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Slate+Ash「CYCLES」| グラニュラーシンセシスの新定番ソフト

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グラニュラーシンセサイザーの中でもっとも使いやすいのは、間違いなくSound Guruの「The Mangle」だと思うのですが、ここは数年前からサポートを停止していて、ついに最近ホームページすら消滅してしまいました・・・

参考: Sound Guru「The Mangle」| 圧倒的なコスパのグラニュラーシンセ – スタジオ翁

一応、インターネットのアーカイブがたどれる「Wayback Machine」を使えばデモバージョンがダウンロードできるので問題ないかと思いきや、M1 Macという今の僕の環境には対応しておらず使えませんでした。(起動しようとするとDAW自体がフリーズしてしまいます)

これがないと生きていけないくらい重宝していたプラグインなので、なんとか代わりの製品はないかと調べていたのですが、結局まわり回って、前から持っていたSlate+Ashの「CYCLES」が使いやすくて良いかなとなりました。(機能的にはThe Mangleよりも豊富です)

ちなみにこの機会にいろんなグラニュラーシンセを触ってみたのですが、最後まで候補に残ったのはSlate+Ash「CYCLES」とMax for Liveの「Granulator II」でした。

Granulator IIもなかなか使いやすいプラグインなので、「CYCLESは高くて買えない!」って人はこちらを極めるのも良いかもしれません。(Cyclesは円安の影響もあってか、4万円というアホみたいな値段になっているので)

今日はせっかくなので、この現代的なグラニュラーシンセ「CYCLES」を深掘りしてみたいと思います。

Cycles – Slate+Ash

Slate+Ash「CYCLES」の魅力

僕はもともとOlafur Arnaldsが使っていたことで興味を持ち、数年前にこのCYCLESを購入しました。

動画ではサンプルをグラニュラーエンジンに読み込んで、パーカッシブな音を作るのに使っていますね。

CYCLESの魅力はなんといっても、直感的に操作できるインターフェースにあります。

これら3つの画面を行き来して音を加工していくのですが、サンプルをドラッグ&ドロップでつっこんでパラメーターをササッと操作するだけでも、1つの音から幅広いサウンドを生成することができます。

今のソフトシンセはいろんなことが出来すぎて、マニュアルを見ないと扱えないような多機能なものも多いですが、CYCLESはパッと見ただけでパラメーターの意味が理解しやすく、初見でもわりと簡単に扱うことができます。

こういったグラニュラーシンセでよく使うパラメーターが1箇所に固まっていて、フェーダー的なものを上下するだけで音が加工できるのはとても便利。

  • パンの自動化
  • タイミングやポジションのランダム化
  • リバースエフェクト
  • スケールの設定
  • エンベロープシェイプの調整

もっと細かいコントロールがしたければ、XYパッドやシーケンサーの画面で細かく音を追い込むことも可能です。

そしてCYCLESは「グラニュラーエンジン」だけでなく「ループエンジン」という反復する有機的なリズムを作るのに適した機能も搭載しています。

ドラムやシンセといったシーケンス要素を作るのに役立ちそうですが、僕はほとんどグラニュラーエンジンしか使うことが無いので、正直どのくらい便利なのかよく分かってません・・・

でも公式の動画を見てみると、なかなかいいシンセフレーズが作れそうですね。

いつか色々試してみたいですが、とりあえず今日はグラニュラーエンジンに焦点を当てていくことにします。

グラニュラーエンジンの機能

CYCLESにはマニュアルがないので、使い方はホームページや公式YouTubeの動画をみて学ぶ必要があります。

Cycles – Slate+Ash

プリセットから演奏するだけでもかなりクオリティの高い音が出るのですが、おすすめなのは自分で録ったサンプルをぶち込んで、いろいろ加工してみることです。

ちなみにマイクで録音しなくても、ソフトシンセなどで作ったオーディオファイルを入れるだけでも面白いですよ。

そしてパラメーターを調整しながら好みの音を作っていくわけですが、CYCLESにはインスピレーションを引き起こすための100個のプリセットが内蔵されています。

そのままパラメーターを操作しても良いのですが、途中でこういったプリセットを次々に切り替えていくことで、新たなインスピレーションを得ることもできるでしょう。

作ったサウンドはライブラリに保存して、いつでも好きな時にアクセスできるようになります。

ライブパフォーマンス用にXYパッドを設定できる

CYCLES内のXYパッドを使って音の粒子をなめらかに変化させることができるのですが、ROLI「BLOCKS」などのデバイスを使えばこの機能をハードウェアで操作できるので、ライブパフォーマンスに役出てることも可能です。

ライブだけでなく、制作にこういった機能を使っても面白いかもしれませんね。

まとめ

実は、前にもSlate+Ashの製品について買いたことがあるのですが、ここの製品は本当にプリセットの音がどれも素晴らしいですね。

参考: Slate+Ash「LANDFORMS」| ブリストルの注目メーカーが放つクリエイティブなオーケストラ音源 – スタジオ翁

今日は自分で作ったサンプルを読み込む方法をおすすめしましたが、Slate+Ashはアナログシンセやモジュラーなどを使って大量にサンプリングを行なったものがプリセットとして内蔵されているので、プリセットをササッとブラウズするだけでもCYCLESの魅力を十分に堪能できるでしょう。

唯一のデメリットは、マニュアルがないことでしょうか。

CYCLESは直感的で使いやすいですが意外と隠れ機能みたいなものがいくつかあるので、使いこなそうとすると少し勉強が必要です。

細かい使い方に関してはYouTubeでも紹介されているので、「CYCLESを完璧に使いこなしたい!」という人は動画の方を参考にしてください。

Slate+Ash – YouTube

値段が高いので買うのにかなり躊躇するかもしれませんが(正直4万円は高すぎる…)、音も良くて直感的に使えるとてもおもしろいグラニュラーシンセサイザーなので、気になった人はぜひ試してみてみてください。

Cycles – Slate+Ash

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この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?