Soundtoys 「Crystallizer」の特徴と使い方を解説!! 愛用している著名アーティストは?

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今日は、Soundtoysの「Crystallizer」を紹介していきます。

Crystallizer – Soundtoys

Soundtoysの中ではあまり目立たない存在かもしれませんが、原音からは想像できないような音を生み出すことのできる一風変わったプラグインです。

「Crystallizer」という名前を聞いてもどんなプラグインなのか想像がつかないかもしれませんが、一言でいうと「リバース・エコー・プロセッサー」です。

このプラグインは基本的に、音のある特定の部分を取り出して逆再生させたものを、エコー音として再生するというマニアックな機能を備えています。

実際に聞いてみるとイメージしやすいと思うので、こちらの1分間の動画を見てみてください。

20minくらいから、ギターにかかっているエコー音が逆再生されているのが分かるでしょうか。

このような不思議なエフェクトのかかった音を手軽に作れるのが、「Crystallizer」です。

それでは、早速このプラグインの特徴や具体的な使い方を見ていきましょう。

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Soundtoys 「Crystallizer」の特徴は?どんな名機を再現しているのか?

Crystallizerは、名機Eventide H3000の「Crystal Echoes」というプリセットを元に作られています。

Eventide H3000 Harmonizerは、80~90年代に一世を風靡した伝説的エフェクターです。

もともとSoundtoysは、このEventide H3000というエフェクターの開発者が独立して作った会社だということを知れば納得のいく話ですよね。

昔このトリップ感溢れるエフェクトサウンドは、多くのアーティストによって愛され使われていたといいます。

「Splice」や「Recycle」などといった独特なパラメーターを備えているのに加え、細かい設定まで追い込みたい方は「Tweak」ボタンで裏設定を呼び出すことで、さらに変態的なオリジナルサウンドを生み出すことができるようになるのです。

例えば左下の「PITCH OFS」はPITCH OFFSETのことで、原音よりピッチの低い音をLチャンネルから, 高い音をRチャンネルから出すことで奇妙なステレオディチューンエフェクトを生成することができます。

ここまでいろんな音が作れてしまうと、慣れるまで苦労しそうですね。

しかしCrystallizerには細かくフォルダ分けされた豊富なプリセットが存在しているので、初めてでも簡単に音作りを始めることができますよ。

ギターやシンセ以外に「ドラム」というフォルダがありますが、実はドラムにCrystallizerをかけることでスペシャルなドラムサウンドを作ることもできます。

想像力次第で本当にいろいろな使い方ができるのが、Crystallizerの素晴らしいところですね。

Soundtoys「Crystallizer」の使い方を解説

Crystallizerには、英語のマニュアルしかありません。

Soundtoys Crystallizer – マニュアル

慣れてしまえばシンプルな構造なのですが、Crystallizerならではのパラメーターがあるので、初めはとっつきにくいかもしれませんね。

まずは、基本的な4つのパラメーターの効果を確認していきましょう。

  • PITCH – エコー音の音程を決める
  • SPLICE – リバースエコーの範囲を選択する
  • DELAY – ディレイの長さを決める
  • RECYCLE – フィードバックの長さを決める

一般的に、この中で馴染みがあるのは「DELAY」でしょう。

これは通常のディレイプラグインにあるパラメーターと同じ効果を持っていて、ディレイの種類を「FORWARD」モードにしていれば通常のディレイとして使うことができます。(PITCHとSPLICEの間にある小さなスイッチ「REVERSE」に切り替えればリバースエコーモードになります)

「RECYCLE」は通常のディレイでいうところの、フィードバックですね。

ただし「PITCH」で調整した値に合わせ、フィードバックが長くなるにつれて音程も変化していきます。

「SPICE」はリバースエコーモードで使用する際に、どこを切り取って音源をリバースするかという範囲を選択するためのパラメーターです。

基本的にはこの4つのパラメーターを操作して音を作ることになりますが、右端にある「TWEAK」ボタンを押すことで細かい設定画面が出現します。

ここの設定に関しては、音の変化が聴き取りづらいので初めは気にする必要はないかもしれません。

慣れてきて細かい設定まで追い込みたくなったら、触ってみるのが良いでしょう。

「TWEAK」で、以下のような設定まで追い込めるようになります。

  • PITCH OFFSET – ディレイ音のLchの音程を下げてRchの音程を上げる
  • SPLICE OFFSET – 左右のSPLICEタイムの長さを個別に変化させる
  • DELAY OFFSET – 左右のディレイタイムの長さを個別に変化させる

