ヘッドフォンでの音楽体験を向上させる方法

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去年、Ultrasone「Signature Master」というヘッドフォンを購入したことで、音の細かい部分まで見えるようになり、ミキシングやマスタリングの精度が劇的に向上しました。

音の輪郭、ダイナミクス、空間などを確認するにはすごくいいし、音の情報量が多いので音楽を聴いていても楽しいのですが、最近「やっぱり、スピーカーで聴く音よりも少し味気ないな…」と感じるようになってきました。

これは、ヘッドフォンで聴くと部屋鳴りが全くなく「クリア」すぎること、ミキシング・マスタリング用ヘッドフォンならではのフラットな味気ない特性が原因だと思います。

車で音楽を聴いたりライブで音楽を聴くと、超正確な定位や音のバランスでは聴けないものの、臨場感のある聴いていて楽しいサウンドであることが多いですよね。

ヘッドフォンでのリスニングはこの、「臨場感」が圧倒的に不足しがちです。

なので、「ヘッドフォンを使っているときにも、せめてスピーカーで聴いているような音の臨場感がなんとか再現できないかな?」と考えた結果、プラグインを使ってスピーカーの鳴りを再現すればいいんじゃないかという結論に至りました。

さらに臨場感を再現するだけでなく、実機を通したような温かみのある音で聴いた方がさらに音楽が楽しめるのではないかと思い、そこもプラグインを使って再現してみることにしました。

ちなみにこれは、「ヘッドフォンでの音楽体験を向上させる方法」なので、「音質」を上げる方法ではありません。

プラグインを挿すことによって、逆に定位や空間が正確に把握しにくくなるので、この方法はミキシングやマスタリングにはおそらく向いていないでしょう。

今回の記事は「純粋に音楽を楽しみたい場合」や、「ヘッドフォンを使った音楽制作の際にテンションが上がるような音にしたい!」という人におすすめです。

自分専用のプラグインチェーンをつくる

早速ですが、ヘッドフォンで気持ち良い音を聴くために、自分だけの専用プラグインチェーンを作ってみました。

まだ、僕もこのチェーンを作り始めたばかりなので、これから自分の求める音楽体験によって色々セッティングを変えていくと思いますが・・・

とりあえず、今回使ったプラグインはこんな感じです。

  1. True Iron
  2. Little Radiator
  3. Satin
  4. Realphones
  5. IQ-Series Reverb V2

これらのプラグインは、大きく次の3種類に分かれています。

  1. ビンテージエミュレーション
  2. 音場再現ツール
  3. リバーブ

これらをどういう風に使っているかというと、

  • まずは、1のビンテージエミュレーションでアナログ機材の温かみを出し、ヘッドフォンのクリアで味気ない質感を取り除きます。
  • 次に、2の音場再現ツールを使って疑似スピーカーを配置し、ヘッドフォンを使っていても、あたかもスピーカーから音が鳴っているような音にします。
  • 最後に、3のコンボリューションリバーブに入っているスタジオのIRを使い、部屋で鳴っているような残響をほんの少しだけ加えてあげます。

これらのプラグインを入れることで、より音楽的なリスニングができるようになり、スピーカーから聴いているような柔らかい音、臨場感のある音に仕上げることができました。

本当にチェーンに何を入れるのかは人それぞれなので、自分が音楽を聴いていて気持ちいいと感じるプラグインを入れていくと良いでしょう。

ここからは具体的に、どういう効果を狙って各プラグインを入れたのかについてお話していきます。

1. True Iron – Kazrog

まずは、最近よく使っているビンテージトランスのエミュレーションから。

「True Iron」は、6つのトランス回路を再現したプラグインです。

アウトボードのラインアウトの温かみある質感を再現することで、デジタルっぽい味気なさを取り除いてくれます。

アンペックス社は1950年代にカリフォルニア州レッドウッドシティで最初の商業用ミューティトラックマシンやプリアンプマシンを製造したとき
UTC 100シリーズトランスは、優れたサウンドステージと20kHzを超える優れた周波数特性を備えています。
30 Hzから20 kHzまでの優れた周波数特性を備えています。
クラシックなLA2Aリミッターが作られた時、本当の意味での入力トランスの選択肢はUTC HA100xだけでした。
UTCは、初期のユニバーサルオーディオ/UReiのほぼすべてのコンプレッサー、リミッター、プリアンプチャンネルとEQに使用されていました。
UTC 100シリーズを使用して作られたアウトボードレコーディング機器とレコードの量は事実上無限大です。その
UTC HA108xは、暖かく厚みのあるサウンドで、美味しく調和した、まさにUSAクラシックと呼ぶにふさわしいサウンドです。

