最近、依頼された楽曲をミキシングをしていて、「なんかうまく鳴ってくれないな…」と悶々としていました。
ムチッと全体がまとまっていて、イヤホンで聴いてもそこまで違和感がなかったのですが、自宅より少し大きいモニター環境で再生してみると、
- 音が詰まりすぎているように感じる
- ミックスが平坦で息が詰まるような感じがする
そんな風に聞こえました。
最終的には良い形になったのですが、この「息が詰まるような感じ」のミックスは誰もが陥ってしまうことだと感じたので、次回への教訓の意味も込めて記事にまとめておこうと思います。
ヒントは「ミックスの呼吸」にありました。
あなたのミックスは呼吸をしているか?
結論から言うと、僕のミックスはコンプがかかりすぎていました。
つまり呼吸が浅いような、聴いていて息苦しいようなミックスになってしまっていたんですね。
コンプやサチュレーションをバチばちにかけた状態でミキシングをしており、
- すべての音が前に出てしまって奥行きがない
- ダイナミクスが低く、呼吸が浅いような息が詰まるようなミックスになっていた
- パンチがなく腰に来ないサウンド
お恥ずかしながら、こんな状態になっていました。
コンプをかけると、音が前に出てくるので「音が良くなった」気がするのですが、間違った使い方をしてしまうと、上記の状態になりかねません。
皆さんもコンプを使い始めた頃は、こんな経験があったかと思います。
うまくコンプレッサーを使うことで、ダイナミクスを揃え、音圧を上げ、迫力のある音にすることができますが、やりすぎても良い結果にはならないんですね。
サチュレーターもコンプレッションがかかってしまうので、やりすぎは禁物。
ミックスは、深く呼吸していなければなりません。
ミックスの呼吸を観察する
毎日ミキシングをしているようなプロならまだしも、音が詰まりすぎてミックスが「息苦しい状態」なのか、音がスカスカで「どこか物足りない状態」なのかを判断するのは難しいものです。
耳を過信しすぎると、たいていの人は、程よいダイナミクスを見つけ出せず苦戦してしまうため、いくつかのツールを使って確認しながら音楽制作をすることをおすすめします。
ミックスの呼吸を観察するには、
- VUメーターを使う
- RMSメーターやLUメーターも併用する
シンプルなことですが、メータープラグインを活用することをおすすめします。
「そんなの当たり前だよ、もうすでにやってるよ!」
という方もたくさんいると思いますが、知らず知らずのうちに「慣れてきたから自分の耳を頼りにミキシングしよう」と、こういった作業をおろそかにしてしまいがちです。
僕も、メーターはあまり使わずにミキシングを始め、気がついたら全然ダイナミクスのない平坦なミックスになってしまっていました・・・
「これはまずい…」とVUメーターやLUメーターを確認してみると、とんでもなくダイナミクスが低く、なぜこのミックスがうまく鳴ってくれないのかがすぐにわかりました。
どんなメーターを使えばいいのか
さて、メータープラグインはいろんな会社から出ていますが、僕が普段使うのは、「VUMT」と「Metric AB」です。
参考: Metric ABで理想のミックスバランスを手に入れよう – スタジオ翁
VUメーターは針の振れ方でダイナミクスを確認できるのですが、どちらかというとMetric ABのほうが使いやすくて良いと思います。
Metric ABの中でも、僕が使ったのは「Dynamics」というセクションです。
Metric ABはいろんな曲を簡単に比較・分析できるツールで、Dynamicsセクションは、音がどのくらい「詰まっているのか」または「大きく呼吸をしているのか」が一目でわかるので、とても便利です。
右下の「FILTERS」を使えば、周波数帯域ごとにダイナミクスが確認できるので、どの周波数で「音の詰まり」が起きているのかがすぐにわかります。
参考: プロ並みのミックスバランスに仕上げる「帯域別ミキシング」とは? – スタジオ翁
他にも、LEVELSや、無料のYoulean Loudness Meterもおすすめです。
こういったツールを使えば、何の問題もなくダイナミクスが把握できるのですが、自分の耳を過信しすぎてこういった作業を怠ってしまったのが、今回の僕の失敗でした・・・
VUメーターはできればアナログのほうがいい
VUMTは、よくスタジオなんかに置いてあるVUメーターを再現したプラグインですが、これはできればアナログメーターを使ったほうが良いと思います。
なぜかというと、VUメーターは「針の振れ方」でダイナミクスや音のエネルギーを把握することができるのですが、パソコンの画面上だと、どうしても処理に時間がかかってしまって針がスムーズに動いてくれません。
VUメーターとは単に「針の反応速度が0.3秒だけ遅いレベルメーター」なのですが、アナログのVUメーターを眺めているといろんな情報が見えてきて面白いですよ。
僕のおすすめは、HAYAKUMO「FORENO」です。
いろいろとVUメーターを探していた時に見つけたのですが、デザインが他のものと比べても抜群にカッコよく、自宅に置いてあると制作意欲が湧いてくるというメリットもあります。笑
ちなみに、創業者の早雲さんはお仕事でも何度かお世話になっていますが、そんな関係性は抜きにしても、FORENOは素晴らしいメーターだと思っています。
VUメーターの使い方がわからないという方には、こちらのwatusiさんの動画が参考になるでしょう。
まとめ
「コンプ感」を調整するのは、ミックスにおいて最も難しいパートのひとつだと思います。
ご紹介したVUメーターなどを活用する方法以外にも、あえてボリュームを絞ってミックスすることでコンプ感がわかりやすくなったり、ミキシングのチェック方法にはいろんなものがあります。
参考: ミックスのコンプレッション不足を簡単に見分けるたった一つのポイント – スタジオ翁
自分のお気に入りのテクニックを見つけ、ルーティン化していくことで、ミキシングの精度をどんどん上げていきたいものですね。
僕もまだまだ修行中の身なので、いろんなテクニックを見つけては紹介していき、自分のものにしていきたいと思います。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。