今日は、僕の大好きなドイツのメーカーu-heから販売されているテープマシンエミュレーター「Satin」をご紹介します。
昨今、テープマシンプラグインは市場に溢れかえっていますが、僕の好きな製品を挙げると、
- Slate Digital「VTM」
- UAD「ATR-102」
- UAD「A800」
- Softube「Tape」
などなど。
「似たようなプラグインがそんなに必要なの?」という声が聞こえてきそうですが・・・
テーププラグインごとに特徴の違いがありまして、
- マスターに挟むなら「ATR-102」
- ドラムやシンセをぶっとくしたいなら「A800」
- ハイハットなどの耳障りな音をマイルドにするなら「VTM」
といった感じで使いどころを分けてやると、自分の思った通りの音ができるのでこれがまた楽しいんですよね。
さて、「Satin」はどんな場面で使えるのかというと、個人的には、
- 全トラックに挿して、曲にキャラ付けをする
- 特徴的なテープエコーやフランジャーを使ってシンセに色付けをする
という使い方が良いのではないかと思います。
Satinは先ほど挙げたようなテーププラグインとは少し違っていて、テープの特性を活かし、「エコー」や「フランジャー」といったエフェクターとしても使うことができます。
これらをうまく使えばトラックにアナログ感を与えたり、デジタル臭を消すことができるので、こういった問題に日々悩んでいる人にとってはかなり役立つツールになることでしょう。
早速、詳しい内容を見ていくことにします。
u-he「Satin」の3つのモード
最初にお話した通り、Satinには普通のテープマシンエミュレーターとしての機能以外に、ディレイやフランジャーとして使える機能が搭載されています。
Roldand「RE-201」といったテープを使ったディレイモジュールがあったり、その昔、2台のテープを使ったフランジングテクニックがあったように、テープエミュレーターにこのようなディレイやフランジャーの機能がついているのはとても自然なことだとu-heさんはおっしゃっています。
1. Studio
Satinを一般的なテープエミュレーターとして使用するなら、こちらの「Studio」モードを使います。
テープサイズ、エンコーダー、テープスピード、ノイズ量などのあらゆるテープの特性を組み合わせ、自分だけのオリジナルテープサウンドを生成することができます。
下部のパネルを開くとワウフラッター、バイアス、クロストークなどの細かい調整も可能になりますが、テープの特性を理解していないと扱いが少々難しいかもしれません。

Satinはプリセットが豊富なので、これら全てのパラメーターを理解する必要はありませんが、細かい調整まで自分でやりたいということなら英語版ですがマニュアルに細かい調整テクニックやパラメーターの意味が書かれているので参考にしてみると良いでしょう。
あと、僕がこのStudioモードで一番いいなと感じたのは、「Group」機能です。
Satinを1つのトラックに入れても全体を通すと変化量は微々たるものですが、全トラックに挿して使うと変化を感じ取りやすいのです。
そこで、動画の後半にもありますが、全トラックにSatinを入れてGroup機能によってグループを設定すれば、1つのSatinのパラメーターがグループを設定した全てのSatinに適用されるので、簡単に全体のキャラクターをコントロールすることができます。

全トラックに入れることで変化が顕著に感じられ、同時にトラック同士のグルー効果も見込めるので、テープのサウンドを楽曲に盛り込みたいときやグルー感を出したい時にはSatinが活躍してくれること間違いなしです。
2. Delay
最近のディレイプラグインにはテープディレイもついていますが、Satinのテープディレイはテープエミュレーターに入っているだけあってかなり独特です。
「自然なディレイサウンド」というよりは、ビンテージ感のある「ザ・テープ」といったサウンドなので、これまた「トラックにキャラクターをつけたい」「味付けをしたい」時などに大いに役立つことでしょう。
4つの再生ヘッドを調整することで複雑なディレイサウンドを作ったり、ディレイ同士が絡み合うことで生まれるフランジャー効果も、一味違った音作りに貢献してくれます。

3. Flange
フランジモードを使えば、擬似的にオーディオシグナルを複製し、フランジャーエフェクトを作ることができます。
昔はテープレコーダーを2台用意して行う職人技だったようですが、今はテープマシンすら手に入らないような時代なので、テープフランジャーの質感が欲しいならこういったプラグインに頼るのが一番です。
フランジャーやフェイザーなどは薄くかけるだけでも広がりが出てトラック全体にいい影響を及ぼすことが多いので、ぜひ積極的に使ってみてください。
コンパンダーとしてのSatin
Satinには「コンパンダー」としての特性があります。これを最後にお伝えしておきましょう。
コンパンダーとは「コンプレッサー + エキスパンダー」のことで、この両者の特性を同時に持つエフェクトのことを指します。
コンプレッサーは特定の大きな音を叩いて小さくするためのエフェクトですが、エキスパンダーは特定の小さな音を大きくするエフェクトです。

実際にSatinの挙動を調べてみると、こんな感じの音変化になっています。
画面上部ではコンプレッサーにより音が圧縮されていますが、画面下部では元々小さかったはずの音がエキスパンダーによって引き上げられているのがわかります。
テープを使うことでこのようなダイナミクスの変化を与えることができるのですが、これがSatinにはデフォルトの状態でかかっており、これが他のプラグインでは得られない独特な変化を与えているのです。
まとめ

Satinには少し複雑なパラメーターもありますが、基本的にはプリセットも豊富でシンプルかつ使いやすいテープマシンツールです。
僕はテープエミュレーターの音質変化が好きなのでSatin以外にもいろいろ使っていますが、正直テープ特有のパラメーターをなかなか覚えることができず、いつもプリセット中心に音作りしています。
「テープって扱いが難しそうだな」と感じている人も、プリセットをガンガン使っていけば何も問題ありません。
DivaやRepro-1といった、ソフトシンセの中でも群を抜いて音が良いプラグインを作り続けているu-heが作ったテープエミュレーターなんて聞くだけでワクワクしてしまいますが、実際に使ってみても、いろんな場面で活躍する優れたプラグインだと感じました。
気になる人は、ぜひ試してみてください。