総合評価:
iPadとの連携やSpotifyから直接リファレンスできる機能など、今までにない便利な機能が満載のリファレンスツール。
メリット
デメリット
- Spotifyなどから直接リファレンスできる
- iPhoneやiPadとの連携が便利
- SoundIDなどの補正ツールと併用可能
- 位相やステレオイメージのチェックはできない
僕は普段、リファレンスツールとしてPlugin Allianceの「ADPTR AUDIO Metric AB」を使っているのですが、Sonnoxから販売されているListenHubも、持っていて損はない便利なツールです。
この「ListenHub」はiPhoneやiPadの専用アプリで操作できたり、Spotifyなどのストリーミングサービスから直接リファレンスできたりと、今までのリファレンスツールになかった便利な機能が含まれています。
- 自分の音楽が好きなアーティストの音になかなか近づかない…
- 毎回リファレンスのためだけに曲を買うのがもったいない
こんな悩みを抱えている人に、ぜひチェックしてみて欲しいです。
MetricABなどの他のリファレンスツールと違い、ListenHubはプラグインではなくシステムワイドで動くソフトなので、プラグインにはできないような便利な機能があります。
個人的には、Tidalから直接リファレンスできる機能が画期的だと感じていますね。
それでは早速、詳しい中身を見ていきましょう。
Sonnox「ListenHub」の魅力
ListenHubの魅力は、以下の4つにまとめられます。
- SpotifyやApple Musicの曲ををリファレンスとして使える
- iPhoneやiPadの専用ソフトで操作できる
- SoundIDなどの補正ツールもあわせて使える
- 帯域別にリスニングができる
1~3は、MetricABにもない便利な機能です。
なのでこれらの機能使えるリファレンスツールが欲しい!ということなら、ListenHubが最有力候補になるでしょう。
1. SpotifyやApple Musicの曲ををリファレンスとして使える
まず、なんといってもListenHubの一番の魅力は、Spotifyなどのストリーミングサービスから直接リファレンスできる機能です。
これはSpotifyに限らず、Apple Music, Amazon Music, Tidal, Line Music, AWA…などすべてのストリーミングサービスの音楽をリファレンスとして活用することができます。
ミキシングやマスタリング段階で、市販の曲を参考にしてミックスバランスを整える人は多いと思いますが、たまに自分が普段やらないジャンルのミックスをする時、「リファレンスになりそうな曲を持っていない…」ということがあると思います。
そんなとき、わざわざ1曲ミックスするためだけに曲を買うのは面倒ですよね。
ListenHubは、Spotifyなどの曲を簡単にリファレンスとして使えるので、わざわざリファレンスのためだけに新たに曲を購入する必要がありません。
ちなみに、YouTubeやSoundCloudの音楽もリファレンスとして使えます。
2. iPhoneやiPadの専用ソフトで操作できる
iPhoneやiPadの専用ソフトもよく出来ていて、シンプルで扱いやすいです。

iPadを有線、またはWiFiで繋いでいれば、わざわざパソコンでスペアナやラウドネスメーターを開く手間やスペースが省けます。
そして手元で瞬時にモノラルに変えたりDimボタンで音量を下げたり、リファレンスと作業中の楽曲を切り替えたりといったことができるのもかなり便利。
僕は最近、ノートパソコンの小さい画面で作業することが多いので、iPadがうまく活用できるのは嬉しいですね。
3. SoundIDなどの補正ツールもあわせて使える
ListenHubの出力に、SoundID(Sonarworks)などの補正ツールが使えるのも便利だなと感じました。
参考: Sonarworksでスピーカーの潜在能力を100%引き出す方法 – スタジオ翁
本来、SoundIDなどの補正ツールを使うときは、ミックスの時だけ最終のマスターバスにプラグインを入れることになりますが、これだと、書き出しの時にSoundIDを切り忘れてしまうことがあるのでとても不便なのです・・・
ところがListenHubのソフト内で、SoundIDの補正が適用できると、書き出し時に補正ソフトを切り忘れることもなくなります。
4. 帯域別にリスニングができる
ListenHubは単純に2つの曲を比較するだけではなく、帯域ごとに分けてリスニングすることができます。

