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最新のAIツール、sonible「smart:EQ 4」を導入すべきか?

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sonibleの新しいAI搭載EQプラグイン、smart:EQ 4を試してみました。

smart:EQ 4 – sonible

smart:EQ 4に進化したことで、グループ機能を使ったマルチ処理、リファレンストラックのインポート機能、レイヤー機能によるマスキングの解消、といった新機能が搭載されています。

公式による新機能は、以下のとおりです。

  • 搭載された「smart:filter」テクノロジーで、単一トラック/バス/ミックス全体のスペクトル・バランスと、本製品がインサートされた複数のトラック間でインテリジェントなクロスチャンネル処理が可能
  • ドラッグ&ドロップによるスペクトル・ミキシング。最大10トラックまでの「被り」を解消するアンマスキング・レイヤーを作成するグループビューを搭載
  • 同じグループ内のトラックのイコライジング設定を、1つのインスタンス内で調整可能
  • ジャンル別に楽器/スピーチ/ミックス・バスなどの幅広いプロファイルを用意
  • リファレンス・トラックからカスタム・プロファイルを作成してイコライジング
  • スレッショルド/レシオ/アタック/リリース・コントロールによる、フィルターのダイナミック・コントロール
  • smart:filterの処理モードを選択可能(トラック/グループ/トラック&グループ)
  • オート・ゲイン、M/S処理、スマート・ステートなどの機能
  • smart:filterの演算時間の短縮

AI関連で言うと、普段のマスタリング作業だとiZotope Ozoneを愛用しているのですが、果たしてミキシングにおいてsmart:EQ 4はどのくらい実用的なツールなのでしょうか?

smart:EQ 4のメリット・デメリットと共に、ミキシングで実際に使ってみた率直な感想もお伝えしていきます。

目次

smart:EQ 4が使える3つの場面

最初に言っておくと、smart:EQ 4があればEQ作業がゼロになるわけではありません。

smart:EQ 4は、状況に応じて適切な使い方をすることで、初めて効果を発揮します。

まずは、僕が使ってみて感じた、smart:EQ 4が得意とする場面を3つご紹介します。

ミックスが難しい特定の楽器をミックスする

smart:EQ 4に備わっている「EQプロファイル」は、あらゆる楽器のミックスを容易にします。

例えば、普段ダンスミュージックをミックスしている人が、ギターやピアノなどの生楽器をミックスする場合、特定の楽器プロファイルを選ぶことで、ミックスし慣れていない楽器であっても、smart:EQ 4のAIが最適なイコライジングをしてくれます。

(自動で楽器を判別する機能はないので、楽器に合ったプロファイルを手動で選択する必要があります)

ちなみに、全ての楽器に対応するユニバーサルモードもありますが、楽器を指定する方が、より正確なEQ設定になります。

一瞬で奥行きを調整できる

これは、今回のアップデートの目玉機能の1つです。

Smart EQには、奥行きを調整するための機能が付いていて、楽器を「Front」「Middle」「Back」の3つの階層に配置することで、ミックスに簡単に奥行きを与えることができます。

例えば、しっかり聴かせたい楽器は「Front」に、パッドやコーラスなどの背後でうっすら聴かせたい楽器は「Middle」や「Back」に配置します。

楽器を配置すると、一瞬でEQ設定も切り替わり、ミックスに奥行きが出ます。

ミキシングで奥行きを出すには、通常、細かなEQ調整やコンプレッサーを使った設定が必要になるため、ドラッグアンドドロップだけで奥行きが設定できるのは画期的ですね。

各楽器のマスキングを解消する

各楽器の帯域の被り、いわゆるマスキングを解消するのがミキシングの醍醐味であり、もっとも難しい部分なのですが、smart:EQ 4を使えばこのマスキングを瞬時に解消できます。

グループ機能に搭載されているsmart:filterには、3つのモードがあるのですが、そのうちの「Group」モードを使えば、チャンネルに影響を与えずに他のグループとのマスキングを軽減できます。