True Iron – Manual

各トランスの音色を聴いてみて、一番自分がしっくりきた「108X」を選びました。

2. Little Radiator – Soundtyos

次に、1960年代に活躍した「Altec 1567A」という真空管ミキサーを再現したSoundtoysの「Little Radiator」を入れます。

先ほどと同じようにアナログっぽさを加えるためのプラグインですが、これはかなり音の変化が大きいので、MIXノブを使って少しだけ変化を加えるような設定にしました。

参考: Soundtoys「Radiator」の特徴と使い方 | サウンドに1960年代のアナログ感と温かみを与えるプラグイン – スタジオ翁

3. Satin – u-he

u-he「Satin」は、テープレコーダーのエミュレーターです。

モダンからクラシックまでさまざまなテープを再現していて、テープ独自のヒスノイズ、ワウフラッター、バイアス、ヘッドギャップ、サチュレーションなどを加えることで、これまたデジタルっぽい角を取りのぞく作業を行っています。

u-he「Satin」- Plugin Boutique

4. Realphones – dSONIQ

ここまではデジタル特有の硬さを取り除くためのプラグインでしたが、次に、スピーカーで聴いているような臨場感を与えるためのプラグインを入れます。

Realphonesはスタジオモニターや車の中といった、さまざまな環境で鳴る音を再現するプラグインです。

参考: dSONIC「Realphones」でスタジオのモニター環境を再現しよう – スタジオ翁

いろんな機能があるのですが、ここでは右上の「スピーカーの音像を再現する機能」だけをONにしました。

これを使うとヘッドフォン特有の左右の広がりは無くなりますが、音響心理を利用して、目の前のスピーカーから出ているような感覚で音楽を聴くことができます。

5. IQ-Series Reverb V2 – Hofa

最後に、部屋やスタジオの残響音を再現するためにコンボリューションリバーブを入れます。

ここはAltiverbでも良かったのですが、スタジオサイズの良いIRが見当たらなかったので、Hofa「IQ-Series Reverb V2」を使いました。

部屋の反響はあまり目立たせたくないので、DRY/WETで7%だけ入れています。

吸音がしっかりされているスタジオならもっと反響が少なくなるかもしれませんが、僕の家だとこれくらいだと思いますね。

反響音が加わると音がまろやかになるので、長時間のリスニングにも最適です。

プラグインチェーンの有無だとこれくらい違う

実際に上のプラグインを全て入れたものを、オリジナルの音楽ファイルと比較してみましょう。

変化が分かりにくいかもしれませんが、プラグインチェーンありの方が、耳あたりがまろやかで聴きやすい音になっていると思います。

ただ、これは僕のヘッドフォンに合わせたチューニングになっているので、人によっては低域がふくよかすぎると感じてしまうかもしれませんね。

もっとガラッと自分好みの音に変えてもいいですし、これでミキシングやマスタリングをするわけではないので、何をするのも自由です。

ライブ会場で聞こえるような音にしたいのなら、アリーナやホール系のリバーブをたっぷり使ってもいいですし、もっとテープやカセットで聴いているようなビンテージ感を出したいなら、CasetteWiresなどを入れるのも面白いかもしれません。

まとめ

他にも色々試してみたいプラグインがあるので、このプラグインチェーンはどんどん進化していくと思います。

自分好みの音をつくるわけなので、音楽を聴くのが楽しくなるのはもちろん、音楽制作をする時にも楽しみながら作れるようになるというメリットがあります。

普段から「正しい」音の鳴りを気にしすぎて、音作りやミキシングばかりに集中してしまう人には特におすすめ。

自分好みの音で楽しみながら制作し、ミキシング段階になったらプラグインチェーンをOFFにして、正確な音でミキシング・マスタリングをすると良いでしょう。

世の中にはいろんな音場再現ソフトがありますが、自分専用のアンプを作っているようでとても面白いですね。

普段のヘッドフォンでの音楽体験に満足できていない人は、ぜひこの方法を試してみてください。

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