で表示されているマイクの位置が大きくズレている」なんてことも無くなりましたね。

ちなみに最近の測定結果はこんな感じです。

100hzで6dBほどのふくらみがありますが、ディップはほとんどないので、補正時に極端に不自然なEQがかかることはありません。

超低域があまり出ていないのは僕の持っているスピーカーの特性上、仕方ないのですが、これくらいまで詰められているとSonarworksを使って満足のいく結果が得られると思います。

まとめ

コツさえつかんでしまえば、専用のスタジオを作ったりしなくても、かなりバランスのとれた出音のベッドルームスタジオを作るできるでしょう。

モニタースピーカーの配置や部屋づくりにはセオリーや定説がたくさんありますが、部屋の構造や家具の配置などによっても全く条件が変わってくるので、結局は自分の耳を頼りに部屋の配置を決めていく必要があるかと思います。

ちょっと面倒ですが、「モニタースピーカーの位置やリスニングポジションを耳で調整→Sonarworksで測定して結果を確認」というプロセスを何度も踏んでみると、耳が鍛えられて、どういう音が自然でフラットな音なのかもわかるようになってくるのでおすすめです。

音楽制作でここまでシビアに家の音を調整する必要もないかもしれませんが、もしミキシングやマスタリングに力を入れていきたいという方ならぜひ参考にしてみてもらいたいですね。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?