“ピンクノイズミキシング”は馬鹿げたアイデアなのか?

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みなさんは、ピンクノイズを使ったミキシングのテクニックをご存知でしょうか?

これは、低域から高域にかけて、一定のエネルギーを持つ「ピンクノイズ」と呼ばれるノイズを使って、ミキシングの質を向上させる方法のこと。

ちなみに、ピンクノイズはこんな音です。(音量注意)

ピンクノイズ(Pink noise)はノイズ(雑音)の一種で、音のエネルギーと周波数が反比例するノイズのことです。具体的には「ザー」という強い雨や滝の音などと表現されることが多いです。

ピンクノイズとはどんな音?ホワイトノイズとの違いとリラックス効c果 – Always Listening

滝の音、小川のせせらぎに近いような音なので、リラックス効果もあります。

よく「ホワイトノイズ」と比較されますが、ピンクノイズは周波数が10倍になるごとに10dB減衰する、右下さがりのグラフになるのに対し、ホワイトノイズは全周波数にかけて均等に音のエネルギーが広がっているものを指します。(右図)

https://soundqualitylab.com/test_tones/02_noise/

でも、これは「パワースペクトル」と呼ばれる解析方法で導き出したもので、人間の聴感に近づけるためにオクターブフィルターをかけたものは、左図の「オクターブスペクトル」になります。

ピンクノイズは、聴感上、全ての帯域が均等に聞こえるので、スピーカーの測定などに使われたりもしています。

なんだか、難しく感じるかもしれませんが、要は「ピンクノイズは全周波数でバランスのとれたノイズ」だということです。

今回のテクニックで使うのは、こちらのピンクノイズの方です。

ピンクノイズミキシングの実際

さて、用意するのはピンクノイズジェネーター、もしくはピンクノイズのオーディオファイルのみ。

DAWによっては、ジェネレーターが内蔵されていますが、なければオーディオファイルをネットで拾ってきましょう。

実際の手順は、こんな感じです。

  1. DAWにピンクノイズをセットし、ボリュームを-14dBにする
  2. 全てのトラックのフェーダーを下げる
  3. 1つづつフェーダーを上げていき、ピンクノイズの間からわずかに音が聞こえるくらいまで上げる
  4. ボリュームを上げたトラックはミュートし、他のトラックも同じように調整していく
  5. 全て終わったらピンクノイズを切って、全体を再生してみる

これで終わりです。

こちらの動画で、実際のやり方も確認してみてください。

本当に各トラックを、聞こえるか聞こえないか、くらいのボリュームで留めていますね。

最後の方で、ミキシングの結果を確認できますが、一度も全体のバランスを聞くことなく、程よいバランスのミックスになっていることがわかります。

ちなみに、ここからEQやコンプをかけていくので、これで完成ではありません。

でも、スタートポイントとしては、素晴らしいミックスでしょう。

ピンクノイズミキシングは馬鹿げている?

実は、ピンクノイズミキシングには、賛否両論あります。

YouTubeチャンネル「Mixbus Tv」で有名なモヒカンの彼は、こんなことを言っていますね。

視聴者がピンクノイズを使ったミキシングについて尋ねたところ、「すべての楽器が同じ音量で鳴っているわけがない。馬鹿げたアイデアだ。」と言っています。

確かに、いろんな楽器やボーカルがある中で、すべての要素を同じボリュームに合わせるのは、一見バカげたアイデアに聞こえますね。

でも、YouTubeの動画をいくつかみていると、BeforeとAfterでは、実際にミックスの質が向上しているものも多く見受けられます。

こういうのは、実際にやってみないとわかりません。

気になったので、自分でも試してみることにしました。

実際に効果はあったのか?

手持ちで試せそうな音楽がこれしかなかったのですが、実際に試してみました。

ビートのみなので、わずかな違いですが、聞いてみてどうでしょうか?

ピンクノイズミキシング前
ピンクノイズミキシング後

個人的には、ピンクノイズでミキシングする前の音楽は、低音が強めで、打楽器が目立ちすぎている箇所もあります。

一方、ピンクノイズを使ったミキシングをすると、全体のバランスが取れて、奥行きがでてきた気がしますね。

「耳が疲れている時は、ピンクノイズがガイドになるので、ミックスのバランスがとりやすくなる」という人もいますし、「自分の耳でミックスした方が確実に良いミックスになる」という人の意見も見かけます。

もちろん、アタック音が強い音と弱い音でもバランスの取り方は異なり、超低域のベースの持続音など、ピンクノイズが鳴っている状態では聞き取りにくい音もあります。

ただ、実際に「ピンクノイズミキシング」を試してみて感じたのは、ミキシングのスタートポイントとしてはとても役に立つし、ミックスの途中でもいいのでピンクノイズを被せてみると、ボリュームが大きすぎるトラックがよくわかり、ミキシングがしやすかった、ということ。

ミキシングに悩んだときは、このテクニックを使ってみてもいいかな、と思いました。

まとめ

人がとやかく言っているのを鵜呑みにする前に、自分で試してみると、わかることがたくさんありますね。

今回のテクニックに賛否両論あることは知っていましたが、少なくとも僕の環境では効果がありました。

ピンクノイズでのミキシングは、あくまでラフミックスでしかないので、ここからEQやコンプで調整していくことになります。「ミキシングをどこから始めればいいのか検討がつかない」という人にはとても便利なテクニックですし、それなりにミキシングをしてきている人にも役立つ方法だと思います。

みなさんの中で、ミキシングに悩みを抱えている方は、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

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