今回の記事では、マスタリングやミックスの最終段で使えるような高品質なプラグインを集めました。
マスタリングに使うプラグインは、過度な色付けがなく自然なグルー感や味付けが得られるもの、細かい部分まで微調整ができるものが望ましいです。
ただ、高品質なプラグインは山ほどあって「どれを選べば良いのかわからない」という人も多いと思うので、今回は僕が実際に使ってみて「これは!」と感じたものを中心に紹介していきます。
「イコライザー系」「ダイナミクス系」「サチュレーション系」「バンドル系」「メーター系」の5つにわけて、合計15種類のおすすめマスタリングプラグインを紹介していきます。
イコライザー系
マスタリングに使われるイコライザーは、主に「ブーストして音色を整えたり色付けをするもの」と「不要な帯域をカットするもの」の2つにわかれます。
シチュエーションに応じて、EQを使い分けてみると良いでしょう。
1. Fabfilter「Pro-Q」
Pro-Qはこのブログでさんざん紹介している、とても便利で扱いやすいEQです。
参考: Fabfilter「Pro-Q3」が最強のEQプラグインである5つの理由 – スタジオ翁
操作性がとにかく抜群で、主にカット方向のイコライジングで活躍します。
普段使いのEQとしても優秀なのですが、位相への影響を極限まで少なくする「リニアフェイズモード」や「ナチュラルフェイズモード」を備えているので、マスタリングにも使えます。
最近、高性能なEQプラグインがたくさん出てきていますが、「使いやすさ」「CPU負荷」などをふまえた総合得点で見ると、やはりPro-Qはナンバーワンだと感じますね。
地味にサラウンド対応しているのも魅力的です。
2. Brainworx「bx_digital V3」
bx_digital V3は不要な帯域を特定し、レゾナンスを取り除くことに特化したプラグイン。
周波数ノブをクリックすると、瞬時にスウィープモードになるので、簡単に不要な周波数を見つけることができます。
ベース帯域をモノラルにできる「Mono-Maker」機能や、低域の雰囲気を直感的にコントロールできる「Bass Shift」も結構役に立ちます。
3. Manley「Massive Passive」
ブースト系のEQなら、このMassive Passiveがかなり優秀でおすすめです。
ミックスが破綻しにくく、欲しい帯域を自然にブーストできるので、いつもマスターバスで使っています。
4. Dangerous「Bax EQ」
Bax EQは「ハイカット・ローカット」と「ハイシェルフEQ・ローシェルフEQ」のシンプルなEQですが、先ほどのMassive Passive同様にミックスを破綻させることなく自然に低域と高域をブーストさせることができます。
ブーストしても全然「持ち上がった感」が出てこないのですが、ほんの少しブーストするだけで曲がイキイキしていきますよ。
5. Kush Audio「Blyss」
Blyssはコンプレッサー付きのマスターチャンネルEQです。
Kushの製品自体、かなりクセがあるので好みが分かれるかもしれませんが、サチュレーションの感じが好みなら使ってみる価値大。
ちなみに「Novatron」や「AR-1」も使いやすくて素敵です。
ダイナミクス系
ダイナミクス系のプラグインは、ミックス全体をまとめ上げるのに役立ちます。
「なんか楽器同士がバラバラに鳴ってる気がする…」と感じる時は、トータルコンプでまとまりを出してみましょう。
6. Elysia「Alpha Compressor」
Alpha Compressorは実機で100万円以上する超高額コンプレッサーです。
SSLのようなガッツのある音にするのではなく、マスターバスに挿して数dBのコンプレッションを行うことで自然なまとまりを出すことができます。
透明感のあるバスコンプを求める人におすすめですね。
7. McDSP「Royal Mu」
このプラグインを使うには「APB-16」というプロセッサーが必要になりますが、品質はそのへんのプラグインをはるかに凌駕する、高品質なコンプレッサープラグインです。
プラグインなのですが、USBを介して一度ハードウェアを通すことでアナログ感を付与することができる画期的な製品。
超高額ですが、ほんとプラグインとは比べ物にならないくらい自然なコンプ感が味わえます。
8. Fabfilter「Pro-MB」
Fabfilterの製品はどれも洗練されたインターフェースで扱いやすいですが、マルチバンドコンプであるPro-MBも例外ではありません。
iZotopeのOzoneにもマルチバンドコンプレッサーはついていますが、Ozoneが最大4バンドまでしか対応していないところ、Pro-MBは最大6バンドまで分割することができるので、より細かい調整が可能になります。
参考: マルチバンドコンプレッサーの使い方と実践 – スタジオ翁
バンドがリアルタイムで動いている様子がわかるので、視認性にも優れていて、とても使いやすいですね。
サチュレーション系
