今日は、アンビエントや映画音楽によく合う、シネマティックピアノ音源「ASCEND」をご紹介します。
Heavyocityは、映画音楽やゲーム音楽に特化したバーチャルインストゥルメントを制作する会社です。その中でも、「ASCEND」はピアノに特化した製品なのですが、ただのピアノ音源ではなく、瞬時にシネマティックなピアノサウンドが作れるよう、さまざまな工夫がなされた製品となっています。
基本的なサウンドは、Steinway Concert Dという有名なグランドピアノ。
ニューヨークの歴史的なスタジオで録音された音のようです。プリセットは、浮遊感があり幻想的なものが多いですね。
ASCENDのインターフェースを見て、まず目に入ってくるのは、画面中央にある三角形の「2Dミキサー」と呼ばれるミキサーでしょう。

三角形の3つの頂点にそれぞれ異なるピアノの音を設定し、ミキサーでバランスをとることによって、ASCENDならではの複雑でリッチなサウンドを生成することができます。
各頂点では、クロースマイクやルームマイクなどの音を選ぶことができます。(右側に、各サウンドの説明が出てきます)

そして、ASCENDと他のピアノ音源で大きく違っているところは、マイクの種類を選べるだけでなく、ブラシ、ハンマー、弓、糸などを使ったピアノの録音を選択できるところ。
木製のスティックでピアノの弦を叩いたり、糸を使って弦を弾いたりすることで、ただピアノの鍵盤を弾くだけではない、複雑でエクスペリメンタルなサウンドを作り出しています。
こういった手法のピアノは「Prepared Piano(プリペアドピアノ)」と呼ばれ、昔、ジョン・ケージという現代音楽の作曲家が発明したことでも知られていますね。
これによっていびつな金属音や、バイオリンなどの弦楽器を弾いた時のような音が生まれ、それをピアノの音と混ぜ合わせることで、重厚感やきらびやかさが増すのです。
この感じは、他のプラグインではなかなか出せないので、アンビエントなどの音楽を制作している人にはかなりおすすめです。
ASCECDでは、他にも「モジュレーション」「エコー」「アルペジオ」といったさまざまなパラメーターを駆使して、より複雑な音を作り出すことができます。
各パラメーターは、細かくいじって音を作り込めるようになっているのですが、正直、ここまで多くのパラメーターを操作して音を調整する気にはなりません・・・
なので、僕はプリセットからいい感じのものを選び、他の楽器に合わせてパラメーターを操作して微調整するという使い方をしていますね。
ちなみにプリセットは110個ほどあり、一般的なピアノサウンドから、実験的なサウンドまでさまざまなものが用意されています。
ASCENDを理解する上で重要なのは、1つは先ほど紹介した「2Dミキサー」ですが、もう1つは「クリエイティブエコー」と呼ばれる独特なエコー機能です。

エコーには2種類ありますが、従来のエコーに加えて、ASCENDには「GENERATE」という、打ち込まれたコードに基づいたノートを生成するエコーもあります。
- REPLICATE – 従来のMIDIディレイとして機能し、演奏した各音を一連のエコーで再現します。
- GENERATE – エフェクトがノート生成エンジンとなり、演奏したコードに基づいたノートを演奏します。
これがシマーリバーブのような効果を生み出し、浮遊感や幻想的なサウンドを生み出しているのですね。
参考: 「Valhalla Shimmer」でブライアン・イーノ風アンビエントサウンドを手に入れる – スタジオ翁
本来、こういったサウンドのピアノを作ろうとすると、シマーリバーブなど他のプラグインを組み合わせる必要があるのですが、ASCENDは外部エフェクトを使わなくても内部で完結してしまうというところが大きなポイントであり、ASCENDの魅力だと思います。
まとめ

ASCENDは、単なるピアノ音源というよりも、映画音楽・アンビエント特化型のピアノ音源なので、もっと普通のピアノの音が欲しい!という方は、違うものを選んだ方が良いでしょう。
逆に、幻想的な雰囲気のピアノが欲しい!という時は、ピアノにリバーブやディレイなどのエフェクトをかけて…という手間が省けるので、ASCENDがとてもおすすめです。
ASCENDのように、はじめから作り込まれた、重厚で広がりのあるピアノ音源はなかなかないので、用途に合えば最高のピアノ音源であることは間違いありません。
気になった方は、ぜひ使ってみてください。