コンプってなんか難しそう…簡単な仕組みや使い方を知りたいな。
今日は、コンプレッサーの基礎知識や使い方について解説していきます。
コンプレッサー(以下コンプ)はEQと並んで音楽制作には欠かせないプラグインですが、EQよりも効果が分かりづらく苦手意識を持っている人も多いのではないでしょうか?
今までなんとなくコンプを使っていたという人も、ここでもう一度正しい知識を身に付ければ、今よりもっとミキシングが上達するかもしれません。
今回の記事は、こんな人におすすめです。
- コンプで何ができるのか知りたい
- コンプの基本的な使い方が知りたい
- コンプを使ったミキシングのテクニックを知りたい
- コンプを使う時に注意すべきことを知りたい
まずは、コンプの基礎から見ていきましょう。
コンプレッサーとは?
コンプレッサーとは、音のダイナミックレンジを調整するためのプロセッサーです。ダイナミックレンジとは「最大音量と最小音量の差」のことで、例えばロックやEDMはレンジが狭く、クラシックやジャズはレンジが広いといった傾向があります。
最大音量 – 最小音量 = ダイナミックレンジ
ではこのダイナミックレンジを整えることには、どんなメリットがあるのでしょう?
次に、コンプを使ってできる3つのことを紹介していきます。
コンプレッサーにできる3つのこと
コンプにはいろんな使い方がありますが、基本的には以下の3つが挙げられます。
音のピークを和らげる
コンプを使えば、「トランジェント」と呼ばれる音のアタック部分を和らげることができます。
例えばボーカルの抑揚が激しいパート、ギターの弦をく音が強すぎる場合など、コンプを使うことでリスナーが聴きやすい音に整えてあげることができます。
音圧を上げる
人間の耳は、音が大きいというだけで良い音に聴こえてしまう特性があります。
でも、デジタルの世界では「0dB」という音量の上限があるため、音圧を上げることで音を太くしたり、迫力を出したりしてあげる必要があるのです。
特にEDMなどのダンスミュージックではかなり高い音圧が求められますが、音としての自然さは失われてしまいがちです。
なので、ジャズやクラシックといった生楽器での演奏は、音圧を極限まで上げるということはあまり求められていません。
ミックス全体をまとめる
ドラムバスやミックスバスにコンプをかけることで、音同士のつながりを良くしたり、全体をまとめ上げる効果があります。
各楽器のアタック部分をコンプで軽く整えてあげれば、音に一体感が生まれるのです。
これは「バスコンプ」や「グルーコンプ」と呼ばれていますが、あとで詳しく紹介していきます。
コンプレッサーの使い方
ここからは、コンプの使い方について見ていきましょう。
まずは、各パラメーターの説明から。
覚えておきたい5つのパラメーター
ほぼすべてのコンプには、次の5つのパラメーターがついています。
- スレッショルド
- レシオ
- アタック
- リリース
- ニー
最初はややこしく感じるかもしれませんが、慣れてくると簡単です。
順にみていきましょう。
スレッショルド
コンプが、どのくらいの音量でかかるのかを決めるための設定値のことです。
例えば、スレッショルドを「-6dB」に設定すれば、-6dBを超える音にコンプがかかるようになります。
レシオ
「2:1」とか「5:1」などと表記されます。
2:1ならスレッショルドを超えた音を半分に、5:1なら1/5に圧縮するという意味です。
アタック
音がレシオで設定した比率に到達するまでの時間を決めます。
スレッショルドを超えた音は、アタックタイムで調整した時間をかけて圧縮されていきます。
アタックタイムを早くすれば急激なコンプレッションがかかりますが、遅く設定してコンプレションをゆるやかにすることもできます。
リリース
コンプレッションが解除されまでの時間を決めます。
圧縮された音がスレッショルドを下回ってから、どのくらい時間をかけてコンプレッションを解除するかをリリースタイムで調整します。
あまりにも急にコンプレッションが解除されると、音の切れ目がとても不自然になってしまうので気をつけましょう。
