今回は、都内のクラブで年間2,000人以上のDJを音響として近くで見てきた僕が、PCDJに関する現状とオススメのDJスタイルをご紹介します!
この記事を読めば、以下のことがわかります。
・PCDJはクラブにどれくらいいるのか?
・PCDJは音質が悪いのか?
・PCDJにしか出来ないことはある?
・本格的なPCDJの始め方
・おすすめのPCDJソフトとコントローラー
最近はパソコンを使ったDJスタイルが増えてきましたが、実際そういったスタイルのDJはどのくらいいるのでしょう。
今クラブやフェスなどのイベントで主流となっているDJスタイルはPCDJなのでしょうか?それともCDやレコードなのでしょうか?
あまり立ち入ることができない現場の中から、最新のトレンドを探っていきます😌
今どきのDJは何でプレイする?PCDJやレコードを使うアーティストの割合
今回は主にDJがプレイする場所を、4つに分けてみます。
- フェス
- クラブ
- DJバー
- イベント会場
それぞれの現場で、どんな機材が使われているのか見ていきましょう。
フェス
フェスもいろんなジャンルがあるので一概には言えませんが、PioneerのCDJは頻繁に見かけます。
TomorrowlndのメインステージやUltraなどのEDMフェスだとCDJが4台だけというセッティングが多いですね。
フェスでもテクノやハウスといった、レコードを扱うDJが多いジャンルのものはターンテーブルが設置してある場合もあります。
クラブ
大きなクラブなら、CDJとターンテーブルを常設しているところが多いですね。
多くのDJがUSBやCDを使ってプレイしますが、「レコード」とUSBなどの「データ音源」をあわせて使うDJもよく見かけます。
逆にレコードしか使わないというDJもいますが、このような人は少数派です。
PCDJの現場での使用率ですが、ほとんどのDJがCDJやターンテーブルでプレイするので、その割合は1割にも満たないでしょう。
ましてや、大きな2デックの家庭用コントローラーを持ってくるDJは、ほとんどいません。
持ってくるとしたら「Native Instruments」や「Allen&Heath」から出ている細身で場所を取らないようなコントローラーが多いですね。
自宅用としては素晴らしいコントローラーだと思いますが、これだと設置できないお店もあるでしょう・・・
あとは、パソコンだけ持ってきてCDJに繋いでプレイする方もいますね。
持ち込むのはパソコンのみですが、自分が普段から使っているTraktorなどのパソコン用ソフトをCDJでコントロールすることができるので、「パソコン上で整理されたプレイリストを使える」「事前に再生箇所を設定したキューが使用できる」とさまざまなメリットがあります。(DVSという機能です)
ただこの方法はCDJの種類によっては使えないこともあり、設定に手こずってしまうDJも多いので割とトラブルが起こりやすい方法でもあります。
DJバー
DJバーは個人で小さく営業しているところがほとんどでしょうから、なかなか機材に大きな予算をかけることができません。
最新のCDJが入っていることもあれば、USBすら読み込めないCDプレイヤーが置いてあるDJバーもあります。
どのDJバーであってもCDであればほぼ確実にプレイできるので、CDを使っているというDJは意外と多いですね。
店舗によって機材の格差は激しいですが、ターンテーブルは割と置いてあるところが多い印象です。
イベント会場
簡易的なイベントでも、最低限CDJとターンテーブルは置いてあるところが多いです。
イベントの規模にもよりますが、USBすら読み込めないようなワケの分からないメーカーのCDJやミキサーである可能性は低いでしょう。
もちろん個人でやっているような予算のかけられない小規模のイベントは、あまり機材に期待に期待しないようにしましょう。
そもそもPCDJって何?PCDJにしか出来ないこと
そもそもPCDJというのは、どんなDJスタイルを指すのでしょうか。
通常DJはイベント会場にあるミキサーやCDJ, ターンテーブルを使ってプレイしますが、PCDJは愛用のパソコンを会場に持ち込んでプレイします。
PCだけでは操作性が悪いので、DJミキサー代わりにコントローラーも一緒に持ち込む人がほとんどです。
会場に機材があるのにPCを持ち込むのには、いくつかの理由があります。
ここで、PCDJのメリットを5つ挙げてみましょう。
- 環境に依存しない(家で使っている機材を会場でも使える)
- ソフト内蔵の豊富なエフェクトが使える
- 曲同士のテンポを自動で合わせてくれる
- 専用レコードを使って、データ音源のスクラッチプレイができる
- いくつもの曲が同時にプレイできる
