「フィールドレコーディング」とは、川のせせらぎ, 生き物の鳴き声, 波の音といった、レコーディングスタジオの外部で録音される音、または技術のことを指します。
もともと映画の撮影や学術研究のために使われていたフィールドレコーディングは、最近ではアンビエント, エクスペリメンタル, テクノといったジャンルの音楽制作に当たり前に使われています。
参考: フィールドレコーディング:その行為と可能性 – RA
僕も最近フィールドレコーディングに興味を持ち、いろいろ試行錯誤している最中なのですが、これまで学んできたフィールドレコーディングのコツや方法、実際に野外にレコーディングをしに行った体験談などを、この記事でまとめておくことにしました。
これからフィールドレコーディングを始めたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
フィールドレコーディングに必要な機材

実はハンディーレコーダーが1台あれば、誰でもフィールドレコーディングはできるのですが、この記事では良い音質で録音をするために、もう少し踏み込んだテクニックや知識を紹介していきます。
自分の楽曲に使ったり、どこかで作品を発表するなら、少しでもクオリティの高いものを録りたいですからね。
ちなみに僕が、前回のフィールドレコーディングで使った機材はこんな感じです。

これを、順番に見ていきましょう。
レコーダー
ポータブルレコーダーは1万円ほどの入門機から10万円近くするものまでさまざまです。
いいレコーダーであれば、内蔵マイクでそれなりの録音はできますが、本格的にレコーディングを行うならやはりコンデンサーマイクを接続して録音したいところですね。
なので、レコーダーはファンタム電源が使えるものを選んだ方が良いでしょう。
ちなみに先ほどの写真に写っているのは、借り物ですがRoland「R-26」という4万円程度のレコーダーです。
フィールドレコーディングの記事も執筆しているドイツのアーティストStimmingは、「Marantz PMD661」という6〜7万円ほどのレコーダーを使っているようです。
コンデンサーマイク
コンデンサーマイクが2本あれば、質の高いステレオ録音できるでしょう。
無指向性でも良いのですが、対象物を狙いにくく周りの音をすべて拾ってしまうので、僕は指向性マイクを使っています。
以前の記事でも紹介した、ロシアのマイク「Oktava MK-012」ならカプセルを交換するだけで、指向性と無指向性の切り替えができるのでおすすめですよ。
参考: 「Oktava MK-012」というコンデンサーマイクを個人輸入してみた – スタジオ翁
ウィンドスクリーン
先ほどの写真では、家にあった適当なウィンドスクリーン(風防)が映っていますが、風の強い日だと役に立たないこともあるので、ファー型(猫の毛みたいなやつ?)を購入したほうがいいかもしれません。
これについてはあまり検証できてませんが、スポンジ型よりはファー型のほうが耐風性が高いようです。
モニターヘッドフォン
モニターヘッドフォン(イヤホン)は、良いものでなくてもいいので、必ず一緒に持ち運ぶようにしましょう。
閉じたヘッドホンまたはインイヤーを使用して録音を監視します。監視せずに記録することは、見ずに写真を撮るようなものです。
自分の耳で聴く音と、ヘッドフォン越しに聴く音は意外と違っていたりするので…
あとはノイズや風の音などが、どのくらい入っているのかを監視するのにも役立ちますよ。
フィールドレコーディングにおけるマイキングの方法

ここからはマイキングについての話に入りますが、僕はマイキングに関してはド素人です。
なのでいろいろ調べていたところ、ステレオマイキングの基本が書かれた2つの良記事を見つけたので、これらを参考にフィールドレコーディングに出かけました。
この中から、いくつかのマイキング方法を紹介します。
XYステレオ
XYは2本のマイクの先端を重ね、内向きに90度でクロスさせる方法です。
位相の揃った存在感のある音になる反面、ステレオの広がりが少ないというデメリットもあります。
MSステレオ
単一指向性マイクと双指向性マイクを使った方法で、正確に空間を表現することができます。
2本のマイクの音量バランスを変えることで、後からステレオ感を調整できる便利なマイキング方法でもあります。
ORTFステレオ
これはフランス放送協会が開発した方法で、2本の単一指向性マイクを110°開き、先端を17cm離して設置します。
人間の耳の幅とほぼ同じなので、実際に耳で聴くようなニュアンスが再現できます。
NOSステレオ
こちらもフランス放送協会が開発した方法で、2本の単一指向性マイクを90°開き、先端を30cm離して設置します。
並列とXYのいいとこ取りのようなマイキングで、ORTFに近いニュアンスです。
僕が試してみたマイキングの方法
素人が2本のマイクを使うとなると、とりあえず並行に並べて録音したくなるものですが、どうやら2本のマイクを並行に並べて録音すると位相に問題が出てしまい、モノラル再生した時に芯の細い音になるようです・・・
音楽制作に使うなら、モノラル環境でもしっかり鳴ってくれるものを作りたいので、僕はMu-‘sさんの記事で紹介されている「NOS stereo」という、オランダ放送協会が開発した方法を使いました。
ちなみに僕が試した時はマイクの角度を広げすぎたのか、かなり左右の広がりが出てしまい、あまり納得のいく結果になりませんでしたね・・・
これも試行錯誤しながら、微調整を繰り返す必要がありそうですね。
フィールドレコーディングのコツと実践 | まとめ

フィールドレコーディングを使えば、楽曲によりいっそう彩りを与えたり、予想だにしないサウンドをつくることも可能になります。
「Spatial Mic」などの360°アンビソニックマイクを使用して、フィールドレコーディングをVRに活用したりするのもおもしろいですね。
音楽だけでなくいろんな場面に応用ができる「フィールドレコーディング」、興味を持った方は、ぜひこの機会に始めてみてはいかがでしょう。
この記事が、みなさんの参考になれば嬉しいです🙂