MENU
「週刊 スタジオ翁」ニュースレターの登録はこちら

【2024年】いま本当にUADプラグインを買う価値はあるのか?

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

UADプラグインは世界中のエンジニアに愛され、使われてきましたが、いま本当にわざわざUADプラグインを購入する価値はあるのでしょうか?

UADって何? – 5年以上UADを愛用する僕がおすすめプラグインと共に解説していく – スタジオ翁

昔はUADを使うには専用のハードウェアが必要でしたが、いまは「UAD Spark」が出てきたことにより、いくつかのソフトはハードウェアなしで動作するようになって、誰もが気軽に使えるようになりました。

そして、UADはますます市民権を得て爆発的に普及し・・・

ということはなく、むしろ最近はUADを離れていく人も見かけるようになりました。

理由の1つとして、Apple Silicon M1が登場してしばらくの間、「M1になったせいでUADが使えない」という事態が起こり、MacユーザーがUAD以外の製品を求めてUADを離れたという経緯があります。

その結果、「UADってハードウェアの購入が必要だし、他にも良いプラグインメーカーがたくさん出てきてるから、わざわざUADを選ぶ必要ってないよね」

と、気づいちゃった人から、UAD離れが起こってきているのが現状だと思います。

「コンピューターの処理能力に依存しない、最高級のプラグイン」

というのはもはや過去の話で、コンピューターの性能が飛躍的に上がってしまったため、ここ数年、他のメーカーがUADと互角(もしくはそれ以上)に戦える製品をどんどんリリースしてきています。

UADプラグインの中でもかなりDSPを消費していた「Neve 1073 Preamp & EQ」という製品は、昨年からCPUベースで動くようになりましたが、実はDSPなんか使わなくてもサクサク動いてしまうことがわかりました。

それほどCPUの処理能力が、ここ数年で上がってきているということですね。

正直、「DSP」という過去の遺産に依存していたせいで、時代に取り残されてしまった感が否めないUniversal Audioですが、ここ最近はUAD Sparkを発表したり、世界最大のプラグインディストリビューター「Plugin Boutique」にも登録したりと、なんとか再起を図りたいという意図が見えます。

UADに変わるプラグインたち

UADは、基本的にビンテージ系のアナログギアを再現するプラグインが多いですが、他のメーカーからも代用できそうな製品がたくさん登場してきています。

例えば、最近使っているプラグインで、「UADがなくても、ここら辺のプラグインがあればいけそうだな」と感じているのは以下のような製品です。

  • iZotope Ozone 10 (Vintage)
  • Pulsar Mu
  • SSL Native Bus Compressor 2
  • SSL 4K B
  • Acustica Audio全般
  • Knif Audio Soma
  • Lindel Audio 50 Series
  • SPL Iron
  • Black Box Analog Design HG-2
  • Overloud EQP
  • Kush Audio OMEGA Model N

Plugin Alliance率が高めなのは、数年前にNative Instruments、iZotope、Plugin Alliance、Brainworxといった企業が合併して巨大なソフトウェアカンパニーSoundwideとなったことで大きな資金力や影響力を持ち、最近はさまざまな話題性のあるプラグインがPA傘下に入ってきているというトレンドがあるからです。

このPlugin Alliance(PA)もモデリングプラグインを数多くリリースしているので、PAのサブスクに入っておけば、アナログモデリングプラグインに関することはだいたい事足りてしまうのです。「SPL Iron」や「Knif Audio Soma」なんかはかなり良い出来ですし、UADで取り扱いのあるShadow HillsやTransient DesignerはPAのサブスクにも入っています。

参考: Plugin Allianceの個人的なおすすめプラグイン8選 – スタジオ翁

そもそも、忠実に実機の特性が再現された、アナログモデリング系プラグインが必要なのかという疑問も湧いてきますが、ほとんどの人にとって、そんな再現度の高いプラグインは必要ないのではないかと思っています。

「1176コンプの実機の音を知っている」だとか、「Lexiconの音が好きで使い慣れているので、なるべくそういったアナログギアを忠実に再現しているプラグインが使いたい」というなら話は別ですが、この時代にアナログギアの特性をしっかり理解できるほど実機を使い込んでいる人というのは、ごく少数でしょう。

