今日は、シンセサイザーの基本的な仕組みについて解説していきます。
自分でイチから音作りをしてみたいという人はもちろん、「普段はプリセットしか使わない」という人でも、基本的な仕組みや使い方を覚えておけば役に立つこと間違いなしですよ。
ぶっちゃけ僕も音楽制作を始めた頃は、「シンセでの音作りって難しそうだし時間もかかりそうだな」とプリセットばかり使って作曲していましたが、自分の欲しい音って意外とプリセットから見つけるの大変じゃないですか?
この記事を読めば、プリセットを加工して自分の欲しい音に近づけたり、シンセを楽曲に馴染ませるためのちょっとした編集ができるようになったりします。
中級・上級者向けの内容ではありませんがシンセの基礎的な知識をまとめたので、最近シンセサイザーに興味を持ち始めたという人はぜひ参考にしてみて下さい。
シンセサイザーの基本的な仕組み
シンセサイザーには色んな種類がありますが、今回紹介するのはもっとも一般的な「減算合成」のシンセです。
シンセの方式については、こちらの「シンセサイザーの基本となる8つの合成方式を理解する」という記事で詳しく解説していますが、この記事で紹介するのはMoog「Minimoog」やKorg「MS-20」などあらゆる名作シンセに採用されている大定番の方式なので、アナログシンセはもちろんソフトシンセで音作りをする時にも、大いに役に立つでしょう。
では早速、シンセサイザーの基本的な音の流れを見てみます。
オシレーター(VCO)→フィルター(VCF)→LFO→エンベロープ(ADSR)→アンプ(VCA)
早速、なんのこっちゃって感じですよね。
これから順番に解説していきますが、簡単に説明すると・・・
① オシレーター(VCO) – 音を発生させる
② フィルター(VCF) – 音を削って加工する
③ LFO – 音をくすぐってさらに加工する
④ エンベロープ(ADSR) – 音の時間変化をコントロールする
⑤ アンプ(VCA) – 音量を決める
このようになっています。
もちろん複雑な音作りをするなら、これ以外にも覚えなければいけないことはありますが、この全体の大まかな流れを最初に理解できれば、応用的な知識もわりとラクに身につけられるはずです。
音を発生させて、加工して、さらに加工して、音の長さを決めて、最後に音量を決める。
簡単そうですよね?笑
それでは、まず音を発生させる装置である「オシレーター」から見ていきますよ。
オシレーター(VCO)
「オシレーター」は音を発生させる装置なので、どのシンセサイザーにも例外なく搭載されています。
「ポー」とか「ブーン」とかいう基本的な音の波を選ぶところから、シンセの音作りは始まるのですが・・・
ここでは、ほとんどのシンセに入っている4つの基本的な波形を見てみましょう。
正弦波(Sine Waves)
「正弦波」は自然界には存在しない、いっさいの倍音を含まないピュアなサウンドです。
正弦波は倍音を含まないと言いましたが、ピアノの「ド」とギターの「ド」は、同じ音の高さなのになぜ音色が違うのかというと、「ド」という音の他にもさまざまな倍音が同時に鳴っているからなんです。
でもこの正弦波は、倍音をいっさい含んでいない・・・
パソコンでしか作ることのできない、奇妙なサウンドでもあります。
短形波(Square Waves)
「短形波」は、四角い波形が等間隔で並んでいるのですが、波形の間隔を変化させると「パルス波」という波形にもなります。
オシレーターにパルス波を搭載している、例えばKorg「MS-20」というシンセだと、パルス波の間隔を50%, 75%と変化させて音色を変化させることができます。
三角波(Triangle Waves)
波形が三角だから「三角波」。
英語でもトライアングルなので、覚えやすいですね。
ゲームの音のような、ピコピコしたかわいいサウンドが特徴です。
ノコギリ波(Saw Waves)
「ノコギリ波」は三角波の波形と似ていますが、音は全然違いますよね。
いかにもエレクトロ!といった感じのサウンドで、このままでも十分カッコいい・・・
ノコギリ波というだけあって音にもトゲがあり、曲中でもよく目立ちそうです。