このように特定の帯域をソロにしてリファレンスと比較した方が細かい部分まで調整しやすいので、こういった機能があるのはとても助かりますね。
参考: プロ並みのミックスバランスに仕上げる「帯域別ミキシング」とは? – スタジオ翁
5. ラウドネスを自動調整してくれる

リファレンス曲との比較において大切なのは、それぞれの曲のラウドネスを合わせることです。
そうしないと、音が大きい方が、音が良いと錯覚してしまいますからね。
ソフト内左側の「Match Input Loudness」を使うことで、ListenHubが曲のラウドネスを自動で揃えてくれるので、わざわざラウドネスメーターを見ながら手動で音量やラウドネスを合わせる、といった手間が省けてとても便利。
A/B比較ツールとして、なくてはならない機能です。
Sonnox「ListenHub」の使い方
ListenHubの簡単な使い方を紹介しておきます。
まず、パソコンのオーディオ出力をListenHubに設定します。(Macなら、システム設定→サウンドから設定します)
次にiPhoneやiPadのソフトを立ち上げると、左側に3つのインプットが表示されますが、これは
- System → Out 1,2
- Main → Out 3,4
- Reference → Out5,6
というふうに最初から割り当てられています。
僕も、最初はここがわからず音が出なかったのですが、これさえ理解しておけば簡単に使うことができるでしょう。
「System」には、先ほど設定したパソコンのオーディオ出力が割り当てられているので、ここからYouTubeの音やSpotifyの音を出すことになります。
TIdalなど特定のストリーミングサービスは、出力先が指定できるので、出力設定をListenHubにしておく必要があります。
次に、DAWの出力を、ListenHubのOut 3,4に設定します。

すると、ListenHubの「Main」からDAWの音が出るようになります。
リファレンスソングを持っているならDAWに音楽をインポートしてそのアウトをOut 5,6に設定すれば、ListenHubの「Reference」から音が出るようになります。
最初は設定がややこいしかもしれませんが、インプットチャンネルの仕組みを理解できれば簡単に設定できます。
Sonnox「ListenHub」の惜しいところ
ListenHubはリファレンスツールとしてかなり完成度の高いソフトですが、あえて欠点を挙げるとすればこのあたりでしょうね。
- メータリングの機能が少ない
- 細かい部分までリスニング設定ができない
定番オーディオ解析ソフト「MetricAB」だと、各トラックの位相やステレオイメージなどまでリファレンスと比較できるのですが、ListenHubはもっとシンプルで、ダイナミクス・ラウドネス・周波数特性の比較のみとなります。
帯域ごとのリスニングはできますが、どの周波数で帯域を分けるかまで細かく決めることもできません。
とはいえ、最低限の機能は揃っているので、そこまでのデメリットにはならないですし、ソロにする帯域が指定できなくても別に構わないという人は問題ないでしょう。
ListenHubはAUプラグインを入れることができるので、例えば「どうしても50Hz~250Hzをソロで聴きたい!」という使い方がしたければ、ListenHubの中にMetricABを入れる、というのもアリかもしれません。
まとめ

実際にやってみるとわかりますが、手もとのiPhoneやiPadを使って、いま瞬時に作っている曲とリファレンス曲と切り替えられるのは、かなり便利です。
自分の持っているwavやmp3データのみを使って比較するなら、Plugin Allianceから出ているMetricABでも十分ですが、SpotifyやApple Musicの音源とも比較したいのであれば、ListenHubの方が良いと思います。
もちろん、ストリーミングサービスだけでなく、パソコンに入っている手持ちの音源と比較する際にも、ラウドネス補正や瞬時にリファレンス曲と切り替えられる機能を持つ、ListenHubが大活躍してくれるでしょう。
ありそうでなかったA/B比較の画期的なツールListenHub、おすすめします。