ソフトニー, ハードニー
日本語で「ひざ」という意味ですが、ハードニーほどひざの角度が鋭くなります。
ハードニーに設定するとスレッショルドを超えた音がすべて圧縮されますが、ソフトニーにすればスレッショルドの手前からゆるやかにコンプがかかり始めます。
さて、ここまでが基本的な5つのパラメーターですが、次にこれらをどのように設定すればいいのか見ていきます。
コンプレッサーの具体的な設定方法
コンプの設定は音によって違います!と言ってしまうと、どうしたらいいのか見当もつかないと思うので、コンプの使い方が解説されている動画を1つ紹介しておきます。
英語ですが、映像を観ていればコンプの基礎は理解できるかと思います。
どの手順で、どのような考え方でコンプを扱えばいいのか丁寧に解説されています。
コンプレッサーの4つのタイプ
コンプレッサーには、主に4つのタイプが存在しています。
DAWによってはこのタイプを選ぶことができるのですが、アナログコンプの話なので、プロのエンジニアでもないかぎり特に覚える必要はないと思います。
コンプのことをもっと詳しく知りたい!という人は、参考にしてみて下さい。
1. Optical (光学式/オプト)
オプトタイプのコンプは、アタックタイムが遅いのが特徴です。
その滑らかなコンプレッションは、ボーカルなど自然なサウンドが求められる音源に向いています。
2. VCA (電圧式)
高速でパンチのあるVCAタイプにはいろんな種類があるのですが、中でも有名なのは「SSL Gシリーズ」というコンプですね。
これはマスターバスに挿すことで、全体にパンチと自然な統一感を与えてくれます。
3. FET (トランジスタ)
FETタイプは、その応答スピードの速さから「キック」「スネア」「ドラムバス」などに使われることが多いです。
独特なキャラクターなので、あまりマスタリングやミックスバスに使われることはありません。
4. TUBE (真空管)
真空管コンプは、音に独特の温かみやキャラクターを与えることができます。
他の方式に比べて、アタックとリリースが遅い傾向があります。
コンプレッサーを使った4つのテクニック
さて、ここではコンプを使った4つのテクニックを紹介していきます。
どんな音楽ジャンルにも使える便利な手法なので、ぜひ日頃の音楽制作に役立てて下さい。
サイドチェーンコンプレッション
これはEDMなどで特に多く使われる、コンプの使い方ですね。
「ダッキングエフェクト」とも言われていますが、ベースの音量がキックに合わせてグワングワン上下するエフェクトのことです
ほとんどのコンプには「トリガー」といって、特定の音源が入力された時にだけコンプを作動させるという機能がついています。
これを使えば、キックが再生された時にだけベースやシンセなどをを引っ込めたりできるので、音同士がぶつかったり変な混ざり方をしてしまうのを防げます。
コンプではなく、特殊なプラグインだけを使ってサイドチェーンをかけることもできるので、気になる人はこちらの記事も見てみて下さい。
グルーコンプレッション
グルーとは、のりなどで「くっつける」という意味です。
つまり楽器同士をくっつけて、一体感を持たせるためのコンプの使い方ですね。
Ableton LiveというDAWだと、「Glue Compressor」という専用のプラグインがデフォルトで入っています。
ドラムに使ったりミックス全体に適用することで、音の一体感を生むことができます。
パラレルコンプレッション
パラレルコンプは、ドラムなどのアタック感を保ちつつ音圧を上げる目的で使われます。
方法としては、
- ドラムの音を別チャンネルに送る
- 別チャンネルでコンプを深めにかけて、音圧をだす
- もとのドラムの音に別チャンネルの音を混ぜ合わせる
このようにコンプをかけて単に音圧を出すのではなく、ダイナミクスが残っている原音と混ぜ合わせることによって、適度なアタック感を残しつつ音圧を上げることができるのです。
コンプに「DRY/WET」というパラメーターがついていれば、これと同じようなことを簡単に行うことができますよ!
