Appleの「Logic Pro」は標準でコンプレッサーが付属していて、なんとLogic Proオリジナルコンプ+6種類もの定番コンプをモデリングしたものが選べます。
各コンプレッサーは基本的な使い方はさほど変わらないものの、かかり具合や雰囲気がそれぞれ違うので音源の種類に応じたコンプレッサーを選ぶことで、ミックスの幅が広がります。
これら6種類のコンプレッサーはスタジオの定番タイプをモデリングしたものなので、名機といわれるコンプレッサーの風味を手軽に味わうことができます。
選択肢が多いと、どれを選べば良いのか途方に暮れてしまうかもしれませんが、どのコンプを使って音作りをするかというのもDTMのひとつの醍醐味でもあるので、これを機会に使い分けができるようになりましょう。
コンプレッサーで使用する基本的な4つのパラメーター
コンプレッサーの基本的な動作は『スレッショルド』で設定した値を超える音を、『レシオ(圧縮比率)』で設定した値分だけ圧縮するというシンプルなものです。
とてもシンプルですが、音源に応じてアタックやリリース, レシオなどの最適値を見つけ、目的に応じたコンプレッション(圧縮)をしなければならず、奥が深いものです。
基本的な4つのパラメーターを見ていきましょう。
スレッショルド:
しきい値と呼ばれ、この値を超える音をコンプレッション(圧縮)します。
レシオ:
2:1, 5:1などと表記されますが、要はスレッショルドを超える音を1/2, 1/5に圧縮するということです。分母が大きいほど圧縮比率は高まります。
アタック:
コンプレッションのかかり始めるタイミングを決めます。スレッショルドを超えた音はすぐに圧縮される訳ではなく、アタックタイムで調整可能です。あまりにも早いアタックタイムは原音のトランジェントと呼ばれる音の立ち上がりを潰し、平坦で耳障りのよい音にしてしまいます。
リリース:
コンプレッションの解除のタイミングを決めます。これも圧縮された音がスレッショルドを下回ったときにすぐコンプレッションが解除される訳ではなく、リリースタイムで調整可能です。あまりにも急にコンプレッションが解除されると、音の切れ目がとても不自然なものになります。
他にもいくつかのパラメーターがありますが、この4つさえ覚えておけばコンプレッサーの8割が理解できたと考えてよいでしょう。
ではLogic Proに内蔵されている、各コンプレッサーの使い方や特性を見ていきましょう。
【使い方】Logic Pro Xの各コンプレッサーの特徴
Studio VCA
こちらはFocusrite Red3というコンプレッサーを再現したものです。
VCAはVoltage Controlled Amplifierの略で、サウンドは非常にスムーズですが一種のアナログ感を与えるような種類のコンプレッサーです。
ミックスバスやベース、ギターなどに最適で、著名エンジニアのChris Load-AlgeもミックスバスにFocusrite Red3を入れていると公言しています。
Studio FET
FETは電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor)の略で、1176 Rev E “Blackface”を再現したものです。
原音に独特のエネルギーを与えるようなアグレッシブなサウンドが持ち味で、その非常に素早いアタックとリリースからドラムなどの音源に最適です。
激しくコンプレッションをかけると、音が前に押し出されるような存在感のあるサウンドになります。
Studio VCA
VCAはVoltage-Controlled Amplifierの略で、この種類で有名なのがSSL BusやAPI-2500などのコンプレッサーです。
こちらはdbx160というコンプレッサーを再現したもので、温かみとパンチのある音作りに適しています。
アタックとリリースは設定できませんが、適度に早いレスポンスでニーも鋭く、タイトなサウンドに仕上げることができます。
Vintage VCA
ここからはビンテージのコンプレッサーを再現したものになります。
こちらはSSL G Bus Compressorというとても有名なコンプレッサーを再現したもので、Busという言葉の通りドラムバスやミックス全体にかけて統一感やパンチを与える、色付けするといった特徴を持っています。
Vintage FET
UREI 1176 Rev H “Silverface” を再現したもので、先ほどStudio FETで紹介した1176 Rev E “Blackface”の兄弟的存在で、こちらの方が色付けされていてアグレッシブなサウンドに仕上がる印象です。
1176 Rev A “Bluestripe”を再現しているとも言われていますが、どのコンプレッサーがモデリングされたかという明確なソースはありません。
Vintage Opto
最後はOptoと呼ばれる光学式コンプレッサーです。
Teletronix LA-2Aというモデルが代表的で、アタックが遅くナチュラルなかかり方をします。ボーカルなど自然に仕上げたい音源に効果的です。
Logic Pro純正コンプレッサー使い分けのコツとそれぞれのメリット | まとめ
以上がLogic Pro標準コンプレッサーの解説でした。
ビンテージコンプを再現したものなどはWavesやUADなどからも出ていて、その効きもメーカーによって過度に色付けされていたり実機に近かったりと様々です。
Logic Proに搭載されているコンプレッサーをいろいろ試してみて、コンプレッサーを深掘りしたければ有料のものを試してみるのもよいでしょう。
UADから出ているプラグインはグラミー賞受賞エンジニアも使用を公言しているなど、信頼のおけるブランドなのでおすすめですよ。