MENU
「週刊 スタジオ翁」ニュースレターの登録はこちら

高級DJミキサー8種の音質を徹底比較 – クラブで映える最強のミキサーはどれ?

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

DJミキサーってたくさんあるけど、どれが音質いいのかな?全部買ってみて試すわけにもいかないし…

今日はこんな疑問に答えます。

 

DJミキサーは、機能面だけならネットで調べて比較できますが、音質に関してはなかなか比較することができませんよね・・・

もしあなたが「DJ」なら、自分にはどんなミキサーが合っているのか気になるでしょう。

もしあなたがDJミキサーの購入を考えている「個人」または「クラブのオーナー」だったら、自分の好きな音楽にピッタリ合ったミキサーを知りたいですよね?

今回は僕がクラブの音響をしていることもあり、8種類の定番DJミキサーを片っ端から試せる機会があったので、これらの特徴をまとめて記事にしてみることにしました。

この記事は、こんな人におすすめです。

・DJをやっているので、自分に合うミキサーを知りたい

・自分のクラブやバーにDJミキサーを入れたいので、それぞれの特徴を知りたい

・自宅用にDJミキサーを1つ購入したい

僕は毎週いろんなDJミキサーの音を聴いているので、各ミキサーの特徴は把握しているつもりですが、今回はあらためて手持ちの楽曲を各DJミキサーに通して録音し、その違いをもう一度しっかり聴き比べてみました。

今日紹介する8つのDJミキサーは、海外のクラブでもよく使われている機種ばかり!

DJミキサー選びに迷っている人は、ぜひ参考にしてみてください。

今回比較したDJミキサー8種

今回聴き比べをしたのは、以下の8つのDJミキサーです。

① Pioneer「DJM-900NXS2」(クラブの定番ミキサー)

② Pioneer「DJM-V10」(クラブの新定番??)

③ Urei「Model 1620」(アナログミキサーの名機)

④ E&S「DJR400」(クリアかつファットな出音のロータリーミキサー)

⑤ Allen&Heath「XONE 92」(テクノの定番ミキサー)

⑥ Allen&Heath「XONE 96」(テクノの新定番ミキサー)

⑦ Allen&Heath「Model 1」(あらゆるジャンルに対応する高品質ミキサー)

⑧ Isonoe「ISO420」(超攻撃的なサウンドの次世代ロータリーミキサー)

Pionner「DJMシリーズ」はクラブやDJバーにも置いてあるので、知っている人も多いでしょう。

テクノ好きなら、Allen&Heath「XONEシリーズ」にも馴染みがあるかもしれませんね。

 

⑦⑧あたりは海外のDJでたまに使っている人はいるものの、日本ではそんなに知名度が高くないミキサーです。

でも音はめちゃくちゃ良いので、個人的にはぜひ使ってみて欲しいミキサーでもあります😌

高級DJミキサー8種の音質を徹底比較

さて、ここから各DJミキサーのレビューをしていきましょう。

それぞれのDJミキサーで録音した音源を、ここにズラっと載せられると一番良いのですが、著作権関係の理由で楽曲を貼ることができないので、ここからは僕個人の完全な主観レビューになります。

あと僕はあまりDJをしないので、ミックス時の混ざり具合などについては解説しません…(「E&Sは下手でもうまくミックスできる」とかあるみたいですね)

単純にクラブの音響をしていて、

「各DJミキサーの音は、クラブのサウンドシステムで聴くとどんな違いがあるのか?」

「録音データをあらためて聴き比べてみて、どのように感じたか?」

という部分に絞って紹介していきます。

1. Pioneer「DJM-900NXS2」

Pioneer「DJM-900NXS2」

メーカー: Pioneer

発売日: 2016年

価格: 275,000円

音の傾向: バランスのとれた出音

得意な音楽: オールジャンル

DJM-900NXS2は、エフェクター系が充実していたりPCDJに対応していたりするので、あらゆるジャンルのDJが好んで使っています。

どのジャンルの音楽でもバランス良く再生される、業界のスタンダード的な存在

今回比較したミキサーの中でも、どこかの帯域が過度に強調されるわけでもなく、抜け落ちているような帯域もない、バランス面がとても優れているミキサーだなと感じました。

ただ、ミキサー上でクリップすると音が思いっきり潰れてしまうので、「ミキサーはクリップさせてナンボじゃい!!!」というオラオラ系DJが多いと、高音ジャキジャキのコンプメキメキサウンドになってしまうので注意したいところ・・・

