「週刊 スタジオ翁」のニュースレター登録はこちら

Schwabe Digital「Gold Clip」| あの名機を再現したクリッパープラグイン

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

Schwabe Digitalという新興メーカーから、あの有名なADコンバーターの「クリッピング機能」を再現するプラグインが登場しました。

Gold Clip – Schwave Digital

こちらはADコンバーターの中でも、100万円を超える超高級機Lavry(ラベリー)の「Lavry Savitr」「Lavry MK3」のクリッパー部分を再現したプラグインで、著名エンジニアであるJesse Ray Ernsterも、発売前からインスタライブでGold Clipについて語っていたり、ホームページにポジティブなコメントをしているのを見て、とても気になっていました。

Schwabe DigitalのInstagramより

まだ発売前なのですが、気になって仕方がなかったので、Schwabe Digitalの「Ryan Schwabe」さんに連絡させていただいたところ、快く製品レビューの許可をもらったので、記事にさせていただきます。

さてクリッパーとは、信号を意図的にクリップさせて音に迫力を出したり、音圧を稼いだりするためのプラグインですが、「クリッパーって何?」という方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

参考: 音圧アップの秘密兵器「Clipper」のすすめ – スタジオ翁

音圧とパンチを両立させられる便利なプラグインで、最近ではiZotope「Ozoneシリーズ」にも標準でクリッパーが搭載されるなど、かなり一般的になってきたように思います。

Lavry以外にも、DangerousやHEDDなどのADコンバーターには、信号をクリッピングさせる機能装備されているのですが、さすがにアナログ機材もほとんど持っていないのに、クリッピングのためだけに数十万のADコンバーターを買うのはためらってしまいます。

Acusticaからも「Ash」というADコンバーターのエミュレーターのようなものが販売されているのですが、かなり大胆に音の印象を変えてしまうので、マスタリングステージでは色付けの少ない「StandardClip」を頻繁に使っていました。

そのへんのプラグインとの比較もお伝えしていきますが、まずは創業者についてさくっと紹介しておきます。

目次

創業者について

創業者は、グラミーノミネートの経歴もある「Ryan Schwabe」さん。

こちらのページで、彼の手がけた作品を確認できます。

Ryan Schwabe

ミキシング&マスタリングエンジニアであり、ドレクセル大学音楽産業プログラムのレコーディングアート&音楽制作の元教授、レコーディングアカデミー・フィラデルフィア支部の元副会長、プロデューサー&エンジニアの翼の共同議長でもある。現在は、AESフィラデルフィア支部の会計責任者であり、ミキシングとマスタリングのポストプロダクション・オーディオ会社であるXcoustic Soundのオーナーでもあります。

https://www.schwabedigital.com/about

プラグインにいろんなこだわりが見られるのも、彼がミキシング・マスタリングエンジニアとして活躍しているからなのでしょう。

Gold Clipは、単なるクリッパーにとどまらず、コンプレッサーのような特殊なダイナミクス調整機能や、クリッピング時に顕著になる高域の荒々しさを軽減する機能などもついています。

Gold Clipの特徴

まず、Gold Clipがどんなプラグインなのかは、こちらの動画を見ると理解しやすいです。

クリッピングさせることによって、荒々しさや歪み感が強調されていますね。

この歪みを聞いてわかる通り、ジャンルによってはこの歪みは全く必要ないので、合うトラックと合わないトラックはかなり分かれるでしょう。

最近のヒップホップでは、大胆にクリッパーのような歪みが使われているトラックも多く、僕の大好きなアーティスト「Ralph」のこの曲には、サチュレーターというよりは、クリッパーで歪ませたような図太い音が頻繁に入っています。

あー、久々にRalphさんのライブ聴きたい・・・

さてさて、Gold Clipの特徴をザッとあげてみましょう。

  • リニアフェイズEQによって、コンバーターの周波数特性を再現する「BOX TONE」
  • 2種類のLavryコンバーターを再現する「CLIPPER」セクション
  • サンプル単位で音を解析し、トランジェントを保ちながら圧縮するコンプレッサー「GOLD」
  • クリッパーの使用によって生じる高域の荒々しさを軽減する「ALCHEMY」

