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毎日Spotifyで新しいアルバムをリリースし続ける日本人アーティスト

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

Issey
作曲家、音響エンジニア
23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?

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アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。

日本人アーティスト、青山ミチルさんをご存知でしょうか。

先日、イギリスの音楽雑誌「MusicTech」とイギリスの新聞「ガーディアン」で彼のことが特集されていたのですが、

この男は、毎日Spotifyで新しいアルバムをリリースしている

という見出しに目を疑いました。

この男は毎日Spotifyで新しいアルバムをリリースしている。
「歯を磨くように」:青山ミチルが毎日アルバムを書き、レコーディングし、リリースする方法

「新しい曲」の間違いだろうと思い、彼のSpotifyアカウントを確認すると、信じられない数のアルバムがリリースされていました。

さらに驚くべきことに、彼はSpotifyやSoundCloudなどから月に300,000円以上の収益を得ています。

なぜ彼は、これほど多くの曲をリリースできるのでしょうか?

そして、なぜこんなにも稼げるようになったのでしょうか?

ガーディアンのインタビューや彼のnoteの記事を参考に、その秘密を探ってみることにします。

毎日アルバムをリリースできる秘密

青山さんが毎日アルバムをリリースできる理由は、彼の音楽制作方法にあります。

彼のアルバムは、アンビエントという特殊なジャンルで構成されており、曲の展開がほとんどありません。

特に彼の曲はドローン、つまり持続音のみで構成されるスタイルが多いです。これらの曲は、音程の変化がほとんどないため、構成を考える必要がなく、ただ心地良い音を作ることが曲づくりの中心となります。

次に、アートワークについてですが、これも彼自身が制作していると思われます。

日本を連想させる風景や部屋の写真を背景に、タイトルが中心に配置されたシンプルなデザインです。このシンプルさが、彼が毎日アートワークを素早く制作できる理由なのでしょう。

音楽制作の手法についても、彼は一貫して大量の曲をリリースするための方法を確立しています。

記事によれば、ギターやProphet-10アナログシンセを、独自のエフェクターチェーンに通してアンビエントを量産しているようです。

彼の楽曲を聴いてみても、音程の変化がほぼないので、気持ちのいい音(持続音)ができれば、それで曲が完成なのでしょう。

これにより、彼は毎日新しい楽曲を大量にリリースできるようになっています。

ストリーミングで月に数十万円を稼ぐ方法

青山さんの音楽は、品質より量に重点を置いています。

僕が主観的にみても、楽曲のクオリティがとても高いとは言えないですし、本人もnoteの記事で質よりも量が大切だということをおっしゃっているので、これについては異論はないでしょう。

「質より、圧倒的な量」|デジタル音楽生活Michiru

品質が高いとは言い難いものの、大量のリリースによってその欠点を補っています。

これはおそらくSpotifyを重視した戦略で、Spotifyというのはプレイリストに取り上げられることで、リスナー数が一気に増えることがあります。

彼は、質ではなく、量を重視することで、プレイリストに入る確率を他のアーティストよりも高めているのです。

以前、ニュースレターで紹介したように、ストリーミングだけで月に数百万円を稼ぐアーティストもいるので、この方法で、毎日アルバムをリリースして月に300,000円という収益は、決して多いとは言えません。

How 6 Independent Musicians Make a Living Today

しかし、適切な方法でリリースを重ねることで、どのアーティストも月に数十万円を稼ぐことが可能であることを示してくれていると言えるでしょう。

成功のための戦略

ストリーミングで稼ぐためには、まずは多くの曲をリリースすることが重要です。

作品の細かいクオリティにこだわるよりも、とにかく圧倒的なアウトプットを意識することが、現在のストリーミング時代のリリース方法です。

そして正しいプロモーション方法も重要です。

Spotifyで月に300,000円を目指す場合、プレイリストに乗るために多くのリリースをすること、未発表の新曲をSpotify for Artistでピッチしてプレイリストに乗りやすくすること、SubmitHubなどを利用してプレイリストに自分の曲を申請することなどが重要です。

今回の青山さんの例は、大量のリリースをするためには、自分なりの方法論を見つけることが重要だと教えてくれます。

毎回新しい手法で音楽を作るのではなく、自分がどのような曲を作ろうとしているのか、どのような音を使う必要があるのか、どのような構成にすべきなのか、アートワークはどのような形を使って作るのかを理解し、毎日、もしくは毎週リリースできるような仕組みづくりをすることが、大量リリースの鍵となります。

まとめ

彼の戦略は、音楽の芸術性よりも「Spotifyで稼ぐ」ということに気持ちがいいほど振り切った、見事な戦略だと思います。

Spotifyなら過去のリリースを好きなタイミングで削除することができます。

なので、まずは青山さんのような方法でリスナーや収益を増やし、その後自分のアーティストページを整えていく、ベストアルバムなどの形で自分の音楽性が表現できるアルバムだけを残す、という方法が、現代の最も優れたアプローチなのかもしれませんね。

音楽で収益を立てたい方にとっては、とても参考になる内容だったと思います。

Spotifyで収益をあげたい方は、「毎日アルバムをリリース」とまでは言わないまでも、頻繁にリリースをできるような仕組み作りをこれから考えてみてはいかがでしょうか。

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アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。

この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?