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【裏話】海外のDJはオートシンク(SYNCボタン)を使っているのか。3年間DJを隣で見続けたら分かったこと

東京でおよそ3年間、クラブエンジニアとして働いていました。

毎週末にアメリカやヨーロッパのDJを迎えるクラブで、僕はエンジニアとしてそのDJの隣に一晩中ついていました

なのでDJがパーティー中にどんな風に機材を使っているのか何をしているのかがよくわかります。

「MP3vsWAV」論争のように昔からずっと論争を巻き起こし続けている、この「オートシンク」論争に、今日は決着をつけましょう。

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オートシンク(SYNCボタン)とは

「オートシンク(SYNCボタン)」という機能をよく知らないDJの方は、たくさんいます。

これは機材や技術に詳しくないというよりは、昔からレコードなどでミックスしていたのでオートシンクを使う必要がないという方です。

クラブに行けばCDJと呼ばれる、CDやUSBなどを再生する機器が必ずありますよね。

CDJはLANケーブルで繋がっていて、どれか一台にUSBを挿すと曲情報はすべてのCDJで共有されます

Rekordboxと呼ばれるPioneerDJのソフトウェアを使って事前に曲情報を解析しておくと各トラックのBPMが解析されるので、このオートシンク機能を使えばDJはテンポを合わせる必要がなくなるのです。

翁
なんと便利な機能なんじゃ。
娘
わたしみたいな素人でも簡単にDJができるのね。

どのくらいのDJがオートシンクを使っているのか

これは現場での肌感覚ですが、オートシンクを使っているDJは全体の約1割にも満たない程度です

ほとんどの人がオートシンク機能を使っていませんね。

 

EDMのDJなんかだと全く違う結果になるかもしれませんが、これはハウスやテクノに限定した結果だということをお伝えしておきます。

ではなぜ多くのDJがこんなに便利な機能を使っていないのか、

その理由に迫っていきましょう。

 

オートシンクを使わない理由

クラブで働き始めた当初、多くのDJがオートシンク機能を使わず自分でテンポを合わせているのを見て不思議に思いました

「なぜ機械が自動でやってくれるのにわざわざ時間をかけて、時には失敗してまで自分の耳でテンポを合わせているんだ」と。

 

しかし長く働いていろんなDJと話すうちに、オートシンク(SYNCボタン)を使わない理由は主に5つあるという事がわかりました

1. 昔から自分でテンポを合わせてDJすることに慣れているから

2. 機械の解析は正確でないから

3. レコードから取り込んだデータを使用しているから

4. テンポが一定でない、特殊な曲を多用するから

5. 人間の手で合わせることによるBPMの微妙なズレが心地よいから

ひとつづつご紹介しましょう。

昔から自分でテンポを合わせてDJすることに慣れているから

CDJなんて便利なものがなかった時代からDJをしている方は、当然レコードのミックスに慣れています

だからCDやUSBを使ってDJする時も、今まで通りのやりやすい方法でDJしているだけです。

機械の解析は正確でないから

Rekordboxは、正確にテンポや拍を読み取ってくれないことがあります。

オートシンクを使うことで逆にテンポが合わないまま同期されているということが稀にあるので、そんな時に自分でテンポを合わせる技術がなければミックスすることができません。

そういった技術的なトラブルが起こる可能性があるのなら、自分でテンポを合わせてミックスできる技術を身につける方がそういった事態にも対応しやすくなります

ただ、Rekordboxがちゃんとデータを読み取ってくれていないと事前に分かっていれば、ソフトウェア上で解析し直したり手動で拍の位置などを設定することもできます。

翁
オートシンクを使うなら、事前準備が大切じゃな。

しかし専業DJだと、月に数百曲ダウンロードする人もいるでしょう

わざわざ事前にその全ての曲がちゃんと解析できているかどうか確認するというのは大変な作業なので、それなら現場で聴いて自分の耳でテンポを合わせてしまおうという考え方もあります。

 