さて、ここまでが基本的な4つのオシレーターの簡単な紹介です。
これらをいくつか組み合わせたり加工することによって、より複雑で深みのあるサウンドになっていきます。
次にこれらのオシレーターの波形を加工するための、「フィルター」について見ていきましょう。
フィルター(VCF)
「フィルター」はシンセサイザー以外でもよく使われていますね。
例えば、コーヒー豆を濾過するためのフィルターだったり、エアコンにゴミが侵入するのを防ぐためのフィルターだったり・・・
基本的には、シンセのフィルターもコーヒーのフィルターも同じです。
シンセのフィルターは音の高域や低域など、ある特定の周波数を削って(濾過して)音作りをするためのものです。
ここで、先ほどの「ノコギリ波」に高域を削るフィルターを入れ、リアルタイムで変化させてみましょう。
途中で高域が削られて聞こえなくなり、後半にかけて元に戻っていく様子がわかりますね。
さらにフィルターには「レゾナンス」というパラメーターが付いていて、これをフィルターと一緒に操作することで、サウンドに独特なキャラクターを与えることができます。
これはフィルターがかかっている付近の周波数を強調させる機能なのですが、実際に聴いてみた方が効果がわかりやすいでしょう。
こんな感じのサウンドになります。
レゾナンスを加えるだけで、トゲのある特徴的な音になりました。
波形とフィルターの組み合わせによっては、「ミャオ〜」という猫の鳴き声のような音も作ることができます。
フィルターは特に難しいパラメーターではありませんが、使い方次第で音にいろんな表情を与えることができるんですね。
次は、フィルターよりちょっとだけ難しいかもしれません。
「LFO」について、みていきますよ。
LFO
「LFO」は、「ロー・フリーケンシー・オシレーター」の略です。
オシレーターと言っていますが、LFOは音を出すための機能ではありません。
「音をくすぐる」という表現がよく使われますが、LFOは「ピッチ(音の高さ)」や「アンプ(音量)」「フィルター」などあらゆるパラメーターをくすぐることで、音の表情を変化させるための機能です。
「LFO」と聞いたら、先ほどのオシレーターの波形を思い浮かべてみて下さい。
オシレーターだから、こんな風に周期的にウニョウニョしてますよね。
ロー・フリーケンシー・オシレーターは「低周波」、つまり人間には聴こえないくらい低い音の波なのですが、これを使って先ほどの「ノコギリ波」のピッチ(音程)をウニョウニョさせてみましょう。
LFOを使ってピッチをウニョらせることで、周期的に音が高くなったり低くなったりしている様子が分かります。
後半に行くにつれてLFOの周期は速くなり、最終的にはノコギリ波の面影はありません。笑
このように超高速でピッチなどのパラメーターをくすぐることによって、単純な波形であっても跡形もなく違うサウンドに変化させることができるんです。
面白いですよね😉
LFOは他にも「フィルター」にかけたり「波形そのもの」にかけたりと、かなり幅広い使い方ができるので、実験的にあらゆるパラメーターにかけてみると、思わぬサウンドが出来上がるかもしれませんよ。
エンベロープ(ADSR)
さてここまで来れば、あとは「ADSR」、つまり音の時間的変化を調整して完成です。
ADSRとは、
・A(アタック) → 鍵盤を叩いてから音が最大音量に達するまでの時間
・D(ディケイ) → 最大音量からサステインの音量に下がるまでの時間
・S(サステイン) → 鍵盤から指を離すまで持続する音量
・R(リリース) → 鍵盤から指を離してから音が消えるまでの時間
の略です。
上の図は、縦軸が「音量」横軸が「時間」を表しているのですが、ADSRを変化させることで、例えばバイオリンのように音の立ち上がりが遅くて長めにのびる「持続音」を作ったり、ギターのように一瞬で音がピークに達する「Pluck(プラック)」という種類のサウンドを作ったりすることができます。
慣れるまでは、それぞれの役割を覚えるのが大変かもしれませんが、ほとんどのシンセサイザーで使うパラメーターなので、ここでまとめて覚えてしまいましょう。
覚えることは少ないので、必要なのは「慣れ」のみです!
