最近蒸し暑くなってきて、機材のコンディションがちょっぴり心配ですね。
さて、今日はコンプレッサープラグインについている「サイドチェインフィルター」についてご紹介します。
ちなみにこれは、ダンスミュージックでよく使われる「ダッキングエフェクト」としてのサイドチェーンではありません。
では何かと言うと、 コンプレッサーによく「フィルター」というのが付いているかと思います。「SC」「HP」と書かれていることもありますね。
このパラメーターはあまり目立たないので、「普段からコンプを使っているのに全然気づかなかった」という人もいると思いますが、うまく活用すればより自然にコンプをかけたりミックスにまとまりを出すことができるようになります。
「パラメーターには気づいていたけど、あまり気にしていなかった」という人も、ぜひこの機会にサイドチェインフィルターを理解して普段の制作に役立ててみてください。
それでは詳しく見ていきましょう。
サイドチェインフィルターの効果
サイドチェインフィルターは、コンプレッサーをより自然にかけるための機能です。
「サイドチェイン・ハイパスフィルター」とも呼ばれるこのフィルターは、名前の通り入力信号にハイパス(つまりローカット)をかける機能ですが、 なぜ入力信号にハイパスをかける必要があるのでしょう?
このフィルターはバスコンプについていることが多いので、マスターチェーンに挿すコンプを例に見てみましょう。
大体完成が近いトラックというのは、スペアナで見るとこのような形になっていることが多いと思います。
スペアナは各帯域のエネルギーの量を表しますが、低音の方が大きな割合を占めているのがわかりますね。
つまりここにコンプをかけようとすると、必ず低域に反応してコンプがかかり始めることになります。
ところが低域にはキックが含まれていることが多いので、 設定によってはキックにだけ反応して音が跳ねる、いわゆる「ポンピング」が起こる可能性もありますし、上物にコンプがかからずキックだけがコンプレッションされているという状態になることもあります。
この問題を解決するのがサイドチェインフィルターです。
例えばこのSSL のバスコンプだと、20Hzから185Hzの間でサイドチェインフィルターをかける周波数を決めることができます。
コンプをあまりキックに反応させたくないという時は、キックのファンダメンタル周波数がだいたい40Hz~60Hzなのなので、80hzや100Hzあたりにサイドチェインフィルターを指定してあげましょう。
するとキックの「ドン!」という低域部分にはコンプが反応せず、それ以外のリズム帯や楽器などに反応してコンプがかかります。
サイドチェインフィルターなしだとキックが詰まったように聞こえることがあるのですが、 サイドチェインフィルターをオンにするとこれが解消され、より自然なコンプをかけることができます。
こちらの動画では、Native Insturuments「Supercharger GT」を使って実際にサイドチェインフィルターを使う様子をみることができます。
サイドチェインフィルターの活用方法
サイドチェインフィルターはいろんな場面で使えますが、僕がよく使うのは「ミックスバス」と「ベース」へのコンプです。
ミックスバス
先ほど例で挙げたように、ミックスバスにはキックが入っていることが多いので、 「キックにだけ反応させず、全体に緩やかに EQ をかけたい」という時にサイドチェインフィルターを使います。
この場合、僕は90ヘルツあたりに設定することが多いですね。
最近ミックスバスによく使うのはこのコンプです。
・Vertigo「VSM-2」- Plugin Alliance
ベース
ベースは低域ももちろん出ていますが、高域にもかなりアタック感のある音が入っている場合があります。
なので普通にコンプをかけてしまうと、低域にだけ過剰にコンプがかかってしまうかもしれません。
高域のアタック部分にコンプがかからないようなら、サイドチェインフィルターを設定して全体にちょうど良いバランスでコンプがかかるよう調整してあげましょう。
全体がほどよくコンプレッションされる適切なフィルターの位置は、音によっても異なるので、耳で聞いて適切な値を探ってみてください。
サイドチェインフィルターの注意点
ややこしいのですが、サイドチェインフィルターはマルチバンドコンプやダイナミックEQのように、特定の帯域だけにコンプをかけるものではありません。
あくまでコンプの「トリガーとなる帯域」を指定するためのものなので、 低域のキックやベースにもコンプはかかっています。
まとめ
サイドチェーンフィルターをかけると、本当に滑らかにコンプをかけることができます。
「低域のキックやベースにもしっかりコンプをかけたい」といったシーンだとサイドチェインフィルターをかけない方が良い場合もありますが、ドラムバスやミックスバスで「グルー感」を出したい時にはとても使えます。
他にも、低域の成分がたっぷり入ったボーカルに滑らかにコンプをかけたい、といった場面で使うのも良いかもしれません。
この記事で挙げたシチュエーションに限らず、「低域のせいで全体にうまくコンプレッションがかからない」場面があれば、ぜひサイドチェインフィルターのことを思い出してみてください。