Kii Sevenがついに日本上陸!Kii Threeとの違い、試聴の感想など

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Issey
作曲家、音響エンジニア
23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?

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もう3年近く、Kii Threeを使って仕事をしていますが、この春ついに話題の新作スピーカー、Kii Sevenが日本でも発売開始されたので、早速試聴に行ってきました!

Kii Three | マスタリングにも使える世界最小のラージモニタースピーカー – スタジオ翁

Kii Threeはサイズが大きいこともあって、日本ではあまり普及していなかったように思いますが、小型のKii Sevenが登場したことにより、Kiiシリーズはこれから広まっていくのでしょうか?

今回の記事では、

  • Kii Threeとの違い
  • 実際に試聴してみてどうだったか
  • 購入する価値があるのか

などについて詳しくお話ししていきます。

Kii Sevenに火がついたきっかけ

まず、Kii Threeがこれまであまり話題に上がってこなかったのに対し、Kii Sevenが注目されているのは、こちらの動画の影響があるそうですね。

この方、毎年NAMMに行かれているようで、2年前にも会場でお見かけしたことがありますが、他にも面白い音楽関係の動画をたくさん上げていらっしゃいます。よかったらご覧になってみてください。

ロサンゼルス音楽情報RA’Z CHANNEL

この動画では、一流エンジニアFab Dupontも「部屋の大きさやルームアコースティックに依存しない最高のスピーカーである」と語っていますが、確かにKiiは部屋の適当なところに置いても、なぜかバランスの良い良質な音で鳴ってくれるんですよね。

そんなKii Threeの小型版かつ、値段が半分の製品が出たとなれば、ワクワクしないわけがありません。

さっさと、本題に入りましょう。

見た目や大きさの違いについて

まず、大きさはかなり小さくなっていて、これなら日本の家庭にもフィットするサイズだと思いました。

ただ、サイズは小さくなったものの本体重量がかなりあり、本格的なスピーカースタンドを使わないと音が安定しないし、物理的にも少し危ないのではないかと感じました。

見た目はKii Threeとは少し異なり、前面や側面のユニット数は変わらないのですが、背面のユニットが完全になくなっています。

KiiシリーズはDSPによる特殊なキャンセリング機能により、「50Hz以下の音を左右後方に拡散させない」という特徴的なスピーカーです。そのため、後方の壁の反射がなく、Kii以外では鳴らせない位相の揃ったパンチのある低音を出すことが可能です。

背面のユニットがなくなったKii Sevenでもこのキャンセリング機能は健在で、見事な低音のコントロールによって部屋鳴りを最小限に抑え、ルームアコースティックが整っていない部屋でも、最高の鳴りをしてくれます。

これまでさまざまなスピーカーを見てきましたが、Kiiのような低音を出すスピーカーは、本当に他にはありませんね。

肝心の音はどうか?

さて、肝心の音についてですが、Kii Threeと聞き比べた感想は、圧倒的に低音の量感が違うということでした。

事前にスペックを見ていたので、Kii Threeより低音が弱いことはわかっていましたが、Kii Threeを聞いたときの「これならサブウーファーは必要ないな」と思わせてくれる圧倒的な低音とは違い、Kii Sevenは「低音をしっかり聞きたいならサブウーファーが必要かも…」と思ってしまうような、やや物足りない低音でした・・・

今回はかなり吸音されている部屋でリスニングしたので、家のように吸音が全くされていない場所で聞くと程よい低音に包まれる可能性はありますが、低音をウーファーなしでしっかりモニターしたいなら、まず間違いなくKii Threeを購入したほうが良いでしょう。それほど違いがあります。

ただ、最近はヘッドホンで制作をするアーティストも多くなってきていますし、低音が重要なヒップホップやK-POP、ダンスミュージックなどでなければ、むしろKii Sevenの低音は申し分ないので、十分検討に値するでしょう。

と、偉そうに言っていますが、僕の家のスピーカーはAmphionで、楽器の質感や繊細な息遣いなどは他のスピーカーとは比べものにならないほどきれいに聴こえるものの、低音が圧倒的に足りないというデメリットがあります。低音はヘッドホンで調整しているので問題ありませんが、僕と似たような環境にいる人なら、Kii Sevenを導入し、低音の質感を確認するという使い方もありかもしれません。

Amphion Two 18 | 圧倒的な解像度を誇るモニタースピーカー – スタジオ翁

Kii Sevenはどんな人におすすめ?

Kii Sevenは、Kii Threeと比べてかなり安く(安いと言っても約150万円ほどしますが)、価格に対するパフォーマンスはかなり優秀だと思います。

Kii Threeはとてつもなくパワフルな低音を出すのでおすすめですが、僕が初めてKii Threeを試聴しに行った頃は180万円ほどだったので、今の300万円という金額に見合う価値があるかと言われればなかなか難しいところではあります…

そういったことを考えると、Kii Sevenは以下のような方におすすめできます。

  • 今使っているモニタースピーカーでは低音がモニターしづらいので、もっと低音の量感があるスピーカーが欲しい
  • ジャンル的に低音がそれほど重要でない音楽なので、Kii Threeほどの低音は必要ない
  • ルームアコースティックをあまり整えていないので、適当に置いても、すべての帯域がバランス良く鳴ってくれるスピーカーが欲しい

逆に、Kii Threeがおすすめな人は、

  • 少々お金をかけても良いので、しっかりと低音のミキシング・マスタリングができるスピーカーが欲しい
  • 圧倒的な低音の量感が欲しい、他のモニタースピーカーの低音に満足できない
  • 部屋が大きいので、Kii Sevenだと低音が物足りない

といった感じです。

まとめ

「Spinorama」という測定マニアのサイトでKii Threeが最もバランスの取れたスピーカーとして紹介されているのは有名ですが、実際にKii Threeを使っていて、本当に適当に置いてもきれいに全体が鳴ってくれるので、さすがマニアックな測定サイトで1位を取るだけのことはあるなと常々感じています。

SPINorama

さすがに映画のミキシングや音楽のマスタリングのときはSonarworksなどで微調整をしていますが、それでも適当に置いたときのバランスの良さは、他のスピーカーと比べても圧倒的にナンバーワンだと思います。もちろん、この性質はKii Sevenにも受け継がれています。

Kii Threeは買えないけれどKii Sevenなら手が届くかも、と気になった方は、まず店頭に行って、その低音の質感をぜひ確かめてみることをおすすめします。

僕は低音が重要なダンスミュージックを作ったりミックスすることが多いので、少々辛口なレビューになりましたが、それでも一般的なスピーカーに比べれば圧倒的におすすめできるモデルであることは間違いありません。

気になった方はぜひ試聴に行ってみてください。

この記事が皆さんの参考になれば嬉しいです。

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この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

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