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ヘッドフォンを使って上手くミックスするための5つのコツ

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Issey
作曲家、音響エンジニア
23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?

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日本の住環境の場合、ヘッドフォンをメインにして制作やミキシングをしているという人は多いのではないでしょうか?

「マンションなので大きな音が出せない」「いつも夜中に作業するので、ヘッドフォンで制作することが多い」という人も、きっとたくさんいることでしょう。

ただ、ヘッドフォンだと細かい音まで聴こえる反面、定位がわかりにくかったり、全体のミックスがしづらかったりすることもあるんですよね・・・

今日はそんな人のために、ヘッドフォンでうまく制作するためのコツや、ヘッドフォンミキシングのメリット・デメリットについてご紹介したいと思います。

もっと音のバランスを整えたい人や、ヘッドフォンを使うとなかなかバランスの良いミックスができないという人は、ぜひ参考にしてみてください🙂

ヘッドフォンで制作するメリットとデメリット

まずはヘッドフォンを使って制作する「メリット」「デメリット」を簡単におさらいしておきましょう。

メリット

ヘッドフォンで制作するメリットは、主に2つあります。

部屋鳴りに影響されない

いくら良いスピーカーを買っても、「部屋鳴り」が調整されていなければ、スピーカーの持ち味を100%発揮することはできません。

部屋鳴りが整っていないと、音が反射して、ある周波数が消えたり増幅されたりするのですが、吸音材や調音材で反射を整えるとなると、それなりの労力とお金がかかります。

ところがヘッドフォンなら耳との距離がほとんどないので、まわりの環境に左右されることなくモニターすることができます。

なので、ミキシングやマスタリング段階で不要な帯域をEQでカットしたり、繊細な音の調整をする場合は、ヘッドフォンが大いに役立つでしょう。

場所に依存しない

ヘッドフォンなら家でも外でも関係なく、常に同じモニター環境が得られます。

マスタリングエンジニアの中には、特定のスタジオを持たずホテルの一室でマスタリングを行うエンジニアもいるくらいなので、そのヘッドフォンの特性を完璧に理解しているなら、スピーカーはほとんど必要ありません。

デメリット

ヘッドフォンは、スピーカーのようにリスニング環境を整える必要がない反面、デメリットもいくつかあります。

耳が疲れる

ヘッドフォンで作業をしていると、音が鼓膜のすぐ近くで鳴っているため、明らかにスピーカーで作業する時よりも耳が疲れやすくなります。

特に低音は耳に大きなダメージを与えるので、休憩をとったり音量を上げすぎないように注意する必要があります。

あと、イヤーパッドが合わないことで、耳が痛くなったり頭痛がしたりする場合もありますが、その場合は厚めのイヤーパッドを購入することで解決できるでしょう。

ステレオ感がわかりにくい

「クロストーク」と呼ばれる現象があるのですが、これは例えば、スピーカーで音楽を聴く時、それぞれの耳に両方のチャンネルからの音が届くことを言います。

「当たり前じゃん!」と思うかもしれませんが、ヘッドフォンだと左チャンネルの音は左耳、右チャンネルの音は右耳からしか聞こえないので、ヘッドフォンのみで調整するとスピーカーで出した時、音に違和感を感じてしまう場合があるんですよね。

これは、スピーカーのみで音を調整した場合も同じです。

なるべく、ヘッドフォンとスピーカーの両方を使ってミックスバランスを確認することで、この問題を避けることができます。

ヘッドフォンを使って上手くミックスするための5つのコツ

さて、一通りヘッドフォンの特徴を確認したところで、ここからヘッドフォンを使ってミックスするためのコツを全部で5つ紹介していきましょう。

1. 自分のヘッドフォンの特性を理解する

まずは自分のヘッドフォンの特性を理解するために、いろんな音楽を聴いてみましょう。

その時、「低音が全体的に弱いな…」と感じるならミキシング時に低音を上げすぎないように注意する必要がありますし、歯擦音(サ行の音)が目立つようなら高域を下げすぎないよう気をつけないといけません。

慣れないヘッドフォンで作業する時は、「Metric AB」などのリファレンスツールを使うことで、感覚に頼らず、より正確なミキシングを行うことができます。

2. モノでミックスする

ヘッドフォンを使うと位相によるキャンセリングが把握しにくいのですが、これはモノラルでミックスすることによって解決できます。

こちらの記事にも書いていますが、「Unity」や「Gain」などDAW付属のプラグインを使って、モノラルでミックスを聴いてみましょう。

参考: ミックスの質が上がる!DAWのマスターに必ず入れるべきたった1つのプラグイン – スタジオ翁

モノラルで聴いた時に特定の音が消えるようなら、位相によるキャンセリングが発生しているので、シンセやエフェクターなどをうまく調整する必要があります。

3. ヘッドフォンを補正する

「Reference 4」などのヘッドフォン補正ツールを使えば、ヘッドフォンのクセを取り除いてフラットな出音にすることができます。

参考: Sonarworks Reference 4でスピーカーの潜在能力を100%引き出す方法 – スタジオ翁

これはもともとスピーカー用の補正ツールですが、ヘッドフォンEditionだと1万円以下で購入できるので、「手持ちのヘッドフォンのクセが強すぎる」と感じている人は、こういったツールで解決するのも1つの手ですね。

4. スタジオ定番モニターを使う

ヘッドフォンでのミックスがうまくできない原因は、あなたの持っているヘッドフォンのクセが強すぎるからかもしれません。

こういった場合、日本のスタジオで多く使われているモニターヘッドフォンSONY「MDR-CD900ST」など、定番と呼ばれる機種を使ってみるのもおすすめです。

安価なヘッドフォンなので解像度は高くないですが、周波数特性がフラットに作られているので、これでミキシングを行うとかなりバランスがとりやすくなりますよ。

5. 音量を上げすぎない

ヘッドフォンに限りませんが、音量を上げすぎるとミックスバランスがとりにくくなります。

これは人間の耳の特性によるものなので、ミキシングの際は適度な音量で聴くよう心がけ、たまに小さい音量でもチェックしてみることをおすすめします。

参考: DTMに最適なリスニング音量について調べてみた – スタジオ翁

小さい音量で聴くことで、コンプ感なども見えやすくなりますよ。

ヘッドフォンを使って上手くミックスするための5つのコツ | まとめ

ヘッドフォンだけでもある程度のミキシングはできるようになりますが、やはり一番良いのはスピーカーとヘッドフォンのどちらも使ってミックスすることです。

最終的には、「どんな再生機器でも自分のイメージしている音がしっかり鳴る」のがゴールなので、ヘッドフォンしか使えないという人は、カーステレオやイヤホンなど、なるべくいろんなデバイスで再生してみて出音を確認するようにしましょう。

今日の記事が、みなさんのお役に立てば嬉しいです🙂

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この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?