さらに、「Track and Group」は各チャンネルのバランスを調整しながら、マスキング解除を同時に行います。

「いろんな楽器を入れたいけど、ミキシングがうまくいかない…」という人は、ミキシングが難しい楽器にこの機能を使うことで、簡単にマスキングを解消してミックスの分離をよくすることができます。

使ってみて感じたデメリット

楽器の自動判別はできない

smart:EQ 4では、楽器をプロファイルの中から自分で選ぶ必要があります。

大きなデメリットではないのですが、iZotopeのOzoneというマスタリングツールには、音楽ジャンルを自動で判別する機能が付いているので、同じように自動で楽器を判別してEQをかけてくれる機能があると嬉しいなと思いました。

これは、そのうち導入されそうな気がします。

微調整は自分で行う必要がある

smart:EQは第4世代になり、アルゴリズムは初期モデルから大幅に進化していると思いますが、それでもAIによるEQの精度は完璧ではありません。

最後は、自分の耳を使ってトラックに合わせた微調整をする必要があります。

これは、今販売されているAI作曲ツールやAIマスタリングツールも同じで、最後は人間が微調整をする必要があります。AIはあくまでミックスをサポートをしてくれるだけなので、「その処理が良いか、悪いか」を決めるのは、使っている人自身です。

AIツールがあると、自分で一からEQしていく過程を省略できるので、エンジニアリング的な技術は必要なくなっていきますが、これからの時代は、良し悪しを判断できるプロデューサー的なスキルがより重要になっていくのでしょうね。

グループビューで各楽器をソロにできない

先ほどメリットとして紹介した、各楽器のEQを1つの画面に表示させる機能はとても便利なのですが、その画面では各楽器をソロにして聴くことができません。

DAWで設定したネーミングは反映されるので、どのトラックかは大体見当がつきますが、「この楽器ってどんな音だっけ」と思った時、わざわざグループビューから離れてDAWの画面に戻るのはちょっと面倒。

ここは、次のバージョンで改善してほしいところですね。

smart:EQ 4があれば他のEQプラグインは必要ないのか?

はじめてのEQプラグインとしてsmart:EQ 4を購入する人は、他のEQプラグインを買う必要はほとんどないと言って良いでしょう。

これまで別のEQプラグインを使っていた人も、AI機能に魅力を感じたらsmart:EQ 4を導入しても良いですが、必ずしも乗り換える必要はないと思います。

僕も普段はFabfilterのEQを使っているため、smart:EQ 4にダイナミックEQやMSモードといった、Fabfilterと同じ機能が付いているにせよ、これまで使い慣れてきたFabfilterを使い続けると思います。(Fabfilterは多くのトップエンジニアに使用されている実績もあるので、音質面でも安心して使えます)

Pro-Q3 – Fabfilter

smart:EQ 4は僕の中で、簡単にミックスに奥行きを与えたり、普段ミックスし慣れていない楽器をミックスするのに使う「飛び道具」的な存在になると思います。

まとめ

AIを使ったプラグインは、まだまだ発展途上だと感じます。

マスタリング作業においては、iZotope Ozoneに本当にお世話になっていますが、こちらも人間の手による最終調整が必要です。

そして、AIプラグインはそれぞれに独特の処理のクセがあるので、そこを理解するのに最初は少し時間がかかるかもしれませんね。

smart:EQ 4も、音源を読み込ませて自動でEQしたら終わり、ではありません。

アーティストの「音に対するセンス」が問われます。

それでも、一からEQするよりは、AIがEQの土台を作ってくれる分、はるかに簡単にEQ処理ができます。

こういった特徴を理解していれば、AIプラグインはミキシングに役立つ強い味方になってくれるでしょう。

smart:EQ4 – Plugin Boutique

最後に、9つのユースケースを紹介している記事を見つけたのでご紹介しておきます。

smart:EQ 4を購入予定の方、またはこれから使う方はぜひ参考にしてみてください。

参考: 9 Use Cases for smart:EQ 4

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この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?

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