アーティストが稼ぐ方法さまざまですが、最近はCDよりデータ販売やストリーミングで収益を得る方法が音楽業界のスタンダードになりつつあります。
そんな中、ストリーミング業界最大手であるSpotifyにアーティストとして登録できる「Spotify for Artists」というサービスがあります。
このサービスでアーティストは何ができるのか、Spotifyはアーティストにどのくらい利益を還元してくれるのか、アーティストが収益を得る方法はほかにどんなものがあるのかなどの疑問に、最近の音楽業界のトレンドを追いつつ迫っていきたいと思います。
世界の音楽配信トレンドの変化
近年CDなどの媒体の売上は低下し、デジタルの売上に押されています。
音楽業界というと低迷のニュースが多いように見えますが、実は世界の音楽市場では2015年から業界全体で収益の増加が続いていて、ストリーミングなどの新しい流れにうまく乗ることができるアーティストや企業が活躍できる時代になってきています。
<アメリカの市場におけるフォーマットごとの音楽売上>
参照: U.S. SALES DATABASE – RIAA
世界を見渡してみると、数年前から音楽ストリーミングの売上はCDなどのフォーマットを抜いて第一位になり、そのストリーミング旋風を先導しているのが業界最大手の「Spotify」です。
「Spotify for Artists」で個人でのアーティスト登録が可能に
Spotifyでは基本的にレーベルからリリースされた楽曲のみが配信されているのですが、「Spotify for Artists」に登録したアーティストは、自身の楽曲をアップロードすることができます
。
※このアーティスト自らが楽曲をリリースできるベータ版機能は、2019年初頭にクローズしてしまいました。
今後の復活に期待しましょう。
We’re Closing the Upload Beta Program. Here’s What Artists Need to Know:
Spotifyはプレイリスト』の重要性を音楽業界に提示し続けており、「New Music Friday」や「トーキョー スーパー・ヒッツ」など数々のユニークなプレイリストが日々更新されています。
「Spotify for Artists」に登録することでこれらのプレイリストに自身の楽曲を申請することができるので、Spotify公式プレイリストに取り上げられればより多くの再生回数が見込めるでしょう。
「Spotify for Artists」に登録すると何ができるの?
「Spotify for Artists」は改良を重ねながら進化し続けていて、アーティスト自らが楽曲をリリースできる機能はクローズしてしまったものの、2019年現在ではアーティスト登録を完了すると、このようなことができるようになります。
1. リスナーの性別や年齢がわかる
2. 合計リスナーやフォロワー、ストリーミング再生回数が見れる
3. 自分の曲がどんなプレイリストに入っているのかがわかる
4. アーティストプレイリストを作成できる
5. どの国や都市でもっとも再生されているのかわかる
6. どんなソースから曲を聴きに来ているのかがわかる
「Spotify for Artists」は、直接収益に繋がることができるようになるサービスではありませんが、音楽で稼ぐためのマーケティングデータを得ることができるようになります。
このサービスによって、どんな人が自分のファンになっているのかがイメージしやすくなります。
TwitterやFacebookでプロモーションをしているアーティストは、どういう層を狙って発言していけばいいのか、自分の曲が好きな人は他にどのようなアーティストを聴いているのかがわかると戦略も立てやすく、活動しやすいですよね。
日々の再生回数の推移や、いま自分の曲を聴いている人が何人いるのかもわかるので、誰かが聴いてくれているんだというモチベーションにもなります。
Spotifyでアーティストはどのくらい利益を得られるのか
こちらのCNBCの2018年1月の記事によると、Spotify上で楽曲が一回再生されると0.006ドルから0.0084ドルが支払われます。1ドルはおよそ110円(2019年5月現在)なので、66銭から92銭がSpotifyから支払われる金額です。
しかし楽曲のリリースにはアーティスト以外にもレーベルや作曲者、プロデューサーなどいろんな人々が関わってくるので、アーティストの取り分はさらに小さなものになってしまいます。
雀の涙ほどしか稼げないじゃないかと思うかもしれませんが、何かとSpotify関連で話題にあがるテイラー・スウィフトを例に挙げると、彼女の「Shake It Off」という楽曲は2019年5月時点でおよそ3億回再生されていて、この楽曲だけで2~3億円近い収入を得ていることになります。
