ミッドレンジを制するものはミックスを制す?

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最近、久しぶりに楽曲のミキシングを行いました。

1ヶ月ほどミキシングから離れているだけでも、勘は鈍るものですね。

締切が迫っていて四六時中ミキシングをしている時期は、かなり耳の感覚が研ぎ澄まされているのですが、もちろんそうでない時期もあるので、そんな中でもいかにクオリティの高いものをアウトプットできるか、というのは重要な課題です。

いろいろ試行錯誤していたのですが、カギは「ミッドレンジ」にありました。

今日は、日々のミキシングで気付いたミッドレンジの重要性についてお話しし、今日から活用できる「ミッドレンジを意識したミキシングの手法」もご紹介していきたいと思います。

100万円のスピーカーが3万円のスピーカーに勝てない理由

以前、記事でも紹介しましたが、今はAmphion Two 25というモニタースピーカーを使っています。

とにかく解像度が高く、最近は1974年創業の老舗スタジオ「音響ハウス」が、Amphionのみを使ってサラウンド環境を構築したというニュースもあったくらい、プロの間でも信頼のおけるモニタースピーカーです。

参考: AMPHIONスピーカーを導入しイマーシブ対応へと進化を遂げた音響ハウスStudio No.7 – Sound &Recording

ところがこういったスピーカーを使っていても、たまに「パソコンスピーカーや数万円のモニタースピーカーでミックスした音の方が整っているんじゃないか…?」と感じる時があります。

「いやいや、そんなはずはない。僕がこのハイクオリティなスピーカーを使いこなせていないだけだ!」

そう思っていたのですが、どうやらそうではないみたいです・・・

では、なぜこうなるのか?

最近、僕の中で出た結論は「モニタースピーカーがフルレンジでしっかり鳴ってくれるがゆえに、全体のバランスが見えにくくなる」ということでした。

なぜプロは「ラジカセ」で音をチェックするのか?

最近は少なくなっているようですが、昔ながらのスタジオのエンジニアは、ラジカセで音の最終チェックをすると聞いたことがあります。

これはリスナーが家庭用スピーカーで音楽を聴くことを考慮しているためですが、ラジカセは「ハイエンドとローエンドまで音が伸びておらず、リスニングできる帯域がミッドレンジに集中している」というのも理由として挙げられると思います。

昔のPensado’s Placeの動画の中で、エンジニアのJack Joseph Puinが「音楽の重要な要素はミッドレンジに集中している」と言っていましたが、まさにこれが「ミッドレンジを中心にミキシングすることで音のバランスが整う理由」でしょう。

現代でも、「テンモニ(Yamaha NS-10M)」や「Auratone」といった、再生周波数がミッドレンジに集中しているスピーカーを使ってミックスのチェックをするプロの方は多いと思います。

そしてこれこそが、「パソコンスピーカーや、数万円のモニタースピーカーでミックスした音の方が整っている」と感じる理由であり、再生周波数が限定されている安価なスピーカーの方が、全体の音をざっくり整える能力は高いのではないかという結論に至りました。

なので、理想としてはスタジオのように「メインとなるモニタースピーカー」「大きな音像で全体を確認するためのラージモニター」「家庭の再生環境を再現し、ミッドレンジを中心に音を確認できるスモールモニタースピーカー」の3つがあれば最高なのですが、僕たちのような一般のDTMユーザーにはそんな高価な環境を構築する余裕はありません。

僕はAuratoneの購入を考えていて、おそらく今年導入すると思いますが、実はこういった機材を新たに揃えなくても、簡単にミックスバランスをチェックする方法があります。

今すぐできる、ミッドレンジを意識したミキシング手法

それが、EQのフィルターを使って、再生周波数を限定する方法。

こちらの動画に詳しい手順が解説されていますが、要はEQを使って、再生周波数を一時的に「200Hz~4kHz」に絞ってミキシングするという方法です。

こちらの動画では、Fabfilter「Pro-Q」を使っていますが、DAWに付属しているEQなら何でも構いません。

こうやって再生環境を強制的にミッドレンジだけにすることで、今まで意識できていなかった帯域にフォーカスでき、ここからEQなどの処理をすることで結果的にバランスのとれたミックスを作り出すことができます。

もちろんローエンドとハイエンドの処理もする必要があるので、ミッドレンジを丁寧に整え終わったら、それらの部分のミキシングも進めていきましょう。

実際にやってみるとわかりますが、ミッドレンジのみを聞きながらミックスすると、かなりミキシングの粗が見えて、EQ調整が格段にしやすくなります。

そこからフルレンジで再生してみると、明らかに音が良くなっているのがわかります。

Metric ABなどのプラグインを使って他の楽曲と比較する時も、ミッドレンジのみにフォーカスすることでより精細なミキシングができるのが実感できるはず。

ちなみにMetric ABなら再生周波数を指定できる機能が付いているので、このプラグインを持っている人なら、EQではなくこちらの機能を使っても良いですね。

まとめ

今回紹介したのは、「EQで再生周波数を200Hz~4kHzに絞ってミキシングする」という簡単なものでしたが、この効果は絶大です。

特にミックスの最終段階やマスタリング時に行うと、かなりの効果を発揮するでしょう。

一旦、普通にミキシングしてみて、ある程度まで整えたらマスターバスにEQを入れ、再生周波数をミッドレンジに限定してEQ調整をしてみてください。しっかり整えたはずのミックスが、さらに研ぎ澄まされていくのを実感できるはずです。

特別な機材がなくても簡単にできる手法なので、ミキシングに悩みを抱えている人は、ぜひ次の楽曲制作で試してみてくださいね。

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