順番に、これらのメリットを見ていきます。
1. 環境に依存しない(家で使っている機材を会場でも使える)
会場によって機材はさまざまです。
最新の機材が導入されていることもあれば、USBや機材間のデータ同期に未対応の古い機材などもあり、会場によって楽曲のフォーマットを変える必要などがでてきます。
普段レコードでプレイしていても会場にターンテーブルがなかったり、普段USBでプレイしていてもUSB未対応の機材だったり・・・
大物のDJなら毎回最新の機材を取り揃えたクラブでプレイできるので、このような心配はほとんどないでしょうが、一般のDJならいろんな環境でプレイすることが求められます。
一方、PCDJならそんな心配は一切ありません。
PCDJならいつも使っているPCとコントローラーを持ち込んで、いつも通りプレイするだけです。
使ったことのない機材や、慣れない機材の心配をする必要もありません。
2. ソフト内蔵の豊富なエフェクトが使える
「Traktor Pro」というPCDJ用ソフトだと、リバーブやディレイなどのエフェクトが50種類近く内蔵されているのも大きな魅力です。
フランジャーやフィルター, クラッシャーなどさまざまなエフェクトがあり、リバーブひとつとってもアイスバーブやT3リバーブなどさまざまな種類があります。
Pioneerの最新のDJミキサーであってもこれほど多くのエフェクトは付いていないので、エフェクトを使ってプレイの幅を広げたいという方には大きなメリットだと言えるでしょう。
3. 曲のテンポを自動で合わせてくれる
これはCDJでも出来ますが、TraktorなどのDJソフトでも可能です。
Traktorは楽曲を解析をして、曲同士のテンポを自動で合わせてくれます。
こういった機能のおかげで、DJを始めたばかりでなかなか上手くミックスが出来ないという人でも、簡単に曲をつなぐことができるんですね。
さらに曲のキーも解析してくれるので、次にどのようなキーの曲に繋げば自然なミックスが出来るのかが直感的に分かります。
初心者であっても簡単にDJが出来るのも、PCDJの大きなメリットのひとつですね。
4. 専用レコードを使って、データ音源のスクラッチプレイができる
これはヒップホップによくあるスタイルなのですが、動画をみてもらうと分かりやすいかと思います。
動画ではレコードをプレイしているように見えますが、実はパソコンから音が出ているんですね。
ターンテーブルに乗っているのは「コントロールバイナル」と呼ばれる、パソコンを操作するための専用のレコードです。
コントロールバイナルはただパソコン上の楽曲をコントロールするためだけのレコードなので、通常のレコードプレイヤーで再生しても何の音も出ません。
これによって、パソコンに入った音源をレコードを使って繋いだりスクラッチすることが可能になります。
最初にPCDJを使ったスタイルは、現場では1割にも満たないとお話しましたが、ヒップホップとなると話は全く変わってきます。
ヒップホップのクラブには、PCDJのために必要な「RANE SL4」という専用のオーディオインターフェースが常設してあることも多く、ヒップホップ業界では多くのDJがこのスタイルを採用しています。
DJソフトも「Traktor」ではなく、「Serato DJ」というソフトを使っていることが多いですね。
5. いくつもの曲が同時にプレイできる
PCDJを使えば初心者でも簡単にDJができることを説明しましたが、簡単に曲をミックス出来るからといって決して初心者のためだけのDJスタイルではありません。
こちらの動画内でDJソフト「Traktor」の使い方を紹介しているのはイギリス出身の著名DJ「Richie Hawtin」です。
彼のプレイは単なるDJにとどまらず、いくつものトラックや音を重ねてライブ的に行う独自のDJスタイルを確立しています。
その彼のプレイの中で、「Traktor」というソフトは大きな役割を果たしています。
これをCDJでやろうとすると何台ものCDJを会場に用意してもらわなければなりませんが、小さな会場で何台ものCDJを置いているところは少ないでしょう。
会場によってプレイが制限される可能性があるため、このようなスタイルでDJを行うなら会場の設備に依存しないPCDJが有効なのです。
PCDJは音が悪い?クラブやイベントで使える音質なのか
PCDJの音は「オーディオインターフェース」や「オーディオインターフェース内蔵型コントローラー」の性能によって大きく変わります。
安価なDJコントローラーであってもNative Instrumentsなどの信頼出来るメーカーからでているものなら、そこまで音質が悪いということはありません。
