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「WHATCLASS」が切り開く新時代のオンライン学習  

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Issey
作曲家、音響エンジニア
23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?

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<著書>
AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?
作曲AIに関する書籍をAmazonで出版しました。
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音楽制作やDJスキルを学びたいと思ったとき、皆さんはどうしていますか?

YouTubeで検索したり、高額な専門学校に通ったり、あるいは独学で試行錯誤したり…。どれも一長一短があって、なかなか理想的な学習法が見つからないですよね。

そんな中、英国発のオンライン学習プラットフォーム「WHATCLASS」は、世界的に活躍するDJや音楽プロデューサーから直接学べるプラットフォームとして注目を集めつつあります。2025年に正式ローンチされたばかりですが、その前身は2016年にイギリスで始まったFutureDJsという教育事業から発展したものです。

WHATCLASS

WHATCLASSの面白いところは、「Choose to Learn(学ぶことを選ぼう)」というスローガンのもと、アーティストが教える側に立ち、ファンが学ぶという新しい関係性を作っているところ。これまでのオンラインプラットホームにはなかった新しい学習コンテンツや仕組みがいくつもあり、とても面白いなと思いました。

この記事では、これからさらに面白くなる可能性を秘めた、新時代のオンライン学習サービス「WHATCLASS」の魅力や特徴についてご紹介していきたいと思います。

サービスの特徴

WHATCLASSの提供コンテンツを見ていくと、いくつかユニークな特徴があります。

まず第一に、現代音楽(EDM、ヒップホップ、グライム等のエレクトロニックミュージック)に特化している点。従来の音楽教育プラットフォームのように様々なジャンルを扱うのではなく、現代的な音楽に焦点を当てているのは新鮮です。そして、講師陣はFraser T. Smith(グラミー受賞プロデューサー)やCarl Cox(伝説的DJ)、Skream(ダブステップ先駆者)などの超一流アーティストです。

次に、大きな特徴として、レッスン動画が短いことが挙げられます。90秒から最長でも12分程度という、スキマ時間に学べる長さです。「ちょっとした移動時間にサクッと学べる」というのは現代人の学習スタイルにマッチしていますよね。短い動画でサクッと学べるのはここ数年流行りのマイクロラーニングの流れを汲んでいて、いわば、音楽教育業界のTikTokといった感じのプラットフォームになっています。

そして個人的に一番興味深かったのが「Music Feedback」というサービスです。

自分で作った曲をプロのアーティストに送ると、アーティストが直接フィードバックをくれるのです。これは音楽制作者には夢のような機能ですよね。別途料金がかかりますが、「あの憧れのアーティストが自分の曲を聴いてくれる」というのは、これまでにはなかった新鮮なアプローチだなと思いました。

Screenshot

また、ABRSMという英国王立音楽検定委員会と提携して認定プログラムを提供している点も面白いです。「Learn to DJ」コースを修了すると公認の資格が取れるというのは、趣味から一歩進んでキャリアも見据えたい人には魅力的でしょう。

そして何より、月額約£11.99(ポンド)という比較的リーズナブルな価格設定と、50本ほどのクラスが無料で視聴できるという敷居の低さ。専門学校に通うと数十万〜数百万円かかるのはもちろん、通常のオンラインコースや買い切り型のコンテンツも数万円〜とそれなりの値段がかかるので、これはなかなかコスパが良いと思います。

どんなコンテンツがあるのか?

もちろん一般的な音楽制作コンテンツは数多くあるのですが、それだけではありません。

イビサのレジデントを務めるCarl Coxのようなアーティストが、DJとしてのキャリアについてアドバイスを送るコンテンツがあったり、著名DJが様々なプレイの手法や、ジャンル別のミキシング方法について解説する動画もあります。

さらには、フィールドレコーディングの技術や、プロデューサータグをつけることの重要性、サンプリングに関わる権利問題など、実に様々なトピックを扱ったコンテンツが存在しています。

以下に、いくつか講座の例を挙げてみました。

音楽制作

  • Create punchy snares with track delay (トラックディレイを使用して力強いスネアを作る)
  • Write House chords and melodies (ハウス系のコードとメロディを書く)
  • Enhancing drum loops (ドラムループを強化する)
  • Unique melodies (ユニークなメロディの作り方)
  • Recording your own percussion (自分でパーカッションを録音する)

DJ

  • Crate digging (レコード発掘)
  • Mixing Amapiano (アマピアーノのミキシング)
  • What is a Cut transition? (カットトランジションとは何か?)

キャリアアドバイス

  • Career tips (キャリアのコツ)
  • Releasing your music: Overcoming setbacks and embracing the benefits (音楽のリリース:挫折を乗り越え、メリットを享受する)

TIPS系

  • Introduction to field recording (フィールドレコーディング入門)
  • Sampling and sample ownership (サンプリングとサンプルの所有権)
  • The importance of producer tags (プロデューサータグの重要性)

音楽制作やミキシングなどを教えてくれるオンライン講座は他にもたくさんありますが、世界のトップDJが直接キャリアについてアドバイスをしてくれたり、プロデューサータブやサンプリングなど、音楽制作に関わるあらゆることに触れられているオンライン講座はあまり見かけないので、この辺がとても新鮮だなと感じました。

サービスとしてまだまだなところ

実際に登録してコンテンツを観てみましたが、コンテンツの種類が多岐に渡っているのはとても面白いと思いました。しかし、音楽制作における様々なニーズに対応するコンテンツがたくさんあるかと言われれば、一部の限定的な教育コンテンツしかなく、内容に少々偏りがあるのも事実です。

2025年に始まったばかりのサービスなので、この点は、これからたくさん動画が出てくることで徐々に解消され、幅広く音楽制作に関するコンテンツを取り扱うプラットフォームとして成長していくことでしょう。

現時点で既に数十本の動画がドロップされていますが、講師陣に著名プロデューサーやDJなどが多いため、業界とのコネクションもかなりあるのだと感じます。その点では、これから良質なコンテンツがいくつも出てくる

今すぐ登録すべきかと言われると微妙なところですが、1年後くらいには、音楽制作を志す多くの人におすすめできるようなプラットフォームに成長している可能性も大いにありますね。

まとめ

WHATCLASSは、従来の音楽教育の枠を超えた新しいアプローチで、音楽制作やDJスキルを学びたい人のハードルを大きく下げてくれるサービスだと思います。

特に「プロから直接学べる」「短時間で効率的に学べる」「双方向のフィードバックがある」といった特徴は、数多く、オンライン教育サービスがある中でもとても新鮮ですし、忙しい現代人にとって理想的な学習環境を提供しているように思います。

またWHATCLASSは、Spotifyが試験的に行なっている「Courses on Spotify」という学習サービスのパートナーでもあるので、Spotifyとの連携によって音楽リスニングと学習が一体化していく可能性も見えてきます。「この曲いいな」と思ったらすぐにその制作手法が学べる、みたいな世界が今後やって来るかもしれませんね。

みなさんも「Choose to Learn」の精神で、新しい音楽学習の形を体験してみてはいかがでしょうか?

今後の展開がとても楽しみな、オンライン学習プラットフォーム「WHATCLASS」のご紹介でした。

WHATCLASS

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アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。

この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?