UA Capitol Mastering Compressor | モダンチューブの魔法

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Universal Audioから、新たにマスタリングコンプが発表されました。

Capitol Mastering Compressor – Universal Audio

ここ数日使い込んでいるのですが、なかなか良い出来だと思います。

最近は、メインのバスコンプとしてSoftube「Bus Processor」を使っていましたが、これとはまた違った雰囲気を持っているので、曲によって使い分けができれば非常に良いんじゃないでしょうか。

Bus Processorは、1980年代のラージ・コンソールのバスコンプがベースになっている、透明性の高いパンチーなサウンドが特徴的ですが、Capitol Mastering Compressorは、クリーンでパンチー、かつ真空管独特のサウンドで有機的に全体をまとめ上げるバスコンプです。

そもそも、コンプレッサーの名前にもなっている「Capitol」とは、1956年にアメリカで創業した有名なマスタリングスタジオであり、フランク・シナトラからビースティ・ボーイズまで数々の名作を生み出してきたスタジオからとったもの。

MotownやBlue Noteといった、著名レーベルの作品も仕上げてきたこのスタジオには、Fairchild 670Gates Sta-Levelにインスパイアされた専用のマスタリングコンプレッサーが存在していました。

Fairchildは、プラグインでも数多く出回っているので、みなさんよくご存知だと思います。

Retro InstrumentsのGates Sta-Levelも、真空管を搭載したクリーミーな仕上がりが特徴の名機で、ダンスミュージックのミキシングに実機を使っているエンジニアも見かけますね。

設計者について

Capitol Masteringにある、4つのCM5511(UA Capitol Mastering Compressorの原型)の設計者は、現在、Magic Death Eyeというサイトを運営しています。彼のホームページに行ってみると、UA Capitol Mastering Compressorの販売を祝福するメッセージが大々的に書かれていますね。

Magic Death Eye

Magic Death Eyeでは、Fairchildをモデリングしたコンプレッサープラグインを販売していますが、こちらはUAのFairchildと比べると、コンプのかかり方が随分違います。

Fairchildの実機は聴いたことがないので比較できないのですが、彼のホームページにはこんな記述がありました。

Some people asked if the Capitol compressor plugin is similar to my Magic Death Eye compressor plugin. The answer is not really. The MDE comps are more similar to the Fairchild. 

Capitolコンプレッサー・プラグインは、私のMagic Death Eyeコンプレッサー・プラグインと似ているのか、という質問がありました。答えは、そうでもありません。MDEコンプの方がFairchildに似ています。

http://magicdeatheye.com/

The Magic Death Eye’s went through way more trial and error with many more producers and mixers that came through than the Capitol compressor did.

Death Eyeの方は、Capitolコンプレッサーよりもはるかに多くのプロデューサーやミキサーを経由して試行錯誤を繰り返した。

http://magicdeatheye.com/

自分の作ったMagic Death Eyeの方が、実機に似ている!とMagic Death Eye推しですが、確か実際に聴き比べてみても、UA Capital Compressorとは、かなり音が違っています。

どちらが優れているという判断はできませんが、チューブ系の音を探している人は、Magic Death Eyeも視野に入れてみても良いかもしれませんね。

音の傾向

音に関してですが、コンプがかかっていない状態でも、かなり倍音が乗っているのがわかります。

デフォルトで、すでに倍音成分たっぷり

原音をウォーミーなサウンドにガラッと変える秘訣は、この倍音成分にありそうですね。

インプットノブを回すことでも、倍音成分が増えていくのですが、同時に周波数特性も変化します。

コンプを入れただけの状態だと、周波数特性はこんな感じ。

コンプレッションなし

そして、インプットを上げていくと、以下のようにドンシャリ傾向が高まります。

インプットノブを上げると、ドンシャリ傾向に

同じく、サチュレーションノブを回すことによっても、周波数特性は変化します。

サチュレーションを上げると、高域は伸び、低域はふくよかに

サチュレーションをかけると、特に低域の変化が大きく、マスタリング時に「あれっ?」となってしまいました。

けっこう原音を変化させてしまうので、マスターに使う時は注意が必要です。

もちろんマスタリングステージでも使えますが、ちょっとノブをひねるだけで変化が現れるので、慎重に行いましょう。

プラグインの使い方

通常のコンプについているようなパラメーターは、もはや説明不要でしょう。

ただ、レシオやサイドチェーンフィルターなど、パッと見では数値がわからないパラメーターもあるので、そちらを簡単にまとめておきます。

インプット

インプットは、2.5dB刻みです。

レシオ

レシオは、「RELEASE」と「OUTPUT」の間にある小さなノブで、2:1、3:1、4:1、6:1、10:1の計5つがあります。

ちなみに、3:1と4:1のレシオは、2つの異なるCM5511ハードウェアユニットからモデル化されているそう。

サイドチェーンフィルター

右から順にOff、1(365Hz)、2(700Hz)となっています。これらのフィルター・オプションは、2つの異なるCM5511ハードウェア・ユニットからモデル化されています。

フィルターの傾斜は、6db/オクターブです。

参考: コンプについてるサイドチェインフィルターについて – スタジオ翁

まとめ

最近のバスコンプはどれも素晴らしいので、何を使えばいいのか迷いますね。

Unisumみたいな高機能コンプは別ですが、アナログモデリングコンプの選びに迷った時は、とりあえず、音のキャラクターが好みかどうかで選ぶと良いと思います。

コンプのキャラクターを知りたい時は、一度ハードにコンプレッションしてみて、その特徴を掴むのが良いでしょう。

ハードコンプレッションすれば、そのプラグインが持つ歪みの感じや、倍音の乗り方がわかりやすく出ます。

Capitol Mastering Compressorは真空管ベースなのに、ウォーミーな感じになりすぎず程よいパンチがあるので、個人的にはとても好みです。

UAのサブスクで使うのがおすすめですが、単品でも購入できるので、気になった方はぜひチェックしてみてください。

Capitol Mastering Compressor – Plugin Boutique

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