サチュレーションを使ってうまく倍音をコントロールすれば、ミックスの中で音に存在感を出したり、迫力のある音に仕上げることができます。
テープ系サチュレーションプラグインは、適度なコンプ感でミックスをまとめ上げるのにも役立ちます。
参考: ミキシングに「倍音」を生かすための3つの方法 – スタジオ翁
9. Sonnox「Oxford Inflator」
Inflatorは音に自然なサチュレーション感を与え、音圧を上げるために使います。
参考: Sonnox「Oxford Inflator」の特徴や使い方をざっくりまとめてみた – スタジオ翁
なるべく音を汚したくないけど、他のトラックに埋もれがちなトラックの存在感を出したい時などに重宝します。
10. Slate Digital「Virtual Tape Machine」
通称「VTM」と呼ばれる、アナログテープの質感を与えるためのプラグイン。
いろいろテープエミュレーションを試してみましたが、これが一番求めているサウンドに近かったので、Slate Digitalのサブスクプランで使用しています。
これを通すことで、簡単にデジタルっぽいシンセにアナログの質感を与えることができるので、かなりおすすめです。
・Slate Digital「Virtual Tape Machine」
11. Ampex「ATR-102 Mastering Tape Recorder」
こちらは、主にマスターバスで使用するためのテープエミュレーター。
少しのパラメーターの動きで音が結構変化してしまうので、使いこなすのに時間はかかりますが、うまく使えばアナログテープのまとまりとパンチを与えことができます。
・Ampex「ATR-102 Mastering Tape Recorder」
バンドル系
マスタリング用エフェクトが1つにまとまったバンドル系プラグインを使えば、いくつものプラグインを行き来することなく手軽にマスタリング作業を行うことができます。
12. iZotope「Ozone」
個人マスタリングの定番ソフトといえばiZotope「Ozone」ですね。
コンプレッサー、EQ、マキシマイザー、ステレオイメージャーといったマスタリングに必要な機能が1つのプラグインにまとめられており、マスタリングに使える「Low End Focus」「Tonal Balance Control」といった便利な機能も満載。
「自分の曲を自分でマスタリングしてみたい!」「でもあまりお金をかけたくない…」「どんなプラグインを購入したらいいのかわからない」ということなら、Ozoneを選んでおけば間違いないでしょう。
メータリング系
マスタリングでは細かい部分まで調整が求められるため、メータープラグインをうまく使って「目」でも音を把握できるようになると良いでしょう。
メーター系のプラグインはなくてもマスタリングできますが、あるとマスタリングの質がグッと上がりますよ。
13. ADPTR Audio「Metric AB」
マスタリングやミキシングの後半に必ず使用するのが、リファレンスプラグイン「Metric AB」です。
いくつかのリファレンストラックをMetric ABに読み込むことで、現在つくっている曲との比較を簡単に行うことができます。
周波数特性、ステレオイメージ、音圧、位相などを瞬時に比較できるので、とても便利です。
長い時間、自分の耳だけでミックスしていると聴覚がマヒしてくることがあるので、よほどのエンジニアでも無い限りリファレンストラックは必須だと感じますね。
14. iZotope「Insight」
曲を分析するためのアナライザーで一番使いやすいと感じているのが、iZotopeの「Insight」。
スペクトラムアナライザーなどの表示を自分好みに細かく調整できるので、グラフが見やすくとても使い心地が良いですね。
便利ですがアナライザーにしては少々お値段が高いので、スペクトラムアナライザーだけ導入したいということであれば、次に紹介する「SPAN」がおすすめです。
15. Voxengo「SPAN」
無料でここまでできるのか!と思ってしまうほど便利なスペクトラムアナライザー「SPAN」は、いろんなサイトでも紹介されているので使っている人も多いかもしれませんね。
初期状態のままでも使いやすいのですが、音の感度や周波数の細かさなどの設定を追い込むことで、さらに使いやすくなります。
音楽は全帯域が均等に出ていれば良いというわけではありませんが、曲作りをする上で「どの帯域が出過ぎていて、どの帯域が足りていないのか」を把握することは重要だと思います。
まとめ
「マスタリングエンジニア」という職種があることからも分かるように、マスタリングには熟練の技術や耳が必要ですが、最近は高品質なプラグインがたくさん登場しているので、これらを駆使すれば個人でもかなりいいところまで追い込むことができます。
DAW付属のプラグインから抜け出して、マスタリングの品質を一歩先に進めたい人は、ぜひ今日の記事を参考にしてみてください。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。