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「u-he Diva」があればアナログシンセはもう不要かもしれない

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今日はDTMの大定番ソフトシンセである、u-he「Diva」をご紹介します。

これは5つのアナログシンセの名機を再現した「バーチャルアナログシンセサイザー」で、多くのプロアーティストにも愛用されている名ソフトシンセなのですが…

いまさら「Diva」の紹介かよ・・・

そう感じたあなたは、なかなかのシンセオタクですね。

実はこのソフトシンセは2016年から国内で販売されているので、「その間に良いものがたくさん出てきてるんじゃないの?」と思った人も多いはず。

もっと最新のシンセを紹介しろー!

こんな声が聞こえてくるのも無理はありません。

ただこのタイミングであらためて紹介するのは、発売から数年たった今でもこれほど「高音質」「多機能」「コスパ抜群」なソフトシンセがほとんど出てきていないからなんです。

「Diva」のアナログシンセの再現性は、発売当初からかなり話題になっていましたよね。

これは「Oberheim OB8」という有名なアナログシンセと「u-he Diva」の音を比べたブラインド(目隠し)テストなんですが、そのクオリティの高さゆえ正解がどっちが分からないという人が続出しました。

僕も自信満々で間違えてしまったんですが、あなたは正解がどちらか分かりましたか?

答えはこちらです。

このシンセの愛用者には、2020年に久々のアルバムをリリースした「Disclosure」や映画音楽の巨匠「Hans Zimmer」、「Madeon」や「W&W」といったEDM系のアーティストなどもいて、かなり幅広い層のプロデューサーたちに使用されていることが分かります。

僕も作りたい音があれば、とりあえずDivaを立ち上げてみるというくらい汎用性の高い便利なソフトシンセなので、この機会にぜひDivaの魅力を知っていって下さい。

「u-he Diva」があればハードシンセはいらない?

Divaは数々の名ハードシンセを再現した「バーチャルアナログシンセサイザー」なんですが、これがあればぶっちゃけほとんどの人はアナログシンセを買う必要がないんじゃないかと思っています。

EDMの制作であればソフトシンセを使うのが主流だと思いますが、ポップスやハウス系の制作をしているのであれば「アナログシンセの質感が欲しいな〜」と思っている人もたくさんいることでしょう。

なぜアナログシンセの音にこだわる人が多くいるのかというと、最近のEDMなどで多用される「Serum」や「Nexus」では出せないような、柔らかくて温かみのある音が出せるからなんです。

実際にアナログ独特のサウンドを楽曲に使いたいと思っていても、アナログシンセを買おうとすると数万円〜数十万円もするため「実機を買うのにはちょっと気が引けるな…」と思ってしまう人も結構いるんですよね。

でもそんな人がDivaを手にすると・・・

「いや、もう実機のアナログシンセいらんやん?」

となってしまうくらいの破壊力が、Divaにはあります。

アナログの音が欲しいけどなかなか手が出ないなと感じている人にこそ、このDivaを一度使ってみてもらいたいですね。

「u-he Diva」が再現する5つのアナログシンセ

では「Diva」最大の魅力である、アナログシンセのモデリングについて詳しく見ていきましょう。

Divaの魅力は、主に以下の2つです。

  1. 有名アナログシンセのサウンドが、とにかくリアルに再現されている
  2. 各シンセのパーツを組み合わせることで、オリジナルのシンセが作れる

再現されているアナログシンセは有名なものばかりで、最近では各メーカーがリイシュー版のハードウェアとして販売しているものも多いですね。

さらに「Diva」を使えば、MinimoogのオシレーターにMS-20のフィルターをかけるといったような、ハードウェアでは絶対にできないようなことが可能になるので、シンセマニアにとって夢のようなソフトシンセとも言えます。

これから順に、どのような名シンセが再現されているのか見ていくことにしましょう。

① Moog Minimoog Model D

u-he Diva Minimoog

「Minimoog Model D」といえば中古でも50万円ほどするにも関わらず、「Behringer」がたった3万円でハードシンセとして現代にらせたことでも有名ですね。