さらに同曲は「Apple Music」や「Tidal」, 「Pandora」など様々なストリーミングサービスで配信されていますので、彼女にとってもSpotifyなどのストリーミングはかなり大きな収入源であることは間違いないでしょう。
Spotifyで無名から爆発的ヒットを叩き出した日本人アーティスト「AmPm」
Spotifyなどのストリーミングサービスは、テイラーのようにすでに知名度が高いアーティストのためだけのものではありません。
あまり日本では知られていないかもしれませんが、「AmPm」という日本人アーティストがいます。彼らはデビューからたった4ヶ月で爆発的な人気を獲得し、インドネシアの首都ジャカルタでのフェスや「Ultra Music Festival Miami」に参加、さらにライブでは会場全体が「AmPm」の人気曲や最新曲を熱唱したという見事なサクセスストーリーを実現しています。
その駆け足過ぎる成功の裏にあったのが、徹底したマーケティング戦略とSpotifyの存在だったのです。
ここらの戦略に関してはNewsPicksにインタビューなどの詳細が載っていますので、新時代の音楽マーケティングに興味のある方は一読してみることをおすすめします。
この記事に関して、あのホリエモンもコメントしています。
上記記事が執筆された時点での「AmPm」の月間再生数は、2位の「ONE OK ROCK」を大きく突き放して1位(2019年5月現在)。そしてそのアクセスのほとんどは日本ではなく海外からです。
海外でのストリーミング人気の波にも押され、このようにデビュー数ヶ月で一気に知名度を上げるアーティストが出てくるのも、ストリーミングなどのウェブサービス時代ならではでしょう。
チャンスは「テイラー・スウィフト」のような、超大物アーティスト以外の場所にも転がっているのです。
「Bandcamp」に登録して配信すればアーティストの取り分は70%以上
Spotifyでの収益が少な過ぎるという方はBandcampでの販売を検討してみましょう。
Bandcampは個人で音楽やグッズを販売できるプラットフォームで、僕も楽曲を購入する時Beatportと合わせてよく使っています。
上の写真は、実際に僕が1曲150円販売した際の収益で、この場合は、BandcampとPaypalの手数料を差し引いた111円が手もとに残ることになります。
BandcampはSpotifyのように面倒なアーティスト登録もなく、誰でも簡単に楽曲を配信することができます。
管理も簡単で、売上は1曲ごとにPaypalの口座に入金されます。
ただ個人で販売する場合はレーベルのようにファンがついていたりアーティストとしての信頼がなければ誰の目にも触れることはなく、一般の人が購入にいたるのは難しいかもしれません。
それまでにリリースを重ねてある程度のファンを獲得
していたり、SNSなどでの知名度がある方にはおすすめできる販売方法です。
アーティストとしての知名度を上げたいならレーベル契約を狙うのも手
まだレーベルからのリリースが少なくファンもいないという方は、いきなり制作した曲を収入に結びつけることは難しいので、まずはアーティストとしての知名度をあげることを優先すべきです。
楽曲のクオリティが高ければいきなり大手のレーベルからリリースすることも夢ではなく、ひとたびリリースできれば他のレーベルからの制作のオファーやリミックスをお願いされる可能性も出てきますし、多くのファンも獲得することができます。
レーベルからのリリースを目指すなら、こちらにまとめている【完全版】海外レーベルへの正しい「デモ」の送り方(テクノ, ハウス, エレクトロなどのダンスミュージック)を参考に、まずは「正しい」デモの送り方を身につけましょう。
リミックスコンテストからもリリースできるチャンスはあり、【裏話あり】リリースのチャンスはリミックスコンテストで掴め!厳選海外サイト9選では、リミックスコンテストに関する情報やおすすめのコンテストサイトを紹介しています。
『Spotify for Artists』に登録すれば稼げるのか。アーティストの取り分はいくら?Spotify以外で音楽収入を得る方法もご紹介 – まとめ
「Spotify for Artists」に登録するだけで収入が得られるわけではありませんが、ある程度リリースを重ねていたり未発表曲がある方は、公式プレイリストに載るよう申請してみることでさらにリスナーを増やすことができるかもしれません。
まだアーティストとしての基盤ができていないという方は、レーベル契約を狙ったりSNSでファンを獲得して、Bandcampなどで販売するといった方法を検討してみるのもよいでしょう。