コンプレッサー、使ってますか?
一般的にコンプレッサーはトランジェント(音の立ち上がり部分)を叩いてダイナミクスを整えたり、ミックス全体のまとまりを良くするのに使われます。
ドラムのアタック部分を叩いてあげることで耳障りなトランジェントを滑らかにしたり、声の抑揚を揃えることで一曲を通して聴き取りやすいボーカルに仕上げたり。
「コンプレッサーなんて所詮、音を叩いてダイナミクスを揃えるだけのもの」
そう思っているあなたは、まだまだお子さまです。
この記事を通してコンプレッサーの応用的な使い方を学んでいきましょう。
大人のコンプレッサー講座 – ミックスの質を高めるコンプレッサーの応用法とは
コンプレッサーはパラメーターが少ない分、誰でも簡単に扱えると思われがちです。
うまく使えばミックスにおいて強力な武器になりますが、間違った設定をしてしまうと全くの逆効果となってしまいます。
次に、4つのコンプレッサー応用法をご紹介します。
それぞれコンプレッサーの使い方としては少し変わったものかもしれませんが、中にはジャンルによって頻繁に使用するテクニックなどもあり、僕も普段の制作で必ず取り入れているテクニックもあります。
それぞれのテクニックではコンプレッサーの仕組みやパラメーターの意味を正しく理解し、ミックスの質を高めましょう。

1. アタックを強調して音にパンチを与える
意外に感じるかもしれませんが、コンプレッサーはダイナミクスを減らすだけでなく増やすこともできます。
キックを例に挙げてみましょう。
ビーターがバスドラムの表面を叩いた瞬間キックの音はすぐにピークに達し(アタック)、そのあと徐々に減衰してサステインが余韻として残りますよね。
このアタック部分を強調してあげることで、音にパンチを与えることができます。
コンプレッサーの使い方としては、最初のアタック部分にはコンプレッサーがかからないように設定し、サステイン部分のみをコンプレッサーで叩いてあげることでアタックとサステインの音量差を大きくし、ダイナミクスを増やすという感じです。
ではコンプレッサーはどのような設定にすればよいかというと、まず音の立ち上がりは叩きたくないのでアタックを遅めに設定します。
次に音の余韻(サステイン)にコンプレッサーがかかるようにしたいので、スレッショルドはかなり低めに設定します。
これでうまくキックの立ち上がりの部分を過ぎてからコンプレッサーが作動するよう設定すれば、アタックが強調されて「ダン!」というキックが「ダッ!」となります。
このテクニックはキックだけでなくさまざまな楽器に応用できますが、楽器によって設定する値は異なるのでいろんな設定を試してみましょう。
ちなみにアタックとサステインを、ものすごく簡単に調整できるプラグインも存在します。
いろんなメーカーが似たような製品を出していますが、「SPL Transient Designer」はプロの愛用者も多くおすすめですよ。
LANDR Mix Tipsでの解説動画も合わせてどうぞ。
英語ですが、雰囲気でどういった使い方をしているのか分かりますよ。
2. キックをトリガーして跳ねるようなベースラインを作り出す
これはEDMでよく使われる手法で、バウンスベースまたはサイドチェーンコンプと呼ばれていますね。
多くのコンプレッサーにはサイドチェーンと呼ばれる機能がありますが、これは別チャンネルのオーディオシグナルに反応してコンプレッサーが作動する機能です。
例えばベースにかかっているコンプレッサーをキックが鳴った時のみ反応させることで、グワングワンとうねるようなベースラインを作ることができます。
EDMではベースだけでなくメロディなどにもサイドチェーンコンプがよく使用されていますね。
3. キックのスペースを確保する
これもサイドチェーンコンプを使った方法ですが、EDMに使われるようなバウンスベースとは少し違います。
ベースは周波数的にキックと被りやすいので、ベースにキックの音をトリガーとするサイドチェーンコンプをかけてあげることで帯域の被りを防ぎます。
キックが鳴ると同時にベースの音量が一時的に下がるイメージですね。
方法としてはバウンスベースの作り方とほぼ同じですが、あからさまに音を変化させることはしません。あくまでキックのためにスペースをつくるという考え方です。
そもそもキックとベースの音が被らない曲に関してはこんなことをする必要はありませんが、基本的に僕はこのサイドチェーンコンプのテクニックを全曲に使っています。

4. 特定の周波数にコンプレッサーをかける
さらにサイドチェーンコンプを応用させてみましょう。
Fabfilter「Pro-C」などの優秀なコンプレッサーでは特定の帯域のみにコンプレッサーをかけることができます。
ベースにキックをトリガーとするサイドチェーンコンプをかけ、さらに帯域を低域のみに制限すればベースラインの中高域部分はもとの音を保ったまま、低域のみキックと被らないようにすることも可能です。
他には、例えば歯擦音(Sibilance)と呼ばれるボーカルの「スッ」とか「サッ」などマイクで録音すると耳障りな「サシスセソ」の帯域のみをカットすることもできます。
これに特化した機材は「ディエッサー」と呼ばれ多く使用されていますが、基本的な仕組みはコンプレッサーとかなり似ています。
ライブなどの業界では、金物の耳に痛い部分をカットするためにEQではなくディエッサーを使用する人もいます。
仕組みを理解していれば、様々なシチュエーションに応用できますね。
まとめ
他にもコンプレッサーをリバーブやディレイにかけたりと様々な応用法があり、なかなか奥深い世界です。
コンプレッサーの動作原理や各パラメーターの意味をしっかりと理解する事でいろんな使い方ができる機材なので、まずは仕組みを正しく理解して大人な使い方がてきるようになりましょう。