自分の楽曲はどこかまとまりがない。楽器同士のつながりや一体感が足りない気がする。
ミックスをしていて、そんなことを感じたことはないでしょうか。
各チャンネルでの個別の調整も大切ですが、そんなとき「バスコンプレッサー」を使用すれば楽曲のクオリティをさらに上げることができるかもしれません。
バスコンプは楽曲全体にまとまりを出したり音圧を上げたり、各楽器を前に出して迫力を出したりとさまざまなメリットがあります。
今日はそのバスコンプの使い方のコツや、使用する上で間違えやすいポイントなどをご紹介しましょう。
バスコンプとは?
バスコンプ(バスコンプレッサー)とは、ミキシングやマスタリングにおける手法のひとつです。ドラムバスやマスターバスと言われるの音の最終地点で少量のコンプレッションをかけることにより、ミックス全体のダイナミクスを調整して楽曲にまとまりや統一感を出すことができます。
別名「Glue Compressor」(グルーコンプレッサー)とも呼ばれています。
「グルー」は日本語で、のりや接着剤という意味じゃ。
ミックスを、接着剤のようにくっつける役割なので”グルー”コンプレッサーということですね。
Ableton Liveユーザーなら「Glue Compressor」というCytomicと共同開発したバスコンプが入っていますので、Abletonユーザーはぜひ使ってみましょう。
バスコンプを目的としたコンプレッサーもいくつか市場に存在していますが、DAWに入っている標準のコンプでも十分にバスコンプとして使うことができるので、まずは手持ちのコンプを使ってあなたのミックスを「グルー」してみましょう。
【使い方】バスコンプを設定するための9つの手順
バスコンプといってもパラメーターは通常のコンプと同じなので、基本的なコンプの使い方を理解している方なら設定も簡単です。
コンプのパラメーターがいまいちよく理解できていないという人は検索してみるか、Logic Proユーザーならこちらの記事【まとめ】Logic Pro純正コンプレッサー使い分けのコツとそれぞれのメリットで、コンプへの理解を深めてから読み進めるのがよいでしょう。
バスコンプの設定手順については「Musician On The Mission」という海外サイトに良記事がありましたので、こちらからご紹介しましょう。
・6 MIX BUS COMPRESSION MISTAKES (THAT WILL DESTROY YOUR MIXES) – Musician On The Mission
1. レシオを1:3に設定する
2. スレッショルドを下げて10dBほどのゲインリダクションをとる
3. アタックタイムを遅めに設定する(100ms)
4. リリースタイムを速めに設定する(5ms)
5. アタックタイムを少しづつ速くして、トランジェントや楽曲の生命力が失われないギリギリのところまでもっていき、少しだけ戻す。
6. リリースタイムを少しづつ遅くする。ドラムのキックとスネアをソロで聴いて、それぞれの音の隙間でゲインリダクションが0まで戻るよう設定する。
7. スレッショルドを緩めて、ダイナミックレンジや音の厚みをコントロールする。通常バスコンプなら1-2dBのゲインリダクションがよい。
8. 通常レシオは低めの1:2にする。よりアグレッシブなコンプレッションを求めるなら1:4に設定する。
9. メイクアップゲインでコンプレッションによって下がった音量をもとに戻す。
バスコンプは楽曲全体のクオリティーを大きく変えないようアタックを遅め, リリースを速めに設定し、わずかだけコンプレッションをかけるのが基本です。
上記で紹介した方法は一度大きくゲインリダクションをとった後に、アタックとリリースを調整しコンプを緩めて微調整をしていくという方法ですね。
僕もこのような方法で調整することが多いですが、試行錯誤してそれぞれのやり方をみつけてみましょう。
次にバスコンプを設定する上で、間違えやすいポイントをいくつか挙げてみます。
バスコンプの設定で間違えがちなポイント
コンプレッションが強すぎる
レシオは1:2~2:1くらい、ゲインリダクションは1~2dBが基本です。
ミックスを大きく崩さないコンプレッションを心がけましょう。
アタックが早すぎる(遅すぎる)
早すぎるアタックは平坦でつまらないミックスになってしまいます。
遅すぎるとトランジェントをとらえきれず、まとまりがでません。
躍動感とまとまりが同時に出るような、ちょうどいいポイントを探ってみましょう。
リリースが早すぎる(遅すぎる)
リリースが早すぎると、聴いていて不自然なコンプレッションになります。
遅すぎると前の音にかかっていたコンプが、次の音にまでかかってしまいます。
終始コンプがかかりっぱなしの平坦なミックスになってしまうので、コンプの切れ目がわからない, なおかつ自然なリリースタイムを心がけましょう。
おすすめのバスコンプ用プラグインは?
バスコンプ用プラグインは、SSLという名機を再現したものが多くリリースされていますが、基本的な使い方は上記で説明している9つの手順に従えばOKです。
同じ数値に設定していてもコンプレッサーによってかかりが変わってくるので、この基本的な考え方をもとに微調整をして理想の音を作ってみて下さい。
The Glue
「Cytomic」から発売の定番バスコンプです。
HARDWELL, FLUME, DEADMAU5といった、EDMプロデューサーがよく利用していますね。
名機SSLがモデルになっているバスコンプです。
SSL 4000 G Bus Compressor
・SSL 4000 G BUS COMPRESSOR – UAD
SSLをモデルにしたプラグインのバスコンプはいろんなところから発売されていますが、こちらはUADから出ているので信頼できますね。
こちらのプラグインは数年前にアップデートされたことで、さらに品質が上がりました。
参考: 【解説】UADって何? – 5年以上UADを愛用する僕がおすすめプラグインと共に解説していく – スタジオ翁
Solid Bus Comp
・SOLID BUS COMP – Native Instruments
こちらは「KOMPLETE 8 ULTIMATE」という、KOMPLETEシリーズの中でも上位のバンドルに収められています。
このバンドルはSOLID BUS COMP以外にも、「UREI 1176」や「LA-2A」「MANLEY VARIABLE-MU」といった数々の名作コンプを再現したプラグインがまとめられているので、かなりお得なバンドルですよ。
参考: KOMPLETE 12 ULTIMATEが最強である5つの理由【全部入り】 – スタジオ翁
API 2500 Bus Compressor
・API 2500 BUS COMPRESSOR – UAD
APIも非常に有名なメーカーですね。
プラグインバージョンはいくつかのメーカーから出ていますが、やはりおすすめはUADから出ている「API 2500 BUS COMPRESSOR」です。
まとめ
バスコンプはミックス全体にかけるほか、ドラムやそれ以外のバスにかけてバスごとにまとまりを出すという使い方もできます。
僕はUADの「LA-2A Silver」を使って、ドラムバスのまとまりを出したりしていますね。
通常LA-2Aはボーカルなどに使用されるコンプなんですが、この「Silver」はLA-2Aシリーズの中でも最もアタックが早いので、ドラムの「バチン」というアタック音にもしっかり対応してくれます。
「Universal Audio 1176 Compressor」を使ってドラムにパンチを出すという方は多いと思いますが、「LA-2A」だとロック過ぎず、程よいバランスでグルーされるのでおすすめです。
コンプによってかかり方や表情もかなり変わってくるので、上記のおすすめバスコンプ以外にもいろいろ試してみて、自分の好きな音を見つけるのもよいでしょう。
楽曲にまとまりや迫力が足りないという方は、ぜひバスコンプの手法を試してみてください。