僕も実際、アナログギアなんてほとんど触ったことがないので、「実機に近いかどうか?」なんてよくわかりませんし、とにかく音が良い感じになればそれでいい、という考えでプラグインを選んでいます。UADプラグインも結構持っているので、たまに他のメーカーのプラグインと比べたりもしますが、全ての製品においてUADが優れているなんてことは決してありません。

最近はビンテージ機材を再現していて、かつ、高性能のオーバーサンプリング機能を搭載した質の高いプラグインがたくさん出てきているので、UADを選ぶという選択肢は昔ほど一般的ではないでしょう。

UADにしかない魅力

と、ここまでUAD批判のような書き方をしてきましたが、UADにしかない魅力があるのも事実!

UADプラグインで好きなのは、このあたりです。

  • Studer A800
  • Ampex ATR-102
  • Voice of God Bass Resonance Tool
  • UA 1176 Collection
  • Teletronix LA-2A Collection
  • Pure Plate Reverb
  • Ocean Way Studios Reverb
  • AMS RMX 16 Reverb
  • Neve 1073 Preamp & EQ
  • Korg SDD-3000 Digital Delay

1176とLA-2Aは、Universal Audioが実機を作っているので、実機の回路を理解している人たちがつくるプラグインということで信頼感があります。(実機との比較はしたことないです)

Ampex ATR-102やStuder A800などのサチュレーターは、なかなか他では見られない完成度の高いプラグインで、これは代替となるものがありません。

リバーブは個性的なものが揃っているので、このあたり、こだわりたい人にとってはUADはかなり良い選択肢になると思います。ただ、最近はCinematic Roomなどの素晴らしい音質のリバーブが登場してきているので、わざわざビンテージのリバーブやディレイだったりを使う必要は無くなってきているのかなとも感じます…

Neve 1073は、昔からUADの定番プラグインですが、こちらは最近「Kush Audio OMEGA Model N」で代用できるかなと感じつつも、プリアンプ部分だけでなくEQも好きで使ってしまいます。CPUでも割とサクサク動くので、DSP時代より使いやすくなったのも魅力ですね。

他にも「UADならでは…」といったプラグインはいくつかあるので、やはり昔からUADを使ってきた人にとっては、完全にUAD断ちをするのはなかなか難しそう、というのが正直な感想です。

UADは今後どうなるのか?

なんだかんだ言っても、UADは昔からプロに使われてきただけあって、素晴らしいプラグインをたくさんリリースしており、まだまだ需要はあると感じます。

とはいえ、代用できそうなプラグインが各社から徐々に登場してきているため、もしこのままUADが全プラグインをネイティブ化しなければ、10年〜20年後には他のプラグインに取って代わられる可能性が高いと思います。

全プラグインがCPUベースで動くようになるにはかなり時間がかかりそうなので、一旦は、UADプラグインが使いたいなら専用DSPもしくは、Universal Audioのオーディオインターフェースを購入するのはアリでしょう。

でも、これからUADを使い始めたい!という人だったら、まずはDSPを購入せずUAD Sparkのサブスクを使ったり、CPUベースで動く単体プラグインをPlugin Boutiqueなどで購入する程度にとどめておくのが良いのかなと思います。

UAD製品一覧 – Plugin Boutique

僕もまだまだUADプラグインのお世話になりそうですが、最近は高品質なプラグインがどんどん登場してきているので、UADの代わりになりそうなものを積極的に探していきたいですね。

そんなわけで、「UADは今後どうなるかわからないけど、品質が高いからまだまだ使っちゃいそう…」というお話でした。

サービス・書籍について

<ニュースレター>

週刊「スタジオ翁」beehiiv版

毎週、音楽制作やAIに関する話題、世界の音楽ニュースなどを紹介しています。

<著書>

AI時代の作曲術 – AIは音楽制作の現場をどう変えるか?

作曲AIに関する書籍を出版しました。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。Kindle Unlimitedで読めるので、気になった方はぜひチェックしてみてください。

 

この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?