DTM

Ólafur Arnaldsが語るサンプルと録音の決定的な違い

ここ数年、SpliceLoopcloudなどのサブスクリプションサービスが増えたことで、自分で録音せずともいろんな楽器のサウンドが簡単に手に入るようになりました。

以前の記事でも紹介したように、サンプルパックを使えばあらゆるサウンドをパズルのように組み合わせることで、楽器が弾けなかったり音楽経験が少ない人でも簡単に曲が作れるようになります。

参考: 【厳選】DTMに行き詰まった?使える良質なサンプルパックを揃える海外ウェブサイト5選 – スタジオ翁

毎回、いろんな楽器をイチから録音する時間も環境もないので、僕も必ずと言っていいほどサンプルを使って音楽制作をしているのですが、一部のアーティストは今でもサンプルをあえて使わず、毎回自分でレコーディングを行っています。

Tech Talk: Stimming (Electronic Beats TV)

「なんでネットに膨大なサンプルライブラリがあるのに、あえて自分で録音しているんだ?」とずっと疑問だったのですが、これをアイスランドの作曲家Ólafur Arnaldsが、ある動画で解説してくれていたので、彼の意見を参考にしつつ、この「サンプル音源と録音の違い」について深堀りしていこうと思います。

作曲家「Ólafur Arnalds」について

Ólafur Arnaldsを知らない人のために、少しだけ彼の紹介をさせてください。

Ólafurはポスト・クラシカルの作曲家で、ピアノやオーケストラを扱った作曲を得意としています。その一方で、「Kiasmos」というバリバリのダンスミュージックデュオを結成して世界中のクラブでプレイするなど、ジャンルにとらわれず幅広い音楽活動をすることでも知られています。

Ólafurはオーケストラを編成して録音を行うこともありますが、Spitfire Audioという最近勢いのあるサンプルライブラリ制作会社からいくつかの製品もリリースしているので、「サンプル音源と録音の違い」を熟知したアーティストでもあるんですね。

そんな彼が、次の動画で両者の違いや特徴について10分ほど語っているシーンがあったのでこれを参考に解説していきます。(15:09から)

Ólafur Arnalds Explains His Writing Process Behind ‘brot’ From The Album, ‘re:member’

Ólafur Arnaldsが語るサンプル音源と録音の違い

ここではÓlafurが動画内で語っていた話も混じえつつ、サンプル音源と録音の違いを3つにまとめてみたので順に見ていきましょう。

1. サンプル音源はハイカットやノイズ除去が行われている

一般的に、メーカーによってサンプリングされ販売されているサンプル音源は、ハイカットやノイズ除去などの処理が行われています。

これは少しでも音を良くしたいというメーカーの意図で、「サー」という高域のノイズや不必要なバックグラウンドノイズはなるべく少なくしたほうが、ユーザーにも「この製品は音が良くて使いやすい!」と感じてもらえるから。

単音では気にならない程度のノイズでも、和音を出したり音を重ねることで不快なノイズも増えていくので、これは当然ですよね。

ただ、この「ノイズが少ない」ということが逆にサウンドをつまらなく感じさせたり、ハイカットによる高域のきらびやかさが失われてしまうこともあるので、必ずしも「良い」サウンドになるというわけではないようです。

2. サンプル音源はミスが少ない

サンプル音源は、なるべくミスのない正確な演奏で録音されるのが理想です。

高いお金をだして購入したサンプル音源の音程がずれていたり、演奏にミスがあったりすればユーザーは使うのをやめてしまうでしょう。

ところがÓlafurは、この「ミス」が時に、演奏をHuman Being(人間味のある)なサウンドにすると言っています。

どんな素晴らしいプレイヤーでも、音程やリズムが微妙にずれることもありますよね。

しかしサンプル音源として販売するなら、演奏には正確さが求められ、微妙にずれた音程やリズムは後から加工・修正されるかもしれません。

その「正確な」サンプルを使って作る曲は、録音された音だとしてもどこか機械的で味気ないサウンドになってしまうかもしれず、「正確であること」が素晴らしいとは一概には言えないのです。

3. サンプル音源は1音づつ録音されている

サンプル音源はユーザーが演奏したり自由に和音を構成しやすいよう、単音で録音されることが多いです。

特定のコードしか録音されていなかったら、ユーザーは作曲の時にとても不便ですよね。

ところがピアノやバイオリンなど和音を出せる楽器というのは、2つ以上の音が同時になることで複雑な響きが生まれたりするので、サンプル音源だと和音を鳴らしてもそれ以上の響きは生まれず、どこか味気なさを感じてしまうかもしれません。

和音を弾いた時の、1音1音の微妙な音のバランスも、ユーザーがサンプル音源で正確に表現するのは難しいでしょう。

サンプル音源と録音はどちらが優れているのか?

Ólafurは動画の中でたびたび、「どちらかが優れているわけではなく、ただ違いがあるだけ」だと言っています。

実際にレコーディングされた音のほうが人間味があるというのは間違いないでしょうが、一般のアーティストがオーケストラを編成して、自分の作曲したものを弾いてもらうというのは予算的にも技術的にもかなり難しいでしょう。

サンプル音源を使えばお金も時間も節約できるし、気軽に巨大編成のオーケストラを組んだり自宅で思う存分作曲ができますよね。

Spitfire Audioからリリースされている「Olafar Collection」を使えば、僕らが録音したところで到底得られないような「Ólafur Arnaldsらしいサウンド」を簡単に得ることもできます。

 

「サンプル音源は録音より劣っているもの」という認識ではなく、両者の特徴をよく理解して、その時の状況や自分のやりたいことに合わせてうまく使い分けるというのが、サンプル音源をうまく使うコツだと思いますね。

今回の記事が、みなさんの参考になれば嬉しいです🙂

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