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AudioThing「Wires」でソ連時代のローファイ感を再現しよう

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Issey
作曲家、音響エンジニア
23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?

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先月発売されたローファイプラグイン、AudioThings「Wires」を紹介します。

AudioThing「Wires」- Plugin Boutique

これは、旧ソ連時代の軍事用レコーダーがモデルとなっており、ドイツのミュージシャン/YouTuberである「Hainbach」とプラグインメーカー「AudioThings」のコラボ製品となっています。

Hainbachによる「Wires」の実演動画

かなり荒々しいローファイ感が特徴のプラグインで、今までのローファイプラグインとは一味違う感じがしますね!

さっそく、Wiresの詳細について見ていきましょう。

AudioThing「Wires」の魅力

Wiresの魅力はなんといっても、独特で荒々しいローファイサウンドです。

There is a special tone to the hair-thin wire and the vacuum tube output stage of this machine, unheard of anywhere else.

このマシンの細いワイヤーと真空管の出力ステージには、他では見られない特別なトーンがあります。

デモを聴いてすぐにわかりますが、Wiresを通すと音がかなり変化しますよね。

これは「磁気ワイヤーレコーダー」という「磁気テープ」が登場する以前に活躍していたレコーダーがモデルになっていて、一部の前衛的なミュージシャンに「魔法のローファイツール」として密かに使われていたそうです。

AudioThingがモデルにしたレコーダーのリールには、なんと当時の軍事作戦の記録が残されていたとのこと。

確かにこのプラグインに声を通してみると、戦時中の当時にタイプスリップしたような、独特なラジオボイスを再現することができます。

ピアノやギターに使えば、独特なザラッとした質感が得られるのはもちろん、単純なシンセの音色に使っても、驚くほど面白いサウンドに生まれ変わります。

曲中のアクセントして使えば、一気にリスナーの気を引くことができるでしょう。

AudioThing「Wires」の使い方

ここからはWiresの使い方について見ていきましょう。

Wiresは、大きく4つのセクションにわかれています。

  1. デバイス&ノイズセクション
  2. テープセクション
  3. エコーセクション
  4. マスターセクション

順に紹介していきます。

① デバイス&ノイズセクション

まず、左側にあるデバイス&ノイズセクションから。

  • MIC – マイクエミュレーション
  • SPEAKER – スピーカーエミュレーション
  • HISS – ヒスノイズ音量
  • MOTOR – モーターノイズ音量
  • ENVELOPE – 音が入った時だけノイズをONにする

マイクエミュレーションは実物ではなく、AudioThing「Speakers」から取りだしたものを使用しているそうです。

スピーカーエミュレーションは、実際モデルになったワイヤーレコーダーを再現しているとのこと。

「ENVELOPE」とは、音がなっている時だけHISSやMOTORのノイズを加え、そのチャンネルの音がなっていない時は、ノイズをオフにしておくという便利な機能です。

② テープセクション

真ん中のセクションでは、テープのゆがみ具合などを調整します。

  • WOW&FLUTTER – テープの回転ムラによって生じるピッチのズレを再現
  • DROPS – 再生時の音の抜け落ちを再現
  • CLICKS – クリックノイズ
  • TILT EQ – 左に回すとロー上げ、右に回すとハイ上げのEQ

ワウフラッターやクリックノイズなど、テープ系プラグインによくあるパラメーターが揃っていますね。

「TILT EQ」だけ説明しておくと、12時の状態でフラット、左に回すとEQがロー上がりハイ下がりに傾き、右に回すとロー下がりハイ上がりの状態になります。

③ エコーセクション

続いて、エコーセクション

  • TIME – エコータイム
  • FEEDBACK – エコーのフィードバック量
  • LEVEL – DRY/WETの調整 or エコーの音量
  • MIX/WET – MIXはDRY/WETが調整可能、WETは100%エコー音

TIMEやFEEDBACKは、通常のエコープラグインと同じですね。

MIX/WETノブは、直接インサートする時は「MIX」、センドリターンで使用する場合は「WET」を使用します。

「MIX」モードでは、DRY/WETのバランスをLEVELで調整し、「WET」モードではエコーの音量をLEVELで調整できるようになっています。

④ マスターセクション

最後に、マスターセクションを見ていきます。

  • INPUT – インプット音量
  • OUTPUT – アウトプット音量
  • MIX – DRY/WETの調整
  • SOFT CLIP – ソフトクリップ

特に、難しい設定項目はありませんね。

「MIX」ノブを使えば、原音とエフェクトのバランスを調整できるので、ミックス全体に薄くテープエフェクトをかけることも可能です。

同じセクションにある「PLAYBACK」では、テープのゆったりとした立ち上がりや停止などを再現することができます。

「Hainbach」とは何者なのか?

最後に、AudioThingとコラボした「Hainbach」について紹介します。

Hainbachはドイツのアーティスト/YouTuberで、今回紹介した磁気ワイヤーレコーダーのような、テープを中心とする古い機材を使って音楽制作を行っている人物です。

Hainbachのお気に入りギアTOP7 – 2017 

彼のYouTubeはとても興味深く、僕も普段から彼のチャンネルを観てカセットテープレコーダーを購入する時など参考にしたりしていました。

実験的なセットアップが多くかなりおもしろい機材を使って制作しているので、観ているだけでもおもしろいですよ。

Hainbach – YouTube

彼のおかげで、カセットやテープなどのローファイギアの魅力を知ることができました。

AudioThing「Wires」でソ連時代のローファイ感を再現しよう | まとめ

Wiresはクセが強すぎるので、最近流行りのローファイホップのような楽曲を作るのには向いていないかもしれません。

なので、一部の楽器やシンセなどに通して曲中のアクセントとして使うというのがおすすめです。

ローファイプラグインとは言っても、他の製品とは一味も二味も違うかなり独特な製品に仕上がっているので、少し変わったサウンドを求めている人はぜひ試してみてください。

AudioThing「Wires」- Plugin Boutique

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この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?