(クリップすると、どうしてもデジタル臭が前面に出てしまいますね)

でもこの1点だけ気をつければ、音のバランスと機能性ともに、とても優秀なミキサーだと思います。

2. Pioneer「DJM-V10」

Pioneer「DJM-V10」

メーカー: Pioneer

発売日: 2020年

価格: 385,000円

音の傾向: 奥行きと音立ちの良さで、DJM-900NXS2を上回る

得意な音楽: オールジャンル

V10は、DJM900NXS2のバランス感をそのままに、さらなる解像度の高さとパンチが加わった新世代のDJミキサー。

実際にクラブのサウンドシステムで鳴らしてみても、とてもイキのいい音が出てましたね。

DJM900NXS2と比べても、「Pioneerらしさ」がより顕著けんちょにあらわれるようになったと感じました。(より派手な音になる印象)

ただ、アナログミキサーの「マイルドさ」のようなものを求める人には、正直あまり合わないと思います。(デジタルミキサーなので当たり前ですが…)

 

まぁなんだかんだ言っても、バランスの良い優れたミキサーであることに変わりはありません。

前モデルのDJM900NXS2と音質面で迷っているなら、間違いなくV10を選んだ方がいいでしょう。

2. UREI「Model 1620」

UREI「Model 1620」

メーカー: UREI

発売日: 不明

価格: 300,000円くらい(中古)

音の傾向: ロー寄り, 温かみがある, THEアナログサウンド

得意なジャンル: ハウス, ディスコ, 歌もの

正直なところ、UREIはかなり古いミキサーだし、最近の音楽にも全然合わないのでナメてました。(UREIユーザーのみなさんゴメンなさい)

高域は全然出ないし、低域はめちゃくちゃモフッとしてて音圧もでないし…

 

ところがあらためてUREIを他のミキサーと聴き比べてみると、これらのデメリットを上回るほどの「良さ」をいくつか感じました。

例えば・・・

・とても音楽的な響きがする

・ボーカルが心地よく再生される

・まろやか&温かみのあるサウンドで、フロアに長時間いやすい

UREIは今回紹介する8つのミキサーの中でも特別で、実は解像度的な部分でいうと全然良いミキサーじゃないんですよね

ところがUREIにしか出せない雰囲気や、特別なサウンドがあるのは事実

その音楽が持つエネルギーや感情がすごく伝わってくるミキサーだし、サウンドシステムにうまくハマれば素晴らしいサウンドになります。

CDJでデータを流してもUREIの良さは十分に感じることができますが、レコードをかけるとなお、その素晴らしさが実感できると思いました。

3. E&S「DJR400」

E&S「DJR400」

メーカー: E&S

発売日: 2003年あたり

価格: 400,000円

音の傾向: やや重めな低域とクリアな中高域をあわせもつ

得意なジャンル: ハウス

DJR400は中高域の抜けの良さと、解像度の高さが素晴らしいミキサー

アナログらしい自然なサウンドなのに、きっちり超高域までクリアに再生されます

 

ただ、個人的にあまり好みじゃないのが、中低域から低域にかけてのサウンド。

中低域(150〜300Hzくらい?)のパンチが少なく、それより下のサブベース帯域はかなり重みのある音になっています。

UREIほどではありませんが「タイトな低域」とは言えず、テクノのような速い音にはうまくハマらないんじゃないかな〜?という印象

ダンスミュージックで重要な「タンッ!」という中低域部分が、「マフッ!」となりがち。(良く言えば、味付けのないフラットなサウンドって感じでしょうか…?)

