DTMをしていると「サンプリングレート」という言葉をよく耳にします。
44.1kHz, 96kHz, 192kHz…などと呼ばれるものじゃな。
DAWで新しいプロジェクトを作る時やオーディオを書き出す時にも、必ずこの「サンプリングレート」が関わってくるのですが・・・
サンプリングレートって難しそう…結局どれを選べばいいのー?
いろいろ選択肢がある中で、どのサンプリングレートを選べば「正解」なのでしょうか?
最初にサンプリングレートを選び間違えてしまうと、せっかく作った楽曲が台無しになってしまうこともあり得るので、今日はこのサンプリングレートについての基本的な知識を学んで、普段の音楽制作にぜひ役立てて下さい。
この記事を読めば、以下のことがわかります。
- DTMに必要なサンプリングレートについての知識
- どのサンプリングレートを選ぶべきか
- サンプリングレートによる音質の違いやメリット・デメリット
- サンプリングレートを確認する方法
「エイリアシング」や「ナイキスト周波数」などの難しい話は置いておいて、DTMをする上で必ず必要になる知識のみをまとめたので、「数字の話は面倒くさいな…」という人もぜひこの知識だけは覚えておきましょう!
それでは、まずサンプリングレートの基本からです。
サンプリングレートとは?
音は、このような波形で表されます。
DAWでオーディオファイルを拡大させていっても同じような波形を見ることができますが、まずこれを現実世界(アナログワールド)の音の波形としましょう。
僕たちはこれをパソコンなどに取り込んでスピーカーで聴いたり編集したりするので、音を一旦データとしてデジタルワールドに持ってこなければいけません。(DA Convert)
その際に必要になるのが「サンプリング(標本化)」と呼ばれる処理ですが、これは特に難しい話ではなく、1秒間に何万回と音の断面を切り取ってアナログデータをデジタル化するための作業です。
そしてこの「1秒間に何回サンプリングするのか?」ということを「サンプリングレート」という数字で表します。
サンプリングレートが1Hzなら、1秒間に1回サンプリングするという意味じゃな。
なので、CD音質である44.1kHz(44,100hz)なら、1秒間に44,100回もサンプリングしていることになりますね。
それでは次に、デジタルの世界で再現された音の波形を見てみましょう。
この点の部分はサンプリングされた部分で、この点は多ければ多いほど、より正確にもとの音を再現することができます。
上の図では点同士を直線で結んでいますが、この時点だと、まだわりと滑らかな曲線が保たれていますね。
では、もしこの点(サンプリングレート)が少なければ、波形はどうなってしまうのでしょう?
不気味なカタチになりましたね。笑
このようにサンプリングの回数が減ると、もとの滑らかな曲線がなくなり、カクカクの波形が出来上がることになります。
まあ、実際に再生される時はこんなにカクカクの信号がそのまま出てくるワケではなく、その後のコンピューターの処理で「この点の位置からすると、もとの波形はこんな感じだっただろうな」と、ある程度の曲線を再現することはできるのですが・・・
でも、この点が少なくなればなるほど、もとの正しい波形が再現しづらくなっていくことは簡単に想像できますよね?
つまり、サンプリングレートは「高ければ高いほど、原音の再現性が高い」ということが理解できるかと思います。
サンプリングレートによる音質の違いを聴いてみよう
では実際に、サンプリングレートが違うとどのように音質が変化するのかということを、この動画で確認してみましょう。
この動画では「8kHz, 16kHz, 32kHz, 48kHz」と、4段階に分かれたそれぞれの音質をチェックすることができます。
明らかな違いがありますよね?
8kHzだと、同じ曲とは思えないほど高音が削られており、全体的にくぐもった音でドラムのハイハットなんかは全く聴こえません。
サンプリングレートは高ければ高いほどいいのか?
先ほどの動画で分かったように、サンプリングレートは音質に大きく関わる部分です。
ここで「このままサンプリングレートを96kHzや192kHzにすれば、めちゃくちゃ良い音がするはず!」と考えてしまいがちですが、実は44.1kHz以降は音の変化がかなり分かりにくく「えっ、音質の変化なくね?」と、耳を澄まして聴かないと全く分からないくらい微妙な変化になっていきます。
では、どうして44.1kHz以降は、音の変化が分かりにくくなるのでしょう?
