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Sonnoxの最新EQプラグイン「Claro」を試してみた

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現代的な美しいインターフェースを備えた、Sonnoxの最新EQプラグイン「Claro」をご紹介します。

Claroは革新的な機能こそ無いものの、使いやすさと機能性が最大限に追求された、初心者から上級者まで使える高機能EQプラグインです。

Claro – Sonnox

その洗練されたデザインから定番EQプラグインFabfilter「Pro-Q」を連想させますが、実際に使ってみるとできることは似ているものの、Claroのほうが初心者にも扱いやすい印象でした。

今回は実際のミキシング作業を通してClaroを使い倒してみた感想とともに、以下のようなことにも触れていきます。

  • Claroの特徴や使い方
  • Claroを使うメリット
  • Fabfilter Pro-Qなどの現代的なEQとの違い
  • Claroに足りない機能

今までのEQプラグインとは何が違うのか?

また、いま使っているEQから買い換える価値はあるのでしょうか?

まずは、Claroの特徴と使い方についてみていきましょう。

Sonnox「Claro」の特徴的な3つの機能

Claroは、以下の3つの機能がひとまとめになった、多機能EQプラグインです。

  1. Produce (3バンドEQ)
  2. Tweak (一般的なEQ)
  3. Mix (トラック同士の「かぶり」を視覚化する)

ユーザーは「Produce」「Tweak」「Mix」という3つの画面を移動しながら音を調整していくのですが、ここがClaroにしかない大きな特徴となっています。

これらの機能を順番にみていきましょう。

1. Produce – 音を大まかに整える

まずは「Produce」画面で、3バンドのEQを使って音を調整していきます。

ここではEQカーブやQが表示されず、「周波数を指定する」「ブーストorカットする」というシンプルな操作しか行うことができません。

EQカーブが見えないので、自分の耳だけを頼りに全体のバランスを調整する必要がありますが、ミキシング時にありがちな「視覚情報に引っ張られて正しいEQができない」という状況を避けることができます。

「ハイパス」「ローパス」「左右の広がりの調整」を行うこともできますが、あくまで簡易的なものなので、まずこのセクションで全体のバランスを整えてClaroでのEQ作業がスタートします。

2. Tweak – 細かい音の調整をする

「Tweak」画面は、定番EQプラグインFabfilter「Pro-Q」とかなり似ていて、ここでEQを使って細かい調整をすることができます。

「EQカーブやフィルタータイプの選択」「ミッド/サイドEQ」に対応しているのはもちろん、オプションキーやコマンドキーとあわせてマウス操作することで、「特定の帯域のみをリスニング」「Q幅を変更する」といったことが直感的にできるよう設計されています。

ここでは特にClaroにしかできない特別な機能はなく、むしろダイナミックEQがついていない分、Pro-Qより機能が少ないといえるでしょう。

3. Mix – トラック同士のかぶりを調整する

3つの機能のなかでも、この「Mix」画面がClaroの一番の特徴といえるかもしれません。

各トラックにClaroを挿せば、中央のアナライザーによってトラック同士の帯域のかぶりを簡単に把握できます。

アナライザーで黄色くなっている部分は音が混雑している場所になるので、ここをうまく削ればスッキリしたミックスに仕上げることができるでしょう。

「Invert EQ」は片方のトラックで特定の帯域をカットすると、もう片方の同じ帯域がブーストされるという機能です。

帯域のかぶりを視覚的に見る機能は、すでにいろんなEQプラグインについているのですが、Claroほど見やすく操作しやすい製品はなかなか無いんじゃないかと思います。

このあたりが、初心者にも扱いやすいポイントでもありますね。

Sonnox「Claro」を使うメリット

ここまで紹介したように、Claroは直感的に音作りができる「Produce」機能、トラック間の音のかぶりを調整できる「Mix」機能が他のプラグインとは大きく違う部分です。

これらの機能を組み合わせて使うことで、初心者でも細かいミキシングの追い込みが可能になります。

そして上記の機能に加えて、Claroには「オートゲイン」というラウドネス自動調整機能がついています。

これはiZotope製のEQなどにも付いている機能ですが、例えばEQで特定の帯域をブーストするとしましょう。

すると、トラックの音量がどうしても上がってしまうのですが、オートゲインがオンになっているとEQ前とEQ後のラウドネスを自動調整してくれるので、「音量が上がっただけで音質が良くなったと感じてしまう、初心者にありがちな勘違い」を防ぐことができます。

オートゲイン機能があると純粋にEQのみによる変化がわかるので、これは音楽を作り慣れている人にとってもメリットがありますね。

Sonnox「Claro」の惜しいポイント

Claroを使ってみて「惜しいな〜」と感じたのは、「ダイナミックEQが付いていない」ことです。

ダイナミックEQは「EQ」と「コンプ」を組み合わせたようなもので、「特定の帯域にEQをかけると、楽曲の音量変化に合わせてEQのかかり具合が変化する」機能のこと。

これは使わない人も多いかもしれませんが、僕はFabfilter「Pro-Q」のダイナミックEQをかなり使うので、正直ここはがっかりしましたね。

参考: 【保存版】EQ(イコライザー)を理解する – スタジオ翁

Fabfilter「Pro-Q」との比較。買い換える価値はある?

普段からFabfilter「Pro-Q」を愛用している僕が、今回ミキシングでClareを使いこんでみたところ・・・

Fabfilter「Pro-Q」を使っている人は、Clareに買い換える必要はない。

という結論になりました。

ダイナミックEQがないのはマイナスポイントだし、正直トラック同士の音のかぶりを調整する「MIX」機能は、ある程度ミキシングに慣れている人だと正直あまり使わないんじゃないかな?とも感じました。

あと、EQ画面上部にピアノロールが表示されるのですが、このピアノロール上でEQポイントを移動させられないのも地味に不便なところ。

例えば「キックの『ペチッ』というアタック音を目立たせたいな」という場面で、曲のキーが「A」なら「A6(1760Hz)」や「A7(3520Hz」をEQでブーストするという手法がありますね。

これがPro-Qなら、ピアノロール上でEQポイントを移動させられるので、特定の周波数を簡単に調整することができます。

こういう細かい部分まで配慮されているのが、Pro-Qなどの高品質なEQのメリットといえます。

参考: Fabfilter「Pro-Q3」が最強のEQプラグインである5つの理由 – スタジオ翁

Sonnoxの最新EQプラグイン「Claro」を試してみた | まとめ

最終的には、Fabfilter「Pro-Q」をおすすめする記事になってしまいましたが・・・

Claroはこの値段で機能も多く、初心者にも扱いやすいというのがポイントですね。

でも今後長く使えるEQプラグインが欲しいなら、ちょっと高くても「Pro-Q」や「EQuilibrium」などを購入する方がいいかもしれません。

とはいえ、ClaroのEQはなめらかで使い心地はかなり良かったです。

「Produce」や「Mix」などの機能に惹かれた人なら、買うのもアリなんじゃないかなと思いました。

Sonnox「Claro」- Plugin Boutique

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この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?