A(アタック)
まず「アタック」で、まず音の立ち上がりの速さを決めます。
基本的に多くの楽器は弾いてからすぐに最大音量に達しますが、バイオリンなどの弦楽器やフルートといった管楽器は徐々に音量のピークに向かうので、アタックは遅めになります。
後半にかけて、徐々にアタックが遅くなっていくサンプルを聴いてみましょう。
アタック以外は何も変化させていませんが、最後の方では弦楽器のようなサウンドになっているのが分かりますね。
D(ディケイ)
「ディケイ」は最大音量に達してから、サステイン(持続音)の音量に落ち着くまでの時間です。
このパラメーターを短くすると、「ペンッ」という歯切れのよい短い音になるのですが、これもサンプルを聴いて確認してみましょう。
まず、通常のディケイで鳴らします。
次に、ディケイを極端に短くしてみましょう。
同じような音に聴こえますが、よく耳をこらしてみると、こちらの2番目の方が音の減衰が早いことがわかります。
S(サステイン)
「サステイン」は、鍵盤から指を離すまで持続している部分の音量です。
ADSRの中では唯一、時間ではなく「音量」をコントロールするパラメーターになります。
ここでも二つのオーディオサンプルを見てみましょう。
まずは、サステインを小さめに設定したこちらのサンプルから。
音が最大音量に達したあと、小さめの音量(サステイン)まで落ち着いて、音が持続しているのがわかります。
次に、サステインを最大にしたサンプルです。
音が、最大音量でずっと鳴っているのがわかりますね。
このように持続音のボリュームを決めるのが、サステインの役割です。
R(リリース)
最後の「リリース」は、わりと理解しやすいパラメーターです。
鍵盤から指を離してから、音が消えるまでの時間を決めることができます。
まずこちらのサンプルは、極端にリリースを短く設定したもの。
すぐに音が消えましたね。
次に同じ音ですが、リリースだけを長くしたもの。
指を鍵盤から離すタイミングは、先ほどのサンプルと同じです。
でもこちらの方が、リリースタイムが長いぶん音が長く伸びているのが分かりますね。
はい、以上がADSRの説明になります。
覚えてしまえば単純なものですが、ここまで見てきたのは「アンプ(VCA)」部分、つまり音の最終出口を調整するもので、実はADSRというのは他にも色んな応用方法があるんです。
フィルターに適用させればフィルターの開き方を調整することができますし、LFOのようにいろんな場所に適用させて、各パラメーターに時間的変化を与えることも可能です。
ここらへんは応用なので今すぐ覚える必要はありませんが、まずはアンプ部分のADSRを変化させることで、音がどのように変わるのかをしっかりイメージできるようにしましょう。
シンセサイザーの仕組みを理解する | まとめ
いかがでしたでしょう。
文字だけだと分かりにくいかと思うので、そのうちYouTubeなんかでも解説していきますが、シンセを実際に自分で触ってみた方が理解しやすいかと思います。
シンセの基礎を理解する上で、一番おすすめなのは「Serum」というソフトシンセなのですが、これはエレクトロ色が強いシンセなので人を選ぶかもしれません。
ただ、今日解説した中でも少し理解しにくい「ADSR」や「LFO」といった概念も、Serumのインターフェースならどのシンセよりも直感的に理解することができるので、音が気に入ったという人はぜひ検討してみて下さい。
もちろん他のシンセを使っているという人でも音作りが学べるよう、引き続きシンセサイザーに関する記事を上げていく予定です。
今回の記事が、シンセの音作りを学ぶみなさんのお役に立てば嬉しいです😌