シリアルコンプレッション
シリアルは「連続的」という意味なので、言葉通り2つ以上のコンプを組み合わせるテクニックを指します。
例えば、1つのコンプで4dBのゲインリダクションを行うよりも、2つのコンプを使って2dBづつ行った方が自然なコンプレッションがかかる場合があります。
特にルールはないので、コンプのかかり方が不自然だと感じてしまう時は、2つのコンプを使って段階的にコンプレッションをかけてみると、良い結果が得られるかもしれませんね。
コンプレッサーをつかう時に注意すべき3つのこと
コンプはEQよりもやっかいなプラグインなので、なんとなく使えていると思っていても実は全然うまく使えていなかったなんてこともあります。
ここではコンプを使う時に注意すべきことを、3つ確認しておきましょう。
前後のゲインを整える
これは、一番やりがちなミスです。
なんとなく使えていると思っていても実は全然うまく使えていなかったなんとなく使えていると思っていても実は全然うまく使えていなかったなんとなく使えていると思っていても実は全然うまく使えていなかった
適切にコンプを使って音を整えれば、音量はそのままに音圧だけを上げることができます。
コンプによっては、ゲインリダクションにあわせて音量を上げてくれる機能「オートゲイン」がONになっていることもあるので、効果をちゃんと確かめたければ、コンプ前後の音量をしっかり整えるようにしましょう。
コンプレッション不足を防ぐ
楽器やボーカルに、どのくらいコンプをかければ良いのか迷うことはありませんか?
コンプをかけすぎると、全体的に奥行きのないのっぺりした音になってしまうので、ミックス時は慎重になりすぎる人もいるんじゃないかと思います。
十分にコンプレッションできているのか、それとも足りていないのかが簡単に分かる1つの基準があるのですが、それは・・・
スピーカーやヘッドフォンの音量を上げた時にだけ良いミックスに聴こえるなら、コンプレッション不足。
これだけです。
詳しくはこの記事でも紹介していますが・・・
小さい音量で聴いてみた時に、ひとつひとつの楽器がしっかり聴こえなければ、コンプレッション不足の可能性が高いということです。
なので、たまに小さい音量でもミックスを聴いてみて、通常の音量と同じようなバランスで各楽器が聴こえるかどうかを確認しながら作業すると良いでしょう。
バスコンプは慎重に
楽曲全体に統一感を出すためのバスコンプは、慎重に行う必要があります。
特にマスターへのバスコンプは、ほんの数1dB程度のゲインリダクションで十分な効果があるので、圧縮しすぎでせっかくのミックスバランスを壊してしまうことのないよう気をつけましょう。
むしろマスタリングをプロにやってもらうなら、マスターバスには何も挟む必要はないかもしれませんね。
人によってはマスターに自分の好きなプラグインを挿すことで、音の個性を表現するという考え方もあります。
応用的なコンプレッサー
最後に、応用的なコンプレッサーについて見ていきましょう。
ミキシングが上達してくるとそのうち、こういった高度なツールも使いたくなってくるかもしれません。
マルチバンドコンプ
マルチバンドコンプレッサーを使えば、周波数帯ごとにコンプレッサーをかけることができます。
例えば、低音だけコンプレッサーをかけたくないなというときや、中域はもうちょっと目立たせたいから深めにコンプレッサをかけたいといった時には、マルチバンドコンプが活躍するでしょう。
参考: マルチバンドコンプレッサーの使い方と実践 – スタジオ翁
リミッター
リミッターもコンプレッサーの一種で、コンプのレシオを最大にするとリミッターと同じ働きになります。
リミッターは主に、
- マスターにさしてクリップを防ぐ
- トラックの音圧を上げる
この2つの目的で使われることが多いですね。
エキスパンダー
最後にエキスパンダーですが、これはコンプと似ているものの少し違った働きをします。
コンプがスレッショルドより上の音を圧縮するのに対し、エキスパンダーはスレッショルド以下の音を減衰させることで、ダイナミックレンジを広げることができます。
まとめ
以上、コンプの基本的な部分についてざっくり解説していきました。
より本格的にコンプの使い方が知りたいという人は、海外のミキシング系YouTubeチャンネルを観るのが一番勉強になりますよ。
こちらの記事で、いくつかおすすめのYouTubeチャンネルを紹介しているので、興味があればのぞいてみて下さい。
今回の記事が、みなさんの音楽制作の参考になれば嬉しいです。