また生演奏が多い曲は人間の手で演奏していることによるグルーブが発生しているので、ある楽器が微妙に拍からズレているということがあります。

グルーブによるズレは機械による解析では対応できないので、その場合も自分の耳を頼りにミックスする方が好ましいでしょう

娘
グルーブ感は機械じゃ読み取れないもんね。

レコードから取り込んだデータを使用しているから

レコードプレイヤーというのは、必ずしもテンポが一定ではありません

なのでレコードから取り込んだ音源はソフトウェアでは正確なBPMが読み取れず、オートシンクを使ったところでテンポが合わないのです

レコードから取り込んだ音源を使用するならオートシンクは使わない方がよいでしょう。

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テンポが一定ではない、特殊な曲を多用するから

まれに曲の途中でテンポが変わる曲があります。

ビートが少ない、または変則的な曲もあります。

こういったトリッキーな曲には、オートシンクは対応できないことがあります

なのでそういった曲を多用するDJなら、自分でテンポを合わせてミックスする技術を身につける方がよいでしょう。

人間の手で合わせることによるBPMの微妙なズレが心地よいから

これはレコードにおける、BPMのゆらぎのようなものでしょうか。

微妙にズレていることが、人間らしさを表現しているという考えのDJの方もいます。

完璧にふたつの曲が同期したミックスは、機械的でつまらないという意見です。

 

確かにDJの緊張感がミックスのズレに現れてしまうことはあります

その緊張感がリアルに伝わるのが、人間の手によるミックスの魅力の一部でもあるという考えは分からなくもありませんね。

 

オートシンクを使う理由は単にDJが下手だからではない

一般的にオートシンクを使うDJは、バカにされる傾向があります。

自分の耳でミックスできないやつは、DJではないと言わんばかりです。

確かにオートシンク機能を使う人は初心者に多いですが、世界を股に掛けるトップDJでもオートシンクを使っています

それは単にミックスが出来ないという理由ではないでしょう。

オートシンクを利用して、よりクリエイティブなことをしたいから

こちらは著名DJの「Richie Hawtin」です。

大の日本酒好きであることも知られており、イビサでは「ENTER.SAKE」というパーティーを開催したり、日本の酒蔵を巡ってオリジナルの日本酒を作ったりと日本酒への愛が感じられます。

たまに来日しては、プレイしていますね。

 

彼はPCを使いますが、PC上でオートシンクを使用しています

PCで最大4曲ものトラックを同時再生し、別の機材でリアルタイムに音を重ねていくというライブ形式のDJをしています。

彼はAllen&Heathというメーカーと共同で「Model 1」というミキサーまで作ってしまうほどの機材オタクでもありますが、彼ほど多種多様のソフトや機材を使わないまでも、CDJのオートシンク機能を使って2曲以上を同時に再生しながら他の機材を操るというDJはたくさんいます

オートシンクによってテンポを合わせる時間が省かれた分、他のクリエイティブな作業に時間をかけることができるのです

翁
誰でもDJできるようになったことで、よりクリエイティブなことが求められる時代になったのじゃな。
娘
おじいちゃんの口からクリエイティブなんて言葉が…

DJはオートシンクを使うべきか

そもそもオートシンクが使えるようになったのはCDJ-900nxsという2013年に発売されたモデルからですが、それから5年以上たった2020年現在でもCDJ-900nxs以前のモデルを導入しているクラブやバーは数多くあります

小さなDJバーなどは、2機のCDJをリンクさせることすら出来ないモデルが入っているという場合もあります。

娘
まだオートシンクに対応していない場所もたくさんあるのね。

DJ初心者が、最新機器が導入されたクラブでいきなりガンガンDJできるというのは考えにくいので、まずはどんな機器にも対応できるよう自分の耳でテンポを合わせられるようになることが大切です

もしDJ歴もそこそこあって、現場には必ず最新機器が導入されているという方ならオートシンクを使わない理由はありません

どんどん使っていきましょう。

 

ただし先ほど「オートシンクボタンを使わない理由」でも述べたように、オートシンクを使わない方がよいDJの方もいらっしゃることでしょう。

自分のスタイルにオートシンクは向いているかどうか、これを一度考えてみて普段のプレイに活かせるかを決めましょう。