ディレイは空間を作り出すエフェクトとして、ギタリストには定番のツールですね。
ギターだけでなくボーカルやシンセなどいろんな楽器に使うことでも、空間を埋めたり音に広がりや立体感を出したりできる便利なツールです。
今日はそんなディレイについて、詳しく見ていきましょう。
この記事は、こんな人におすすめです。
- ディレイの基礎を知りたい
- ディレイの種類や使い方を知りたい
- ディレイを使ったテクニックを知りたい
この機会にディレイのことをもう一度しっかり理解したい!という人も、ぜひご覧になってみて下さい。
ディレイとは?
ディレイとは音を遅延させることによって、立体的な空間を表現するためのエフェクトです。
単純に機材による音の遅れや、スピーカー同士の音のズレをディレイという場合もありますが、今回はエフェクターとしての「ディレイ」について見ていきましょう。
ディレイの役割
シンプルなギターやピアノの音でも、ディレイを使うことによって音楽的な響きを与えることができます。
またミックスの隙間を埋めたり、ディレイで音を変化させることによってミックスをより魅力的なものにするというのがディレイの主な役割ですね。
ディレイ・エコー・リバーブの違い
ディレイ・エコー・リバーブの3つはとても似ているので、何が違うの?と疑問に思うかもしれません。
どれも空間を作り出すエフェクトなのですが・・・
- エコー → ディレイの一種でやまびこのような音
- リバーブ → めちゃくちゃ密度の濃いディレイ
このように考えましょう。
「エコー」はディレイの一種で、「やっほー」というやまびこのような、より自然に近いところで見られる現象のことを指します。
「リバーブ」は部屋やお風呂, 体育館など日常で聞くことができるので、イメージしやすいかと思います。
普段は意識しないかもしれませんが、お風呂などで大きな声を出すと、壁に跳ね返った細かいディレイ成分がまとまって耳に届くことでリバーブとして聞こえています。
ディレイの使い方
ここからは、ディレイの詳しい使い方について解説していきます。
まずは、どのディレイプラグインでも見られる基本的なパラメーターの意味を理解していきましょう。
ディレイのパラメーターの解説
今から紹介するパラメーターは自分で調整できると、より曲にマッチした自然なディレイサウンドを作ることができます。
とても簡単なパラメーターばかりなので、ぜひ覚えておきましょう。
Delay Time(ディレイタイム)
ディレイタイムが50msなら、50ミリ秒ごとに同じ音が聞こえます。
これはTime(秒数)かBeats(ビート)を指定することができ、ビートなら楽曲のテンポに応じて1/4, 1/8, 1/16など指定することができます。
Sync(同期)
ディレイタイムを、楽曲のBPMに同期させるための機能です。
Feedback(フィードバック)
エコーをどのくらい繰り返すかを指定できます。
フィードバックが多いと、より長いエコーになります。
DRY/WET(ドライ/ウェット)
原音とエフェクト音のバランスを調節することができます。
センド/リターンで使用する場合は、ここを100%WETにしておきましょう。
ディレイの設定方法
ここではSpliceの海外記事を参考に、ボーカルへのディレイの設定方法について紹介していきます。
実際の手順は、以下の通りです。
- Auxトラックにディレイを立ち上げ、1/4でBPMと同期させる
- ディレイがボーカルの隙間を埋めるよう、ゆっくりとディレイを加えていく
- ディレイはほとんど聞こえないくらいの音量を保つ
- ディレイ音の200Hz〜2kHzをフィルタリングして「ラジオ効果」を得る
ポイントは「ディレイをあまり目立たせずボーカルに馴染ませる」こと、「ディレイ音の低域と高域を削る」ことですね。
バーブの処理にも似ていますが、低域をカットすることでミックス全体の濁りをなくし、高域をカットすることでキツくなりがちな、サ行の歯擦音を目立たせないようにしています。
簡単に紹介しましたが、ソースや曲の雰囲気によっても適切なディレイの値は変わってくるのであくまで参考程度にどうぞ。
ディレイの5つのテクニック
ディレイにはおもしろい使い方がたくさんあります。
ここでは、ディレイを使った5つのテクニックを見ていきましょう。
スラップバックディレイ
スラップバックは、60〜180msという短めのディレイを使用することによって、コーラスのような広がりを与えるテクニックです。
ギターによく使用されますが、他の楽器やボーカルなどにも使うことができます。
リバーブを入れると飽和しすぎてしまうボーカルなどは、スラップバックディレイを挿すことでほどよい空間を与えることができますよ。
ピンポンディレイ
左右で別々のディレイタイムを設定したディレイを、ピンポンディレイと呼びます。
通常のディレイと比べて、より複雑な響きや左右の広がり与えることができます。
ハースエフェクト
これは、ハース効果という人間の耳の特性を利用したエフェクトのことです。
モノラル音源を左右にPANして、片側にショートディレイをかけることで音像を広げるというテクニックなのですが、こちらは専用のプラグインもあります。
詳しい方法が知りたいという人は、こちらの記事をご覧ください。
参考: ハース効果があなたのミックスを台無しにする – スタジオ翁
ダッキングディレイ
ダッキングディレイは、コンプレッサーのサイドチェーン機能を使って、エフェクト音を目立たせないようにするテクニックです。
例えば、センド/リターンを使ってボーカルにディレイをかけるとしましょう。
ディレイ音が目立ちすぎてボーカルが埋もれてしまっている場合、ディレイのチャンネルにコンプを挿して「ボーカルが再生されている時だけエフェクト音を下げる」という風にすれば、ディレイの音に埋もれないボーカルを作ることができます。
これはディレイチャンネルにコンプを挿して、ボーカルをトリガーにしたサイドチェーンをかけてあげれば、簡単に設定ができます。
モノラルディレイ
「ステレオ感が強すぎて、他の音と競合している」「リバーブを挿したいからディレイは控えめにかけたい」という時には、ディレイをモノラルでかけてみましょう。
モノディレイに対応したプラグインなら、左右の広がりをおさえたディレイをかけることができるので、音が広がりすぎて飽和してしまうのを防げます。
サビまではモノディレイを使用し、サビで一気にステレオディレイにして広がりと躍動感を出すという使い方もできますね。
おすすめのディレイプラグイン
どのDAWにもディレイプラグインは数種類入っていますが、クオリティが高く多機能なプラグインが欲しいなら、間違いなくSoundtoys「EchoBoy」がおすすめです。
これ1台でいろんな種類のディレイがかけられるのはもちろん、ビンテージディレイの質感などを再現したプリセットが30以上入っており、ディレイの質感まで細かく調整したいという人にぴったりのプラグインです。
こちらの記事で詳しく紹介しているので、気になった人はぜひ見てみて下さい。
参考: Soundtoys 「EchoBoy」の特徴と使い方を解説 – スタジオ翁
ディレイを理解する | まとめ
以上、ディレイの基礎について解説しました。
プロのミックスをしっかり聴いてみると、本当にいろんな種類のディレイが入っていて、それがミックスの隙間を埋めていたり、最後まで飽きさせない工夫がなされていることが分かります。
まずは自分の好きな曲に使われているディレイなどのエフェクトを注意深く聴いて、真似してみるのが良いでしょう。
この記事がみなさんの参考になれば嬉しいです。