今日は、Soundtoysの中でも最も人気のあるプラグインの一つ、「Decapitator」をご紹介していきましょう。
Decapitatorは、5つのビンテージアナログ機材の回路を再現したサチュレーションプラグインです。
アナログ機材では音が真空管やトランジスタなどを通ることで、デジタルではなかなか表現できない独特なサウンドになります。
シンセやエフェクターがソフト主流になった現代でもアナログ機材が使われているのは、このアナログでしか出せない音を求めてのことなんですね。
サチュレーションプラグインというのはいろんなメーカーからリリースされていますが、その中でもかなり評価が高く数多くの著名アーティストが愛用しています。
音がのっぺりしている、デジタルっぽすぎる、キレイすぎるなどと悩みのがある方にはぜひ手にとってもらいたいプラグインです。
それでは早速、見ていきましょう。
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Soundtoys 「Decapitator」の特徴と使い方を解説!!

Decapitatorはとてもシンプルでパラメーターも少ないため、おそらく使い方の説明はほとんど不要だと思いますが・・・
一応、パラメーターの意味を確認しておきましょう。
- DRIVE – サチュレーションの量を決める
- PUNISH – 20dBアップで超過激なサチュレーションがかかる
- TONE – 音の明るさを調整する
- MIX – 原音とエフェクト音のバランスを決める
- STYLE – 5つのスタイルからサチュレーションタイプを選ぶ
そして、基本的な使い方はこうです。
- 「STYLE」を選ぶ
- 「DRIVE」で欲しい量のサチュレーションが手に入るまでツッコむ。
DRIVEは上げ過ぎると、かなり音割れするので気をつけましょう。
音の変化が激しすぎるという場合は、「MIX」を使ってパラレル処理を行います。
これはドラムなんかに有効なんですが、原音に過激なサチュレーションのかかった音を若干加えることで、もとのサウンドのダイナミクスを保ちつつ肉厚な音に仕上げることができます。(パラレルサチュレーション)
その他、Decapitatorの詳しい使い方が知りたい方は、Soundtoysの公式マニュアルにも目を通しておきましょう。
次にDecapitatorを扱う上でもっとも重要な、サチュレーションスタイルごとの特徴を見ていきます。
Soundtoys 「Decapitator」のサチュレーションスタイル特徴一覧

Decapitatorは全部で5つのサチュレーションスタイルを選ぶことができますが、すべてビンテージの実機がモデルになっています。
以下のように、アルファベットはそれぞれ機材の頭文字をとったものなんですね。
- A – Ampex 250
- E – Chandler/EMI TG Channel
- N – Neve 1057
- T – Thermionic Culture® Culture Vulture(Triode)
- P – Thermionic Culture Culture Vulture(Pentode)
ちなみにこのほとんどはUADプラグインとしてもリリースされていますが、UADだと一つのプラグインで3万円ほどするので、これら全てが一台で完結するDecapitatorはかなりお得ですね。
それでは、それぞれのスタイルごとの特徴を見ていきましょう。
A – Ampex 350
「Ampex 350」は、1950年代に活躍したテープレコーダーです。
この5つの中では、最もスムースでクリアなサチュレーションスタイルです。
これで、サウンドにテープ独特の歪みを与えましょう。
E – Chandler/EMI TG Channel
「ChandlerのTGチャンネル・ストリップ」は、アビーロードのスタジオ機材として有名ですね。
ビートルズが横断歩道を渡っている写真が、アビーロードスタジオの目の前で撮られていることからも分かるように、アビーロードはビートルズサウンドを支えた伝説的スタジオです。
肉厚なローエンドと、きらびやかなハイエンドのサウンドが特徴的です。
N – Neve 1057
UADからリリースされているもので「Neve 1073」という超人気プラグインがありますが、「Neve 1057」はそれより前の初期モデルです。
ずしりと重く鋭い低域に加え、中域にフォーカスしたサウンドが特徴です。
T – Thermionic Culture® Culture Vulture(Triode)
残りの「T」と「P」は、「Thermionic Culture Culture Vulture」という真空管ディストーションを再現したものですが、モードによって音が違うことからDecapitatorでも二つのスタイルに分かれています。
ドラムやボーカル、パーカッションなどに適しており、ハーモニックディストーションを与えることで音に温かみとパンチを加えます。
P – Thermionic Culture Culture Vulture(Pentode)
こちらのスタイルは、「T」モードよりも過激なハーモニックディストーションを与えることができます。
かなり癖のあるディストーションで、ギターなどに適しています。
ここまでが、5つのサチュレーションスタイルの解説です。
右に行くほど、より過激な音になる印象ですね。
特に最後の二つ(TとP)は、ディストーションを与えるための機材であることからサウンドを積極的に変化させたいときに使うべきスタイルだということが分かります。
「A」スタイルが、クセが少なく非常に扱いやすいというのが個人的な感想です。
それぞれのスタイルの特徴を理解し、サウンドに応じて使い分けてみてください。
Soundtoys 「Decapitator」を愛用している著名アーティストは?

Decapitatorを愛用しているというアーティストは、ネットで調べるだけでもかなり多いです。
今回は、代表的な4人のアーティストをご紹介しましょう。
Olafur Arnalds
クラシック界とダンスミュージック界で活躍する異色のアーティスト「Olafur Arnalds」は、ドラムの色付けにDecapitatorを使っているようですね。
“I might have a drum beat and send it out to an external bus as well with a filter and distortion and just layer that on top of the drum beat to give it a little bit more character and life. I like the Sound Toys Decapitator for distortion.”
Kendric Lamar
ここでは「Kendric Lamar」のAll The Starsという曲に関するインタビューで、Decapitatorが登場しています。
“The ‘Dot VS LD’ aux indeed has a lot of stuff on it! I did most of the processing on that bus. On the inserts there are the SSL E-Channel, Waves RComp, Waves Q10 EQ, Waves DeEsser, UAD LA2A, UAD Pultec EQP1A, SoundToys Decapitator and Pro?Q2.
Inside Track: Kendrick Lamar | Black Panther ‘All The Stars’
Alessandro Cortini
「Alessandro Cortini」は動画の3:57あたりで、すべての音にDecapitatorを挿していると言っていますね。
Decapitatorのサチュレーションをとても気に入っている様子です。
まとめ

Decapitatorはシンプルなビンテージ機材のサチュレーションを加えるプラグインですが、プロのアーティストやエンジニアでも使用している人が多く、とても信頼のおけるプラグインです。
「どうしても音に存在感が出ない」と悩んでいる方は、ぜひ一度使ってみてください。