 

でもこれはほんと、好み&サウンドシステムとの相性の問題だと思います。

最初に言ったように音のクオリティーは高く、製品自体は素晴らしいので、サウンドシステムとの相性によっては最高の結果が出せるかもしれません

4. Allen&Heath「XONE 92」

Allen&Heath「XONE 92」

メーカー: Allen&Heath

発売日: 2004年

価格: 159,800円

音の傾向: タイトな低域, クリアでトゲのない中高域

得意なジャンル: テクノ

XONEシリーズは、テクノ系アーティストからの指定がもっとも多いミキサーです。(9割以上のテクノDJがXONEを指定されますね)

低域から高域までバランス良くきっちり出ていて、音量をつっこまれても音が破綻はたんしないのが素晴らしい

低域はかなりタイトで、テクノのために生まれてきたんじゃないかってくらいキレの良いサウンドです。(ベースラインの細かい動きなどをハッキリと聴くことができます)

低域のキレが良すぎるので、逆にハウスやベース系とはいまいち相性が良くないかもしれません

まったく合わないというわけではないので、テクノを主体でかけるDJやクラブなら導入する価値はあると思いますね。

5. Allen&Heath「XONE 96」

Allen&Heath「XONE 96」

メーカー: Allen&Heath

発売日: 2018年

価格: 253,000円

音の傾向: XONE92の魅力をそのままに、さらに解像度と迫力が高まっている

得意なジャンル: テクノ

いまXONEシリーズを買うなら、絶対にこのXONE96にすべきです。

全モデルのXONE92と比べても解像度と音の迫力(音圧感)が高まっていて、申し分ないミキサーに仕上がっています。

低域のタイトさや全体のバランス感はそのままに、音質はしっかりアップデートされていますね。

一皮むけて大人になった「新たなXONEサウンド」を、ぜひ多くのテクノファンに体感して欲しいです。

6. Allen&Heath「MODEL 1」

Allen&Heath「MODEL 1」

メーカー: Allen&Heath

発売日: 2016年

価格: 350,000円(3,249ドル)

音の傾向: 高い解像度, XONE96より低域の押し出しが強い

得意なジャンル: テクノ, ハウス, オールジャンル

リッチー・ホーティンが開発にたずさわっているミキサーとして有名なModel 1は、めちゃくちゃ音が良いものの、あまり普及はしないと思います。(とにかく使いにくい!!)

Model 1は、他のDJミキサーのように直感的に操作できるEQではなく、周波数を指定してコントロールする「パラメトリックEQ」と、高域・低域用の「2つのフィルター」を各チャンネルに備えた特殊なミキサーなのです。

しかしそのEQ部分の使いにくさを抜きにすれば、個人的には最高音質のミキサーだと思っていて、解像度とアナログ感がさらにプラスされた「Pionner DJM-V10」といった感じでしょうか。

初めて聴いたときは、サウンドが異次元すぎてビックリしました。

 

音の特徴は、Allen&Heath社がつくっているだけあって「XONEシリーズ」ととても似ていますが、低域のキャラクターが少し違っています

XONE96がキレッキレのタイトな低域なのに対し、Model 1の低域はもう少しリッチなふくよかさがあります。

「ハウスやその他のジャンルにも柔軟に対応できるXONE96」と言えば、もっとわかりやすいかもしれませんね。

とにかく音が良いので、使い勝手さえ気にならなければオススメ度NO.1のミキサーです

7. Isonoe「ISO420」

Isonoe「ISO420」

メーカー: Isonoe

発売日: 2015年あたり

価格: 400,000円

音の傾向: ねるようなサウンド, ローからハイまで主張が激しい

得意なジャンル: ハウス, ベース, ミニマル,

ISO420は、日本からのオーダーがまだ数件しかないそうなので、まだほとんど普及していないと思います。

ここ数年、Dixonという有名なDJが愛用していたので、僕もずっと気になっていた製品です。

音はめちゃくちゃ特殊で、すべての音楽が跳ねるようなサウンドになります。

もうすべての音楽を踊らせにかかってくるので、「しっとり聴かせたい」というDJにはまるで向いていません・・・

しかし迫力やパンチ力が、今までのミキサーにないくらいすさまじいので「うちのサウンドシステムはいまいちパンチがないんだよな…」という人や、「とにかく迫力のあるサウンドでお客さんを踊らせたい!」というDJにはぴったりの1品

