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【実験】電圧を200Vにするだけで音質は向上するのか?

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最近、電圧と音に関する実験をしてみました。

よく、

「海外は電源電圧が、220Vとか240Vだから音が良い」

という話を聞くことがありますが、果たしてこれは本当なのでしょうか?

そこで、なんとか家のスピーカーやオーディオインターフェースに200Vを供給できないかを考えてみました。

電気工事士を呼んで、家の電圧を200Vにする人もいますが、うちは古い建物なので200Vを敷くには少し大掛かりな工事が必要になってきます。

ところが世の中には、自宅でも手軽に電圧を上げられる「昇圧トランス」なるものが販売されていますので、これを使ってどこまで音質が良くなるのか試してみることにしました。

この記事で、その実験過程や結果を書いていきます。

オーディオ用ではなく工業用のトランスを試してみる

この実験に使ったのは、日章工業から販売されている「SK-1100EX」というアップ/ダウントランスです。

SK-1100EX – 日章工業株式会社

これは単純に海外用の電化製品を日本で使ったり、日本の電化製品を海外で使ったりするためのシンプルなアップダウントランスですね。

値段も1万円程度なので、これで音質がグッと向上するなら儲けものです。

ちなみに、200Vよりも240Vの方がメリットが音質向上が見込めると聞いたので、今回は240Vで実験しています。

自宅のスピーカーとオーディオインターフェースに240Vを突っ込んでみた結果

自宅のスピーカーのアンプ(Amphion Amp700)とオーディオインターフェース(Antelope Orion Studio 2017)は240Vまで対応していたので、それぞれを240Vで駆動させてみました。

必ず自分の持っている機器が240Vに対応しているか確認する必要がありますが、最近のオーディオ機器ならユニバーサル電源で100V~240Vに対応していることが多いかと思います。

さっそく実験してみたのですが・・・

「低音の押し出しや輪郭は増したが、中高域の解像度は下がった」

という結果になりました。

低域はパワフルでパンチが増し、よく見えるようになったので、低音にフォーカスする必要のあるダンスミュージックやヒップホップの制作にはとても有利になると感じました。

一方で、低域以外の部分は奥に引っ込んだというか、全体的にぼやけた印象になってしまいました…

まさか、こんなにプラス面とマイナス面が両立する結果になるとは思っていませんでしたね。

低域は最高なのですが、中高域がここまで奥に引っ込んでいると、音楽を聴いていても楽しくないし、ミキシングもかなり難しくなるでしょう。

工業用トランスをオーディオ用として使用すべきか?

今回の実験結果をまとめると、

「とにかく200Vにすれば音質が向上するというわけではない」

「むしろ昇圧トランスによって、音が悪くなる可能性がある」

という感じになります。

もちろんアップトランスの品質、自宅の電源環境、機材環境などに左右されますので、僕の実験環境ではこのような結論になったということですが、

今回のように単純にトランスで200Vまで上げるだけでは、音質向上は見込めないと思った方が良いでしょう。

ただ、低域はかなりリッチになるので、やはり低域の処理に関していえば、ヨーロッパ諸国のベッドルームプロデューサー達は恵まれた環境にあることが予想されます。

詳しい電源や電気の話は分かりませんが、ここからさらに処理を加えることで低域のリッチネスと中高域の解像度の高さを両立できるようになるのかもしれません。

昇圧トランスを使う際に注意すべきこと

アップトランスを使っても音は劇的に良くならなかったので、ここで「トランスを購入しよう」となる人はいないと思いますが、参考程度に注意点をひとつだけ。

今回の実験では240Vを供給したと言いましたが、使用したトランスは「100V-220V」のアップダウントランスです。

なぜかというと、自宅の電源は100Vではなく105Vほどで電気が来ていたから。

これはテスターを使用することで、簡単に測定することができます。

試しに240Vのトランスも使ってみたのですが、実験前にテスターで電圧を測ってみると、なんと250V以上の電気が流れていました。

一般的なユニバーサル電源が100V~240Vなことを考えると、これはちょっと危険かもしれません…

大切な機材を壊さないためにも、電気的な部分をいじる時には必ず電圧を測定することをおすすめします。

最後に

調べてみると、200Vのメリットは「バランス転送」という仕組みにあるようですね。

XLRケーブルのバランス転送と同じように、電源にも位相反転によってノイズをキャンセルする仕組みがあるみたいです。

なので、配電盤まで200Vで来ている家庭であれば、ノイズが最小限に抑えられたクリーンな電気を使えることになります。

そして、それをPRO CABLEさんのダウントランスなどで100Vに変換して使うというのが、よくいろんな方が採用している方式だと思いますが、ただ、今回の実験で分かったのは、安価なトランスを使って200Vにするだけでも低域のパワー感は増すということ。

配電盤まで200Vが来ていて、かつ200Vに対応しているオーディオ機器を持っているなら、そのまま「200Vの電気orアイソレーショントランスなどで整電した200Vの電気」を使った方が、もしかしてオーディオ的にはメリットがあるんじゃないか?と感じました。

そういえば先日、峰電さんのノイズフィルター「Filter Plus」を購入してみたのですが、実際に使ってみると、音の輪郭はくっきりするけど、使いどころによっては低音の迫力が欠けてしまうかなと感じる時もあったりして・・・

やはりこういった電気が絡む機材は、実際に自分の環境で試してみないとわからないものだなと改めて感じましたね。

電源部分はまだまだ勉強が必要なので、これから実験を重ねつつ良い音を追求していきたいと思います。

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この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?