MENU
「週刊 スタジオ翁」ニュースレターの登録はこちら

Arturia「Pigments 5」はSerumを超えるソフトシンセか?

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

Issey
作曲家、音響エンジニア
23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?

<ニュースレター>
週刊「スタジオ翁」ニュースレター
メールで毎週届く!音楽制作やAIに関する情報、世界の音楽ニュースをご紹介。

<著書>
AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?
作曲AIに関する書籍をAmazonで出版しました。
アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。

今日は、アナログモデリングシンセを数多くリリースしているArturia(アートリア)から2022年にリリースされた、「Pigments 5」というソフトシンセを紹介します。(年々、進化し続けているPigmentsですが、2024年1月にPigments 5にアップデートされました)

「ソフトシンセはもうお腹いっぱいだよ〜」という人もPigmentsの魅力を知れば、その考えが変わるかもしれません。

それくらい素晴らしい音色のシンセで、特に幻想的なパッドやリードサウンドを探している人にぜひ使ってもらいたいシンセです。

Pigments 5 – Arturia

Pigmentsは、ウェーブテーブルシンセとしてXfer「Serum」と比較されることがよくありますが、そのへんの違いも詳しく見ていきます。

それではさっそく、Pigmentsの特徴から見ていきましょう!

Arturia「Pigments」の特徴と導入のメリット

Arturia「Pigments 2」のメイン画面

こちらがPigmentsのメイン画面。

Pigmentsは「顔料」という意味ですが、その名のとおりカラフルでかわいらしいデザインですね。

直感的に音作りやルーティングができるよう、工夫されているのが分かります。

4つのシンセエンジンを搭載

上のメイン画面を見るとただの「ウェーブテーブルシンセ」に見えますが、実は、Pigmentsは4つのシンセエンジンを備えています。

  1. ウェーブテーブルシンセ
  2. バーチャル・アナログシンセ
  3. グラニュラーシンセ
  4. ハーモニックシンセ

ウェーブテーブルといえばEDMでもよく使われているように、激しく攻撃的なサウンドを得意としています。

先ほど紹介したXfer「Serum」というウェーブテーブルシンセは、主にEDMに特化したソフトシンセなのですが・・・

Pigmentsには「バーチャル・アナログシンセ」が加わることで、アナログっぽい暖かいサウンドも作れるというのが大きな魅力です。

サンプルを取り込んでグラニュラー合成することで、特殊な音作りができるのも魅力の1つ。

この4つのシンセエンジンが、1つのシンセにまとめて入っているというのは珍しく、かなり贅沢ぜいたくな作りになっていることが分かります。

プリセットは幻想的なものが多い

Pigmentsのプリセットを一通り使ってみましたが、かなりかたよりがある印象でした。

Pigmentsのプリセットは、「KEY」や「PAD」といった柔らかなサウンドが豊富で、このシンセを一言で表すなら「幻想的」という言葉がピッタリです。

もちろんEDM的なエレクトロな音も作れるのですが、プリセットにこういった柔らかい音が多いことから、Pigmentsがどのような方向性で作られているのかが分かります。

以下のデモ動画を観てください。

柔らかで、美しいプリセットが多いように感じませんか?

現在はPigments 5にバージョンアップしている

こういった音を作りたいなら、Pigmentsはとても強力な武器になってくれることでしょう

即戦力のプリセットが多いため、音作りが面倒だという人にもおすすめです。

ルーティングが直感的にできる

音作りのときに面倒なのが、ADSRやLFOを各パラメーターにかけたりする作業だと思います。

「どこをどうすれば音が変化するんだ???」という分かりにくいソフトシンセはたくさんありますが、Pigmentsはこのように視覚的に分かりやすいインターフェースを取り入れることで、音作りを直感的にできるよう工夫されていますね

Arturia「Pigments 2」のモジュレーション画面
初心者でも直感的に操作できるモジュレーション画面

Xfer「Serum」とも似ているのですが、アニメーショも豊富なので、音にどのような変化が加わっているのかを直感的に理解しやすいのも大きな特徴です。

初心者だけでなく、積極的に音作りをしたい中・上級者にも嬉しい機能でしょう。

Arturia「Pigments」- Plugin Boutique

Arturia「Pigments」とXfer「Serum」の違いとは?

Xfer Recordsから発売されている「Serum」は、Pigmentsと同じ「ウェーブテーブルシンセ」ですが・・・

Arturia「Pigments」とXfer「Serum」の大きな違いは、以下の通り。

  • Pigmentsは「アナログ寄り」、Serumは「EDM寄り」
  • Pigmentsは4つのシンセエンジンを搭載、Serumはウェーブテーブルシンセのみ
  • Pigmentsはシーケンサーやランダマイザーで多彩な音作りが可能
  • Serumは数々の名プロデューサーが使用している実績あり

Serumは数年前にかなり流行ったので、いろんなEDMプロデューサーが使用を公言しているとても信頼できるソフトシンセです。

あのDeadmau5も、Serumは初めてのソフトシンセにおすすめだと言っていますね。

Deadmau5」と、Serumの開発者「Steve Duda」

僕も過去記事でSerumを初心者に使ってみて欲しいと書いていますが、Pigmentsが発売されたことでその考えは変わりました。

参考: 初心者こそXfer「Serum」を使うべき3つの理由 – スタジオ翁

この記事ではインターフェースが直感的で使いやすいということから、Serumを初心者におすすめのシンセとして紹介していますが、実はPigmentsも同じくらい直感的で、ルーティングの流れがとても分かりやすい作りになっています

(直感的に操作できるという点では、Serumの方が若干有利かもしれませんが…)

機能もSerumより多いので、Pigmentsも間違いなく初心者におすすめできるシンセの1つです。

結局、わたしはPigmentsとSerumのどっちを選べば良いの?

