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モニタースピーカーを正しく設置するための5つのアイデア

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今日は、モニタースピーカーの能力を最大限に生かすためのアイデアを紹介します。

スタジオのようにルームアコースティックが調整された空間なら、スピーカー本来の持ち味を発揮できますが、家の環境だと部屋の大きさや形などによって、ある周波数が増幅されたり消えてしまうといったことは必ず起こります。

こういった部屋のクセを取り除くことで、質の高いミキシングや音作りができるようになるのですが、どの部屋にも共通する「いい音で鳴らすためのスピーカーの設置方法」というのは、ある程度決まっているんですよね。

もちろんその部屋に応じた微調整は必要になりますが、この記事ではスピーカー設置の基本となる5つの考え方を見ていきます。

「スピーカーを買い替えずに、もっと音を良くしたい」という人はぜひご覧ください🙂

モニタースピーカーを正しく設置するための5つのアイデア

モニター環境を改善するのに、必ずしもお金をかける必要はありません。

工夫次第でスピーカーの音はかなり良くなるので、いろいろ試してみてください。

1. 38%ルールを理解する

リスニングポジションは、部屋の長さの38%のポイントが理想的だと言われています。

これは25%, 50%, 75%のポイントでは、特定の周波数がキャンセル(お互いに干渉して打ち消し合う)される可能性があるため。

How To Set Up Your Home Studio For The Best Sound – Sonarworks

モニタースピーカーは机の上に置くのではなく、スタンドを使った方が、こういった微妙な調整がしやすいので便利ですよ。

安いものなら数千円でも売っています。

参考: CLASSIC PRO / MST20 PAIR スピーカースタンド – サウンドハウス

2. スピーカーと正三角形の関係をつくる

スピーカーとリスナーの関係を正三角形にすることで、もっとも理想的なサウンドになると言われています。

三角形の頂点はリスナーの耳ではなく、頭の少し後ろに設定することで、自然なステレオ感を得ることができます。

Speaker and Studio Monitor Placement Secrets – Arquen

音響学者のCarlTatzによると、三角形の1辺は「171.5cm」からスタートすると良いとのこと。

ただしこれはあくまでも目安なので、部屋の環境に応じて微調整をしていくと良いでしょう。

狭い部屋で171.5cmの間隔を空けようとすると、左右の壁との距離が近すぎて低音がかなり増幅されてしまう可能性もありますからね。

3. スピーカーと壁の距離を考える

スピーカーと壁との距離ですが、ほぼ壁に近づけて設置するか、110cm以上空けるようにしましょう。

スピーカーの面が壁から「38cm〜110cm」だと、低域の特定の周波数にディップ(へこみ)ができてしまい、後から補正プラグインなどを使っても対処できない可能性があります。

Set Up Your Studio Monitors The Right Way – Sonarworks

7畳くらいの狭い部屋だと、壁から110cmも離せないので、このような場合は壁ギリギリにスピーカーを設置します。

壁に近いと、壁からの反射によって低音が増幅されてしまうのですが、膨らみすぎた帯域はSonarworksなどを使って削ることも可能です。

逆に周波数同士が干渉して、特定の周波数にキャンセルが発生してしまうと、いくら補正プラグインなどを使ってもその帯域が上がってこないので注意してください。

壁からの距離を入力することで、どの周波数にキャンセルが起こるかを調べるためのサイトもあるので、気になる人はこちらも参考にしてみてください。

参考: The Wall Behind The Loudspeaker – HiFi Audio Design

4. 吸音材・ディフューザーを使う

スピーカーの位置調整だけでは音の反射を完全にコントロールすることはできないので、 吸音材やディフューザーを壁に貼って、部屋を整える必要があります。

吸音材は音を吸収して反射を防ぐためのものですが、「ディフューザー」はあまり耳にしたことがないかもしれませんね。

ディフューザーとは、このように表面がでこぼこになったパネルで、音を吸収するのではなく拡散させることで、部屋鳴り(エコー)を低減し、小さな部屋に広々とした空間を与えるためのものです。

ディフューザー

スタジオだけでなく、ライブ会場やクラブでもディフューザーを使って音を整えているところもありますね。

さて、これらの使い方ですが、まず吸音材は基本的に「モニタースピーカーの後方」「初期反射点」に設置するのが良いと言われています。

スピーカーの後方は低音がたまりやすい場所なので、「ベーストラップ」と呼ばれる、300Hz以下を吸音してくれる吸音材をスピーカーの後壁に貼ることで、かなり余分な低域を取り除くことができるでしょう。

もしベーストラップがない場合は、通常の吸音材をこのように設置します。

コーナーへの吸音材設置の例

吸音材と壁の間に「空気の層」をつくることで、ベース帯域の吸音を最大化することができます。

次に「初期反射点」ですが、これはスピーカーから出た音が壁に当たり、あなたの耳に入ってくるまでの最初の反射点のことです。

初期反射点は左右の壁と天井にありますが、これは初期反射点が計算できるサイトを使ってもいいですし、この動画のように鏡を使って初期反射点を特定するのも良いでしょう。

Acoustic Panels – What & Where

最後にディフューザーを後方の壁に貼って、定在波を分散させます。

特にリスニングポジションから後壁までの距離が短い時は、ディフューザーを設置することで自然な空間を作ってくれるでしょう。

参考: The Ultimate Guide to Acoustic Treatment for Home Studios

5. アイソレーター・モニタースタンドを使う

スピーカーを適当な机や台の上に置いてしまうと、定位がボヤけたり、共振によって不要なノイズが発生したりします。

そういった共振の影響を少なくするため、スピーカースタンドを使ったり、スピーカーの下にこのようなアイソレーションツールを敷くと、音質が格段に向上します。

スタンドを使えばスピーカーの移動も簡単にできるため、適切なルームアコースティックを得るのに最適です。

良いスタンドは振動の影響を受けないように重く設計されているので、どうしても値段が高くなってしまいますが、最初は数千円クラスの安いものを試してみても良いでしょう。

十分なアイソレーション効果が得られますよ。

参考: モニタースタンド一覧 – サウンドハウス

モニタースピーカーを正しく設置するための5つのアイデア | まとめ

ルームアコースティックの調整は、Arc2やSonarworksといった補正ソフトでも行えますが、まずはこういったソフトなしでバランスのとれた周波数応答を得ることが大切です。

音がぶつかってキャンセルしてしまうポイントは、いくらEQを使っても補正することはできませんからね。

お金のかからないものからいろいろ試してみて、少しづつルームアコースティックを整えていきましょう。

この記事が、みなさんの参考になれば嬉しいです🙂

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この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?