可もなく不可もなくといった出音ですね。
本当に音にこだわるなら、良いオーディオインターフェースを選ぶ必要があります。
オーディオインターフェースとはパソコンから音を出す際に必ず必要になるものですが、DJコントローラーの多くはこのオーディオインターフェースが内蔵されています。
なので新たに購入しなくてもプレイ自体はできますが、とにかく現場での音にこだわりたいというのならオーディオインターフェースを購入して、そこから出力するという方法がおすすめです。
プロも使っているオーディオインターフェース内蔵型DJコントローラー
音の良いオーディオインターフェースは値段も高いです。
なので安価ながらプロも使っているオーディオインターフェース内蔵型DJコントローラーを1つ紹介しましょう。
こちらは「Acid Pauli」というDJの、Boiler RoomでのDJライブの様子です。
彼のハイブリッドなDJライブパフォーマンスに、PCDJは欠かせません。
Acid Pauliが使っているのはAllen & Heathから出ている「XONE: K2」というコントローラーです。
値段も3万円ほどなので、初心者でも手が届きやすいコントローラーですね。
ちなみにAllen&HeathはDJ業界では知らない人がいないほどのメーカーで、世界中で業界標準となっているミキサーを作っている会社です。
XONE 96」はテクノの大定番ミキサーですし、先ほど紹介したDJ「Richie Hawtin」は、過去にAllen&Heathと「Model 1」という次世代ミキサーを共同開発しています。
参考: 高級DJミキサー8種の音質を徹底比較 – クラブで映える最強のミキサーはどれ? – スタジオ翁
信頼できるメーカーなので現場で使用しているDJも多く、操作性と音質は間違いなしの一品ですよ。
音にこだわるDJのオーディオインターフェースはこちら
音にこだわるなら、10万円ほどで買えるこちらのRME「Babyface Pro」がおすすめです。
この製品は、過去にこちらの自宅用オーディオインターフェースの記事でも紹介しています。
「Apollo Twin MKⅡ」という同じ価格帯の製品と比較していますが、実際聴き比べてみると音質は「Babyface Pro」の圧勝でした。
参考: 「Apollo Twin MKⅡ」を徹底レビュー! RME「Babyface Pro」とも比較してみた – スタジオ翁
小型で持ち運びにも便利なので、スタジオ用としても使えますよ。
ただ値段が高いので、DJを始めたばかりの方は無理に手を出す必要はないでしょう。
割と大きめの会場でプレイするようになれば、選択肢のひとつとして考えてもよいかもしれません。
オススメのPCDJコントローラー2選 – 初心者から上級者まで
巷には「DJコントローラー徹底比較! おすすめ10選」などの記事がありますが、そんなにたくさん提示されてもよく分からんわ!というツッコミを入れたくなるようなものが多々あります。
この記事では、2つだけDJコントローラーを紹介します。
どちらも素晴らしいコントローラーですので、目的に合わせて選んでみてください。
Allen&Heath「XONE:K2」
先ほども紹介した、Allen&Heathの「XONE:K2」です。
音質・操作性ともに間違いないコントローラーなので、僕も実際にDJの現場でも使用しています。
下の方にボタンがたくさん付いていますが、DJソフト上の好きなパラメーターをアサインできるので、やり方次第でいろんなプレイやパフォーマンスができます。
いちいちパラメーターを割り当てるのが面倒だという方は、プリセットがネット上に転がっているのでそちらをダウンロードすれば、すぐに各DJソフト専用のコントローラーとして使用できますよ。
参考: 「XONE:K2」を愛用する7人のアーティストとその活用法【ALLEN&HEATH】- スタジオ翁
Pioneer「DDJ-FLX4」
Pioneerの「DDJ-FLX4」は、2023年に発売されたPCDJの入門機です。
Beatportなどのサービスと組み合わせれば、曲をわざわざ購入する必要すらありません。
あくまで家での練習用か身内のパーティーくらいでの使用をおすすめしますが、入門機としてはこの上ない製品です。
DDJ-FLX4はDJプレイに必要な最低限の機能が備わっているので、これで練習しておけば会場の機材にもすぐ慣れることができるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょう。
PCDJの世界は奥が深く、PCDJと一口に言ってもいろんな形があります。
いくつかの方法を検討して、自分に合ったスタイルを探してみてくださいね😃