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音楽制作のメイン機をM1 Macにした話

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最近までiMac 5kを使って音楽の仕事やDTMをしていたのですが、動作が重くストレスを感じることが増えてきていたので、この度ついにMacBook Pro (2021年M1モデル)に乗り換えました。

2022年になり、続々と各プラグインメーカーがM1チップへの対応を発表していますが、僕はサードパーティー製のプラグインをかなり使っているので、正直なところ「これ一台でちゃんと仕事ができるのか?」と不安な面もありました。

ただ今まで使っていたパソコンだと、音楽制作とミキシングを同時にやろうとすると固まってしまったり、再生できない場面も多くなってきていたので、「できることなら制作環境を、ハイスペックなM1 MacBook Proで統一したい!」という気持ちがずっとあったんですよね。

ここ数週間でいろいろ検証してみたのですが、結論から先に言うと、

「2023年現在、M1 Macは音楽制作にもバッチリ使える、超高性能なノートパソコン」

だと言えます。

僕と同じように「M1 Macに買い替えたいけど、まだちょっと不安だな…」という人も多いかと思いますので、この記事でM1 Macの魅力や最新の動向、購入時のポイントなどをお伝えしていきたいと思います。

この記事でわかることは、以下の通りです。

  • M1 Macはどのくらい高性能なのか?
  • M1 Macで使えないプラグインはあるのか?
  • M1 Macを購入するならどのモデルが良いか?
  • iPadとの連携

それではさっそく、詳しい内容を見ていきましょう。

今回購入したMacBook Proのスペック

僕が購入したMacBook Proのスペックはこんな感じです。

プロセッサーは「M1 Pro」を選び、メモリは32GBにしています。

正直、「M1 Max × 64GBメモリ」にしようか迷ったのですが、M1 ProとM1 MaxはCPUのコア数も同じで、性能がほぼ変わらないということだったので「M1 Pro」を選び、僕は普段オーケストラなどの作曲をしないという理由で「32GBメモリ」を選びました。

実際にこれで音楽制作をしてプラグインをいろいろ立ち上げてみても、メモリは多いときで20GBいかないくらいだったのでちょうどよかったです。

たまに「Spitfire」のオーケストラライブラリをちょこっと立ち上げることもありますが、メモリが32GB近いところまでいくことは滅多にありませんね。

ちなみにM1チップはインテル製のチップと比較しにくいと思いますが、性能的にM1 Maxは「Intel Core i9」とほぼ同じと考えていいんじゃないかと思います。

参考: インテル、第12世代Core i9はM1 Maxを超える最速モバイルCPUと主張

僕はこれまで「Intel Corei5 × 24GBメモリ」のiMacを使っていたのですが、操作のサクサク感やバウンス・フリーズの速さなどがケタ違いで、かなり満足しています。

ファンの音も静かで録音にも最適

M1 Macは内蔵ストレージにSSDを採用していますが、冷却装置であるファンが内蔵されています。

僕が以前使っていたiMacはSSD + HDDの「Fusion Drive」と呼ばれるものだったのですが、ファンの音が凄すぎて録音する時にとても苦労しました・・・

このM1 Macにもファンはついているのですが、スペックが高いこともあってか録音に影響が出るほどファンが高速で回転することもなく助かっています。

M1 Macでもスペックが足りないことはある?

M1 Macは、ProやMaxにもなるとかなり高性能ですが、それでもやはり大容量のオーケストラライブラリやかなり重めのソフトシンセなどを10〜20個ほど立ち上げるとCPUのオーバーロードで止まってしまうことはあります。

「重い」で有名なAcustica Audioのプラグインなんかは、そもそもCPUが16コア必要なので、10コアのMacBook Proでは全く動いてくれません・・・

バッファサイズを上げればたくさんプラグインを立ち上げられるのですが、レイテンシーなしで快適な音楽制作を楽しみたいということならMac Proなどの数十万円〜数百万円するパソコンが必要になってくるでしょう。

参考: Mac Pro – Apple

とはいえ、ここまで来るともはや「DTM」レベルの話ではなく、映画音楽の作曲やミキシングを行うプロレベルの話になってくるので、ほとんどの人(プロを含む)にはこのとてつもないスペックのパソコンは必要なくM1 Proで十分だと思います。

スペックが不安な人なら、「M1 Max × 64GBメモリ」を選ぶことをおすすめします。

音楽制作ソフトやプラグインはM1にどのくらい対応しているのか?

