こんにちは。
今日は「クリッパー」についてのお話です。
クリッパーは、リミッターやサチュレーターと混同されることが多く、日本語の情報も少ないのですが、海外のアーティストやエンジニアたちの間では「どのクリッパーが良いか?」「クリッパーをどのように使うと良いか?」といった話題で賑わっていることもあります。
うまく使えば、音圧を上げたり、サチュレーターやディストーションとはまた違ったパンチを与えることができるので、1つは持っていて損のないプラグインでしょう。
この記事では、クリッパーの仕組みや使い方、おすすめのクリッパープラグインについて紹介していきます。
クリッパーとは何ぞや?
クリッパー(Clipper)とは、文字通り「意図的に音をクリップさせるツール」です。
下の画像のように、クリッパーを通すことで原音(Original Signal)が、上下の端がバッサリはさみで切られたような波形(Clipped Signal)になるのがわかります。
ちなみにリミッター(Limited Signal)との違いですが、リミッターは波形の形を保ったまま自然に音圧を稼ぐのに対し、クリッパーは波形を大胆に変えてしまうので、大きく音が変化します。
クリッパーを挿すと、どんな音になるのか?
音の違いを知りたい人は、こちらの動画を観てみましょう。
リミッターは原音と比べても音の変化が少ないですが、クリッパーが入ると荒々しくパンチのあるサウンドになりますね。
DAWの中で0dBを超えた時に起こるような「デジタルクリップ」は、破壊的で不快なサウンドであることが多いですが、アナログ機材をクリップさせてひずませた時の「荒々しさ」といいますか、パンチのあるサウンドは必ずしも不快ではなく、むしろ「心地よいゆがみ」に聞こえます。
クリッパーの使いどころ
クリッパーの使い方の一例としては、マスタリング時にリミッターの手前にクリッパーを入れることで、リミッターのスレッショルドを稼ぐというもの。
クリッパーを使うことにより、リミッターのみで圧縮した時より音にパンチが出るので、曲に応じて使い分けてみると良いでしょう。
また、ドラムにミキシング段階でクリッパーを入れてパンチを出したり、このあと紹介する「KClip 3」のような自然に倍音成分を与えるクリッパーを、シンセやベースの積極的な音づくりに使うのも良いかもしれません。
そんな「音楽的なひずみ」を与えてくれるのがクリッパーの役割で、プラグインによっては有名なAD/DAコンバーターや、ギターアンプのクリッピングを再現したものまでさまざまです。
おすすめのクリッパープラグイン5選
ここで、いくつかおすすめのクリッパーを紹介していきます。
クリッパーはいろんなメーカーから販売されていますが、プラグインによってクリップの質感が違ったりするので、いろんなクリッパーを試してみてください。
1. SIR Audio Tools「StandardClip」
まずは、王道のクリッパー「StandardClip」です。
機能はとてもシンプルで、4つのモードからクリッパーの種類を選んで使います。
オーバーサンプリング値を変えられたり、ソフトクリッピングの値を設定できますが、これといった特別な機能はありません。
しかしながら、Jaycen Joshuaなどの著名エンジニアにも使われている超定番のクリッパーなので、迷ったらとりあえずこれを選んでおけば間違いないでしょう。
・StandardClip – SIR Audio Tools
2. Kazrog「KClip 3」
こちらはboys be kkoさんにこっそり教えてもらった、Toto Chiavettaも愛用しているというクリッパー。
大きな特徴は、マルチバンドクリッパーであることと、8種類のアルゴリズムを選べるところ。
有名なAD/DAコンバーターやギターアンプを再現したアルゴリズムにより、「クリッパー感」を感じさせない自然な音圧感やパンチを与えてくれるので積極的に音作りに多用できます。
3. IK Multimedia「Classic Clipper」
正直、T-Racksの製品はあまり使ったことがないのですが、このクリッパーはなかなか良い感じです。
音を突っ込んでいくと、低音がブーストされる感じがあるので、ヒップホップやダンストラックに使うのがおすすめですね。
・Classic Clipper – IK Multimedia
4. Airwindows「ADClip7」
こちらは、利用者の寄付によって支えられているChris Johnsonのプロジェクト「Airwindows」による、無料のクリッパープラグインです。
Patreonで月間2,000ドル以上もの寄付があることから、Chrisさんの作るプラグインがどれほど人気なのかがわかります。
5. elysia「alpha Compressor」, Overloud「EQP」
最後に紹介するのは、コンプやEQについている「Soft Clip」としてのクリッパーです。
たまに、おまけのようについてくるSoft Clip機能もなかなかあなどれなくて、適度なひずみを与えてサウンドにパンチを出してくれる優秀なものが多いですね。
「今までSoft Clipのついたプラグインを持っていたけど、その機能は使ったことがなかった」という人は、ぜひ試してみてください。
まとめ
初めてKClip 3を触ってみたとき、「つまりマルチバンドディストーションでしょ?Fabfilter『Saturn』でいいじゃない」と思っていましたが、クリッパーはディストーションやサチュレーターとはまた少し違った、面白い効果を与えてくれます。
なくても全然いいけど、あると、きっと使う時がやってくる。そんな感じのプラグインだと思います。
個人的には、KClip 3で積極的に音を作っていくと、全体的にパンチのある曲に仕上がっていくので、かなり好きです。
楽曲にパンチや迫力を求める人は、ぜひクリッパーを試してみてください。
音づくりが、今よりもっと楽しくなるかもしれませんよ。