自分の作りたい音に合わせて、どちらか選ぶと良いぞ。

先ほど紹介したように、Pigmentsはアナログライクな出音なので、柔らかで幻想的なサウンドを得意としています。 SerumはEDMに特化したシンセなので、EDM, エレクトロ, トランスなどを作りたい人におすすめです。

どちらも素晴らしいサウンドなので、このように自分がどんなジャンルの曲を作りたいのかで選ぶようにすると良いでしょう。

Arturia「Pigments」- Plugin Boutique

Arturia「Pigments」にデメリットはあるの?

正直なところ、これといって大きなデメリットは見当たりません。

操作性, 音作りのしやすさ, 音の良さなど、あらゆる面で他の名シンセに負けないくらい素晴らしいソフトシンセだと思います。

たまにネットでは「Pigmentsは重い」という意見も見かけますが、Pigments5から動作が改善されたので、使っていても特に重いと感じることはありません。

心配な人は、デモ版(Trial)をダウンロードして確かめてみると良いでしょう。

Arturia「Pigments」はこんな人におすすめ!

Pigmentsはズバリ、この曲の雰囲気が好きな人におすすめです。

これは「Christian Loffler」というアイスランドのプロデューサーの曲なのですが、メインメロディーにPigmentsが使われています

このことは、インタビューでも紹介されていますね。

I was experimenting with a new soft synth, Pigments, and found the bell sound you can hear playing within the main melody.

(新しいソフトシンセPigmentsを試していたら、ベルの音を見つけたんだ。これはメインメロディーで使っているよ。)

THE DIRECTOR’S CUT: CHRISTIAN LÖFFLER – LYS

まさに彼の楽曲は「Pigmentsっぽい」幻想的で美しいサウンドなので、これが好きならきっとあなたもPigmentsのサウンドを気に入るでしょう

Pigments 5にアップデートされて変わったこと

Pigments 5にアップデートされて大幅に変更された点はありませんが、いくつかの機能の追加によって、より使いやすく進化しています。

アップデート内容は公式ページに譲りますが、僕が惹かれたのは、

  1. CPU効率の改善
  2. 新しいジェネレーティブシーケンサー
  3. 外部オーディオの取り込み

この3つです。

まず、マルチコアプロセッシングにより、CPU効率が改善したので、Pigmentsを使っていて重いと感じることはなくなりました。(もともと、めちゃくちゃ重いわけではなかったので、僕は気になっていませんでしたが。)

次にシーケンサーが刷新され、ワンクリックでいろんなメロディーパターンを生成できるようになりました。このシーケンスはDAWのルーティングを設定することで、どんなソフトシンセやハードシンセにも使えるので、これまでシーケンサープラグインを持っていなかった人はぜひメインシーケンサーとして活用してみてください。

いろんなシーケンスをワンクリックで自動作成、編集も自由自在

最後に注目すべきは、外部オーディオをPigmentsにルーティングできる機能です。

Pigmentsには豊富なフィルターやエフェクターが搭載されているのですが、Pigmentsにルーティングすることで、このフィルターやエフェクターを、お気に入りのシンセと組み合わせられるようになりました。

外部オーディオのルーティング機能

Korg MS-20、Oberheim SEMなどの有名なフィルターを組み合わせたり、好きなシンセにPigments特有の幻想的なリバーブやディレイなどのエフェクトを組み合わせたりと、まるでモジュラーシンセのような自由なルーティングが可能になります。Pigmentsを買うと、シーケンサーとエフェクターも同時に手に入ると考えれば、かなりお買い得だと思います。

まとめ

PigmentsとSerumはどちらも同じくらい良いシンセなので、どっちを選ぶかはみなさんの好み次第です。

ちなみに僕は、上で紹介したChristian Lofflerが大好きで、幻想的なパッドやリードサウンドに目が無いので、迷いなくPigmentsをおすすめします。

海外掲示板のGearslutzでは「Pigmentsの方がよりクリエイティブなことができる」という意見もありますが、これはランダマイザーやシーケンサーが搭載されているのが大きな理由だと思います

なのでPigmentsは、プリセットも洗練されていますが、積極的に音作りがしたいという人にもかなりおすすめのシンセです。

以上、次世代のハイブリッドシンセ「Pigments」についてレビューでした。

Arturia「Pigments」- Plugin Boutique

<ニュースレター>
週刊「スタジオ翁」ニュースレター
メールで毎週届く!音楽制作やAIに関する情報、世界の音楽ニュースなどをご紹介。

<著書>
AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?
作曲AIに関する書籍をAmazonで出版しました。
アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。

この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?