他にも、インプットとアウトプットをリンクさせて聴覚上の音量を自動で揃えてくれる機能や、DRY/WETの機能などもついていて、とても扱いやすいのも特徴の1つです。

使い方のコツ

Gold Clipを使うには、マニュアルの読み込みが必須です。

特に「GOLD」や「ALCHEMY」は、初めて見ると何のパラメーターなのかよくわからないと思いますので。

まず、僕がよく使う設定をご紹介します。

  • BOX TONE → Modern or off
  • CLIPPER → Modern
  • GOLD → Modern

全部モダン、もしくはBOX TONEをオフにします。

BOX TONEは、高域がかなり和らぐので、基本的にはオフでいいと思いますが、ピーキーな音が多い楽曲だと良い感じで丸みが出るようになるかもしれません。

CLIPPERには、「Modern」「Classic」「Hard」の3種類があって、「ソフトニー ⇆ ハードニー」となっていて、要は「ニーの調整」をするセクションです。

Modern(ソフトニー)にするほど、早めにクリッピングが始まるので、音のピークだけをクリップさせたいなら、Hardを選びましょう。

次にGOLDですが、これはアタックやリリースがあるような一般的なコンプレッサーとは違い、サンプル単位で解析を行なってトランジェントを損なわずに音を圧縮するという、ちょっと特殊なコンプ?のような機能です。

ちなみに「Unity」をオンにすると、自動でレベルマッチングしてくれるので、純粋な音の変化のみを与えることができます。

こちらは「Modern」「Classic」の2種類がありますが、Classicはかなり攻撃的なサウンドになるので、まずはModernからスタートし、必要に応じてClassicの大胆な歪みを取り入れてみるのが良いでしょう。

強くかけると、音が丸くなるというか、ひとまとまりになりすぎて分離感がないように聞こえるので、僕はあまり過度な設定では使っていません。

最後にALCHEMYですが、こちらはパラメーターをひねると、高域のシェルビングEQがかかるので、クリッピングによって音が荒々しくなりすぎた時の調整用として使いましょう。

結局どのクリッパーを選べばいいのか?

マスターに使えるクリッパーはいくつかあって、それぞれに特徴があります。

  • Acustica Audio「Fire The Clip」→ シンプルユースでマスタリングにも使いやすい
  • Acustica Audio「Ash」→ 倍音のりまくり!音の変化が大きい、いくつかの回路をエミュレート
  • SIR Audio Tools「Standard Clip」→ 音の変化を最小限に抑えたクリッパー、オーバーサンプリングがGood
  • IK Multimedia「Classic Clipper」→ 低域が持ち上がる

この中で比較すると、Schwabe DigitalのGold Clipは、適度な倍音成分でアナログ味を増しつつも、モダンプラグインならではのパラメーターの豊富さで、細かい調整までできる万能クリッパーといったイメージです。

1つもクリッパープラグインを持っていない人におすすめなのは、「Gold Clip」か、Acusitica Audioの「Fire The Clip」ですね。

Gold Clipは便利で良いツールですが、普段からいろんなプラグインを使わない人からすると、パラメーターの多いインターフェースに少し混乱してしまうかもしれません。

プラグインとしての出来はとても良いので、最近は僕もStandard Clipから乗り換えて、ガンガン使ってみています。

iZotope「Ozone」を持っている人は、とりあえずそちらで済ませるのもアリですが、そういったサブ機能としてついているクリッパーに満足できなくなった人は、このような特化型のクリッパープラグインを試してみてはいかがでしょうか。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ニュースレターはじめました。

音楽制作の話、世界の音楽ニュース、DTMに役立つコンテンツなどを毎週金曜日にニュースレターで配信しています。

無料なので、気になった方はメールアドレス登録してもらえると嬉しいです。

https://studiookina.substack.com/

この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?

目次