おそらくM1 Macに買い替える上で、一番心配なのはここですよね。

主要なDAWはほとんどM1 Macに対応していますが、買い替えてみて「お気に入りのプラグインが使えなかったー!」なんてことになったらかなりショックでしょう・・・

僕も今使っているプラグインをいろいろ調べてみて、問題がなさそうだと感じたので購入に踏み切りましたが、実はこれに関してはほとんどの人は心配する必要がないと思っています。

というのもM1 Macには、M1非対応のソフトやプラグインを動かすための「Rosetta」というシステムが初めから内蔵されているので、ボタン1つで簡単にM1非対応のソフトやプラグインを動かせるようになります。

Finderの「情報を見る」から簡単に設定が可能

このようにRosettaを使ってDAWを立ち上げれば、M1非対応のプラグインもバッチリ読み込んでくれます。

Rosettaを使うと動きが遅くなるという意見もありますが、確かにプログラムを使って余計な処理をしているぶん多少影響は出ているのかもしれませんが、少なくとも僕が使っている時には特に気にならず、立ち上げ可能なプラグイン数が劇的に減ってしまうということもありませんでしたね。

オーディオインターフェースの対応はどうか?

オーディオインターフェースはいろんなメーカーから出ているので、それぞれのメーカーのアナウンスにお任せしますが、僕が普段使っている「Antelope」に関してはバッチリ対応しています。

参考: Antelope「Orion Studio」が素晴らしい!購入した感想や音質レビュー – スタジオ翁

Antelopeは音は素晴らしいのですが、パソコンとの接続トラブルや初期不良などが多数あるので、M1 Macとうまくマッチしてくれるのか少し心配していました。

今のところUSB-A接続でまったく問題なく使えているので安心しましたね。

iPadと連携すればプラグインをタッチでコントロールできる

これはM1 Macに限った話ではありませんが、比較的新しいMacとiPadで使える便利な機能を1つ紹介しておきます。

iPadとMacを接続してデュアルディスプレイ化するための「Sidecar」という機能で、これを使えばiPadの画面上で、DAWやプラグインのパラメーターをコントロールすることができます。

iPadでプラグインをコントロール

これはとても便利なので、対応のiPadとMacを持っている人はぜひ音楽制作に活用してもらいたい機能です。

ただし、プラグインはかなりうまく操作できますが、残念ながらDAWをiPad側でコントロールしようとすると、フェーダーに少し触れただけで音量が振り切れてしまったりするので、完全にiPadで音楽制作が行えるわけではありません。

DAWのパラメーターはうまくコントロールできませんが、MIDIの打ち込みやシンセの音作りなどはかなりはかどります。

プラグインのパラメーターもかなり細かい部分まで調整できるので、例えばパソコンをメインの制作環境として使い、iPadをプラグインのコントロール用に使うという形にするのもおもしろいでしょう。

※ちなみにこれらの操作には、Apple Pencilが必要です。

これだけで1つの記事になりそうなので、また今後いろいろ試してみてiPadの可能性を探求していきたいと思います。

まとめ

M1 Macを買う前はとにかくプラグインが対応しているかどうかを心配していましたが、今のところRosetta環境で使えないプラグインはないので、安心して音楽制作を楽しむことができています。

購入の際は、念のためM1 Macで使いたいプラグインをメーカーの公式ページで調べておき、自分の使っているオーディオインターフェースもM1に対応しているかどうかしっかり確認するようにしましょう。

これさえ気をつければM1 Macを購入する際、特に心配する必要はないと思います。

今日の記事が、M1 Macに乗り換えようか迷っている人の参考になれば嬉しいです🙂

MacBook Pro – Apple

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この記事の著者

Isseyのアバター Issey 作曲家、音響エンジニア

23歳で音楽制作を始め、「Ohme」「Issey Kakuuchi」名義で国内外のレーベルからリリースを行なっている。 クラブやライブイベントの音響エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在は映画の作曲、MA、アーティスト活動に加えて、音楽アプリ、オウンドメディア、医療クリニックへの楽曲提供など、様々な分野で活動している。

著書: AI時代の作曲術 - AIは音楽制作の現場をどう変えるか?