全て「OFFSET」という名前がついていて、これは左右の音にそれぞれ個別のエフェクトを与えることでステレオイメージを変化させるためのパラメーターです。

PICTH OFFSETなんかを強くかければ、Lチャンネルの音は音程が下がり続けてRチャンネルの音は音程が上がり続けるという、なんとも奇妙な音を作ることもできますよ。

文字ではなかなか理解しにくいプラグインだと思うので、丁寧に1時間かけてCrystallizerを解説しているこの動画をみて理解を深めてみましょう。

使い方のバリエーションは本当に無限大です。

Soundtoysの「Crystallizer」を愛用しているアーティストは?

Crystallizerは、さまざまなジャンルのアーティストに愛用されていますが、その一部をご紹介しましょう。

Alessandro Cortini

Alessandro Cortiniは、バンド「ナイン・インチ・ネイルズ」のキーボーディストとして最も知られています。

インタビュー:ALESSANDRO CORTINI

その活動領域はバンドにとどまらず、現在では個人でのライブ活動も精力的に行なっているようですね。

What instruments were you used to layering? A Jomox XBase 09 for the more standard sounding analog drums, NI’s massive for some of the drones, a lot of UAD plugins for mixing, SoundToys Decapitator, Crystallizer, and a healthy dose of Eventide H8000FW.

Crystallizerに加えて、Soundtoysの主力製品である「Decapitator」も使っているようですが、こちらもかなり愛用者が多く人気のディストーションプラグインです。

Steve Aoki

お次は、EDMの人気DJであるSteve Aoki。

フェスで観客に向かってケーキ投げをしているDJといえば、なんとなく分かるのではないでしょうか?笑

意外かもしれませんが曲作りにも精を出しているようで、彼のスタジオは宇宙船の一室のようになっています。

以下のインタビューから、彼のスタジオを見ることができますよ。

Exclusive: In the studio with Steve Aoki

I have a good amount of Waves plugins, like the CLA Vocal and the JJP Vocals. I think that most people use those. These are all basically one vocal engine that includes compression, EQ Boost, Delays etc. Soundtoys is another plugin that I use, Echo Boys for delays, Crystallizer, which has some cool stuff with pitch shifting and reverse echo.

彼も、Crystallizerのピッチシフトやリバースエコーを気に入って使っているようです。

Hans Zimmer

Hans Zimmerは映画音楽界でもっとも有名な音楽家の一人で、「パイレーツオブカリビアン」や「バックドラフト」のテーマ, 「ラストサムライ」のサントラなど数々の名作映画音楽を生み出し続けています。

サウンドトラックの魔術師:‘天才’ハンス・ジマーの比類なきキャリア

キーボードやギターなどいろんな楽器を演奏しますが、昔はキーボーディストとしても活動していて、実はあの名曲「ラジオスターの悲劇」のPVにも出演していたようですね。

Crystallizerを使用したと言っているのは、Hans Zimmerと一緒に映画「ブレードランナー2049」の音楽を制作したBenjamin Wallfischなのですが、彼が制作秘話の中でCrystallizerを使用したことを語っています。

Blade Runner 2049: How Hans Zimmer and Benjamin Wallfisch followed up the most influential sci-fi score of all time

“The CS-80 was part of a coterie of synths. They also used the u-he “wireless” modular plugin Zebra, as well as the company’s Diva softsynth, which was designed by Urs Heckmann based on Zimmer’s favorite Minimoog; Wallfisch was able to bring out a DSI Prophet-12 he hadn’t yet had the opportunity to use; a SoundToys Crystallizer granular synth altered compositions and then pieces were put through tape delays and covered in reverb before being processed again with the Crystallizer. “One of the things we talked about was the idea of ‘more human than human,’” Wallfisch says. “When you’re creating, you play a chord, and then all these machines take care of this extraordinary, strange, replicant-style advancement of something acoustic.””

Prophet-12にCrystallizerを二度通すことで、特別な音を作り出したことを語っていますね。

Soundtoys 「Crystalizer」の特徴と使い方を解説!! 愛用している著名アーティストは? | まとめ

いかがでしたでしょう。

「Crystallizer」はギターにかけるととても心地よい音になりますが、シンセやドラムにかけても素晴らしい音を生み出すことができます。

変わった音が欲しい、ただのリバーブやエコーに飽きてしまったという方は、ぜひこの奇妙なプラグイン「Crystallizer」を試してみてください。

Crystallizer – Soundtoys

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