44.1kHzより上だと音質の変化が分かりにくい理由
まず、人間の聴こえる周波数帯域はおよそ「20Hz〜20kHz」と決まっています。
そしてオーディオの基礎として、サンプリングレートは「再現したい周波数帯域の2倍の周波数が必要になる」という法則があります。(詳しく知りたい人は「ナイキスト周波数」で調べてみて下さい)
簡単に説明すると、人間の可聴域である20kHzまで再生したいのなら、サンプリングレートは最低でも40kHzが必要だということ。
CD音質は44.1kHzなので、CDは人間の聴力の限界である20kHzをばっちりカバーできていることになります。
先ほどの動画だと、実はサンプリングレート8kHzの音源は4kHz以降で、サンプリングレート16kHzの音源は8kHz以降でズバッと高音が消えているのですが・・・
だから高域のハイハットの音なんかが最初は全然聴こえなかったんだね。
これくらいだと人間の可聴範囲内なので違いが分かりやすいのですが、CD音質ですでに人間の可聴域である20kHzを超えて再生されているので、再生可能周波数が48kHzになったり96kHzになったところで、それを再生できるほどのスピーカーやヘッドフォンを一般の人が持っていなかったり、そもそも20kHz以降の周波数を聴き取れなかったりする場合がほとんどです。
ただ、20kHz以上の成分も本当は人間に聴こえているというおもしろい研究結果もあったりするので、一概に20kHz以降を再現することに意味がないとは言えないのですが、よほどいい環境で聴かない限り、ほとんどの人は違いが分からないというのは間違いないでしょう。
サンプリングレートは44.1kHzあれば十分である3つの理由
ここまで、サンプリングレートが高くなるにつれて、その音質の違いは微々たるものになってしまうということが分かりましたね。
では、プロジェクトのサンプリングレートは、いったいどの値に設定すればいいのかというと・・・
ズバリ「44.1kHz」です!
なぜ、44.1kHzがおすすめのサンプリングレートなのかを、3つの理由と一緒にみていきましょう。
サンプリングレートが高ければCPU負荷も高くなる
これはサンプリングレートを高くする上で、一番のデメリットです。
プロジェクトのサンプリングレートを上げれば、それだけCPUの負荷も大きくなり、パソコンの動きが悪くなります。
なので、サンプリングレートが高ければ高いほど情報量が多くはなりますが、一般的なパソコンのスペックでは音質を求めすぎるのはあまり良い選択肢とは言えません。
結局、音楽業界の標準サンプリングレートは44.1kHz
最近ハイレゾ音源が徐々に出てきているとはいえ、まだまだ音楽業界のスタンダードはCD音質の44.1kHzです。
さらに最近の音楽業界ではサブスクモデルが一般的になってきていますが、SpotifyやAmazon Music, Apple Musicなどのサンプリングレートは、CD音質の44.1kHzにすら達していません。
96kHzや192kHzで制作したところで、結局サンプリングレートを下げて配信されるのであれば、制作段階で無理してサンプリングレートを上げる必要はないでしょう。
最低限44.1kHzあればマスタリングの依頼もできる
ほとんどのスタジオでは、マスタリングを依頼する時に「サンプリングレートは44.1kHz以上でお願いします」という指定があります。
なので、より高いサンプリングレートで制作しているならそちらの方がいいですが、最低でも44.1kHzあれば問題はないということになるでしょう。
ちなみに、マスタリングに必要なビットレートは「24bit以上」を推奨しているところがほとんどですね。
ここはCD音質である16bitよりも上なので、録音設定や書き出しの際は気をつけましょう。
サンプリングレートを確認する2つの方法
ここでは、サンプリングレートを確認するための2つの方法を説明します。
オーディオファイルの場合は右クリックで確認できる
オーディオファイルの場合は、ファイルの右クリックから、簡単にサンプリングレートを確認することができます。
・右クリック→情報を見る→詳細情報
CDなら44.1kHz、ハイレゾ音源なら96kHzや192kHzという数字が確認できるかと思います。
DAWの環境設定から確認する方法
プロジェクトのサンプリングレートの設定はDAWによって違いますが、たいていの場合、環境設定やプロジェクト設定の「オーディオ」というところから変更することができます。
ちなみに僕が使っている「Logic Pro」と「Ableton Live」を例に挙げると、こんな感じ。
- Logic Pro – ファイル→プロフェクト設定→オーディオ
- Ableton Live – 環境設定→オーディオ
たいてい「オーディオ」からの設定だと思うのですが、他のDAWを使っているという人はネットで調べて確認してみましょう。
まとめ
サンプリングレートとは、音の波をどのくらい細かく標本化(サンプリング)するのかという精度のことでした。
そして、サンプリングレートが高ければ音の再現性は上がるものの、CPU負荷や現在普及しているフォーマットを考えれば「44.1kHz」で十分である、ということが分かったかと思います。
普段はサンプリングレートなんか気にしていなかったという人も、これを期に普段の制作の際、ちょこっと意識してもらえると嬉しいです。