個人的にはModel 1と同じくらい衝撃を受けた音で、「将来、僕がDJミキサーを買うならこれかModel 1だな」と心にちかっています。

クラブで映える最強のミキサーはどれ? | 結論

さて、8つのさまざまなDJミキサーをみてきましたが、結局No.1はどれなのでしょう?

音楽ジャンルによってもクラブで映えるサウンドは異なるため、「これがナンバーワン!!」と断言するのはなかなか難しいですが、ここで結論を出すためにいくつかのポイントに絞って、最強ミキサーを決めていきます。

解像度部門 – Allen&Heath「Model 1」

もう音質の1点でみれば、「Model 1」で決まりでしょう!

Pioneer「DJM-V10」もバランスのとれた良いミキサーですが、Model 1はまったく異次元のサウンドです。

「DJミキサーを変えるだけでこれほど変わるのか!!」というほど素晴らしく、まるで違うスピーカーで鳴らしているような錯覚をしてしまうほど。

とにかく音質が良くバランスのとれたミキサーを選びたい人は、これで決まりですね。

テクノ部門 – Allen&Heath「Xone 96」

「Xone 96」はModel 1よりも低域の歯切れがよく、テクノの細かいベースラインなんかもめちゃくちゃ見えるので、テクノを鳴らすのに最高の1台です。

Model 1より後に発売されていることもあって、音質もModel 1と同じくらい素晴らしいですよ。

ハウス部門 – UREI「UREI 1620」

歌ものやディスコのような、ちょいオールドスクールなハウスに「UREI」はぴったりマッチするでしょう。(Progressive House, Tech House, Bigroom Houseとか、最近のハウスには全然合わないのでお気をつけて)

レコードを自宅で再生するのにも、すごく良いと思います!

この柔らかさや温かみは、他のミキサーではなかなか表現できないですね。

市場にあまり出回っていないので購入が難しいかもしれませんが、今の時代でも買う価値のある逸品いっぴんです。

パンチ・迫力部門 – Isonoe「ISO420」

とにかくパンチと迫力を求めるなら、ISO420がピッタリです。

「フラットなサウンド」とは程遠いですが、ハマればめちゃくちゃ好きになれるミキサー。

音が特殊すぎるので、試聴せずに買うのは若干リスクがありますが、自分に合った最高のミキサーを探しているという人は試してみる価値があるでしょう。

ちなみにロータリーミキサーですが、「UREIが好き!」という人はこの音をあまり好きになれないかもしれないので、お気をつけください。

高級DJミキサー8種の音質を徹底比較 – クラブで映える最強のミキサーはどれ? | まとめ

以上、8種類のDJミキサーを比較・紹介しました。

「徹底比較」とか言いつつ、各ミキサーの比較データも載せず主観のみで語っているのは申し訳ないですが、年間200日くらいクラブで音を聴いている僕の耳もがみなさんのミキサー選びの参考になることを信じています。

今回は8機種しか紹介できなかったですが、クラブの定番ミキサーはまだいくつかあります。

「Alpha」「Rane」などもたまに海外DJからの指定があるミキサーで、これらもそのうち追加で紹介していきたいですね。

今日の記事が、みなさんの参考になれば嬉しいです😃

⬆目次に戻る

サービス・書籍について

<ニュースレター>

週刊「スタジオ翁」beehiiv版

毎週、音楽制作やAIに関する話題、世界の音楽ニュースなどを紹介しています。

<著書>

AI時代の作曲術 – AIは音楽制作の現場をどう変えるか?

作曲AIに関する書籍を出版しました。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。Kindle Unlimitedで読めるので、気になった方はぜひチェックしてみてください。

 

この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?