僕もこのBehringer版「Model D」を購入しましたが、音質はたしかに素晴らしいです。

ただ、オリジナルを忠実に再現しているため単音しか出ない上にプリセットも保存できないということで、初心者が買うはじめの一台としては決して優しくないシンセだなと感じました。

一方、DivaであればMinimoogのオシレーターやフィルターを忠実に再現しているため、ハードと同じような音作りができるのに加えてプリセットの保存も可能。さらにポリフォニックで複数音を同時に鳴らすこともできるので、使い勝手でいうとDivaの圧勝ですね。

② Roland Jupiter-6, Jupiter-8

このパネルでは、Roland Jupiterシリーズの「オシレーター」「フィルター」が丁寧に再現されています。

「Roland」や「Arturia」も同じように、Jupiterを再現したソフトシンセを販売しているのですが、それぞれの音の違いはこちらの動画で確認することができます。

正直どれもクオリティは高いので、明らかな違いというのは感じられないかもしれません。

ただ、RolandとArturiaのソフトシンセは「Jupiterのみ」を再現したソフトシンセなのに対し、「Diva」はJupiter以外にもアナログモデリングシンセが4つ入っているという部分は大きなメリットになるでしょう。

③ Roland Alpha Juno, Juno-60

こちらでは、Junoシリーズの「オシレーター」と「フィルター」が再現されています。

Junoはシンプルで使い勝手がよく音作りもしやすいので、かなり重宝しています。

Junoをソフトシンセとして再現しているのは、有名どころだと「TAL-U-No-LX」「Roland JUNO-60」などがありますが、Junoのみを再現したお買い得なソフトシンセが欲しいということであれば「TAL-U-No-LX」もおすすめです。

④ Korg MS-20

このパネルでは「MS-20」の「オシレーター」と「フィルター」が再現されています。

MS-20はかなり特徴的なシンセで、オシレーターが2基しかないものの「リングモジュレーター」が付いていたり、フィルター部分は「ハイパス」と「ローパス」が付いていてその両方にレゾナンスを加えることができたりと、他のシンセではなかなか再現できないような独特な音を作ることができます

u-he以外にも「Korg」がMS-20をソフトシンセとして再現していますが、ぶっちゃけ本家のわりには使い勝手があまり良くないので、MS-20を再現したソフトシンセが欲しいのならDivaを選ぶ方が良いでしょう。

⑤ Roland JP-8000

最後にこちらのパネルは「JP-8000」という、Rolandの名シンセのオシレーター部分のみを再現したパネルです。

ちなみにフィルター部分は「UHBIE」といって、「Oberheim SEM」というシンセからインスピレーションを受けています。

なのでこのパネルでは、実質2つのアナログシンセのモデリングによって再現されていると言えますね。

どちらも歴史的なハードシンセです。

「u-he Diva」はプリセットが充実している

Divaには、はじめから多くのプリセットが内蔵されているので、初心者であっても音作りに挫折することはありません

自分で音を作りたいという人はイチから作っても良いですし、理想の音に近いプリセットから設定を詰めていくという方法もおすすめです

またDiva用の有料プリセットもいくつか販売されているので、欲しい音が見つからないという人は、そういった特定のジャンルに特化したプリセットを購入するのも良いと思います。

例えばメロディックなテクノが作りたい人なら、こんなプリセットがおすすめ。

DIVISION – u-he Diva Presets

かなり「今っぽいサウンド」がたくさん入っていますよね。

トランスだったらこのあたりでしょうか。

AZS Transitions DIVA Bundle – Loopmasters

シンセポップが好きな人は、こういった80年代風のシンセサウンドもいいかもしれません。

The Midnight – u-he Diva Soundbank

他にもアンビエントならこちらのプリセットもおすすめ。

と、あげればキリがないのでこのへんで・・・

このようにジャンルごとにいろんなプリセットパックが販売されているので、気になった人はDivaと一緒にこういった製品を使ってみると、より早く効率的に音作りをすることができますよ

※ちなみにこの記事の冒頭にあった「Oberheim OB8」との聴き比べテストの結果は、「B」がハードシンセでした。

「A」は、「Classic OB」というSwanaudioが販売しているプリセットです。

興味がある方はこちらから購入できます。

「u-he Diva」の唯一のデメリットはCPU負荷?

Divaは最強のアナログモデリングシンセだと言われつつも少し敬遠されがちなのは、高音質ゆえにCPU負荷が高いことが一因としてあるのかもしれません。

こればかりは「デモ版を試してみて下さい」としか言えないのですが、CPU負荷はリリース当初に比べればアップデートによってかなり減ってきているのも事実です。

さらに意外と知られていないのですが、CPU負荷が高いことはu-he側も認識しているので、実は「マルチコアモード」というCPU負荷を抑えることのできる機能もあるのです。

u-heは現在もDivaのアップデートを続けていて、バグの修正やマルチコアモードでのパフォーマンスも日々改善され続けています。

パソコンの性能も毎年向上しているので、よっぽどスペックの低いものじゃない限りは大丈夫だと思いますが、どうしてもパソコンのスペック的に心配だという人は必ずデモ版を試してみて、問題がなければ購入するようにしましょう

u-he Diva – 公式ページ

「u-he Diva」を買ったほうがいい人、買わないほうがいい人

ここまでDivaのメリットもデメリットも見てきましたが、「結局Divaはどんな人におすすめなのか?」ということをはっきりさせておきましょう。

こんな人は「u-he Diva」を購入すべし!

まず、Divaを買ったほうがいいのはこんな人です。

  • 信頼できる音質のアナログモデリングシンセを探している
  • 自分で積極的に音作りをしてみたい
  • 初心者でも扱いやすいシンセが欲しい
  • 一台でいろんな音が出せるシンセを探している
  • ハードシンセが欲しいけど高額で手が出ない

Divaはアナログモデリングシンセなので、完全にアナログの質感を求めているという人向けの製品です。

音楽でいうと「Disclosure」「Todd Terje」「Madeon」「FKJ」といったディープハウス系や「Solomon」「Adriatique」「Tales Of Us」などのメロディックテクノ系が好きな人には結構ハマるシンセだと思います。

さらにDivaは実際のハードシンセをモデルにしているので、音作りがしやすくシンセの基本的なパラメーターが理解できるため、ここで学んだ音作りの知識は他のシンセでも活かすことができますよ。

将来的にハードシンセを購入したいけど、まずはソフトシンセでどんな音が出せるのか確かめてみたいという人にもおすすめですね。

こんな人は「u-he Diva」を買ってはいけない!

逆に、Divaを買ってはいけないのはこんな人です。

  • ・ダブステップやトラップ, EDMなどの激しいサウンドが欲しい
  • ・攻撃的なサウンドを求めている
  • ・みんなが使っている人気のシンセが欲しい

基本的にEDM系はあまり作れないと思っておいた方がいいでしょう。

EDMでもジャンルによっては相性の良いものもありますが、攻撃的なパキパキしたサウンドはあまり得意ではありません。

さらに世界中で愛用者がこれほど多いにも関わらず、日本ではあまり人気のあるソフトシンセではないので、「とにかくみんなが使っているシンセが欲しいー!」という人は他のものを探したほうが良いかもしれませんね。

「u-he Diva」があればアナログシンセはもう不要かもしれない | まとめ

「Diva」は日本で人気がないようですが、海外サイトでは常に「ベストシンセ○選」などのランキングの常連で、評価もかなり高いソフトシンセです。

アナログらしさを追求したソフトシンセなら「Arturia V Collection」や「Synthmaster」などもありますが、コスパや汎用性が一番高いのは間違いなく「Diva」ですね。

「Arturia」はDivaがカバーしていないビンテージシンセもたくさん再現しているので、もっといろんなアナログシンセを触ってみたいという人におすすめ。

「Synthmaster」は音作りがしにくく少し扱いづらいですがプリセットが豊富なので、プリセットから作曲をしたいという人におすすめのシンセです。

そう考えると、Divaはあまり似たようなシンセがなく競合もいないソフトシンセなので、アナログのリアルさを重視するならまずDivaを選べば間違いないでしょう。

初心者はもちろん、ハードシンセを多用する上級者にもおすすめのシンセですよ。

Diva – Plugin Boutique

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この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?